レポート

2021年、気になる火山噴火の増加

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スペクティでは世界中の火山の噴火についても、情報の解析・配信を行っていますが、2021年3月・4月で配信数が急増していることに気がつきました。あくまでスペクティによる配信数ですので、噴火の回数や規模を必ずしも表すものではありませんが、SNSに投稿された情報の数を反映しているという意味で、その噴火が人間社会に与えるインパクトの大きさに比例するものと考えられます。

上記図でわかるように、2020年7月から11月は非常に落ち着いていたものが、2020年12月から配信数が増え、特に2021年の3月・4月で跳ね上がったことが見て取れます。

同じ配信数のグラフですが、定常的に噴火を繰り返している桜島を除いたものが上記となります。配信数が特に多かったのは、①セントビンセント及びグレナディーン諸島のスフリエール火山、②グアテマラのパカヤ火山、③イタリアのエトナ火山、です。



次に、配信数が多かったトップ10の火山を世界地図上にプロットしました。「~倍」の数字は、「2021年3月& 4月の月平均配信数」が「2020年5月~2021年2月までの月平均配信数」から何倍に増えたかを表しています。アイスランドのファグラダルスフィヤル火山は4月に入るまで噴火がなかったため、「-倍」としていますが、どの火山も軒並み活動を活発化させていることがわかります。

それぞれの火山を簡単に解説します。

◆スフリエール火山(セントビンセント及びグレナディーン諸島)

中米カリブ海に浮かぶ小さな島国、セントビンセント及びグレナディーン諸島のセントビンセント島にそびえる、標高1234メートルの火山です。4月9日に大規模な噴火を起こし、セントビンセント島の大部分は生活できない状態となり、住民は新型コロナウイルスのワクチン接種を条件に近隣の島に避難しています。スフリエール火山はこれまでにも複数回、大規模に噴火していて、1902年の噴火では約1,600人が亡くなりました。

◆パカヤ火山(グアテマラ)

中米グアテマラの首都・グアテマラシティから首都グアテマラシティから南に25kmの位置にあるパカヤ火山。2月9日に大きな噴火を起こしました。人口密集地に近いため、火山灰による生活への影響も大きく、3月にはグアテマラで唯一の国際空港であるアウロラ国際空港が全面閉鎖されるなど大きな影響が出ました。

◆エトナ火山(イタリア)

イタリア南部、地中海に浮かぶシチリア島の東部にあるヨーロッパ最大の活火山です(標高3,330メートル)。これまでも噴火を繰り返していますが、2月16日に非常に大きな噴火を起こしました。火山灰だけでなく、多数の噴石が降り注いだことから、地元のカターニア空港が一時閉鎖されました。

◆桜島(日本)

鹿児島県の錦江湾に浮かぶ鹿児島のシンボル・桜島。約25,000年前に誕生し、17回の大噴火の末に現在の形になりました。日本で最も活動的な火山と言われ、今でも毎日のように小規模な噴火を繰り返しており、現地に住む方々には噴火や火山灰も生活の一部です。人口密集地である鹿児島市に近接しており、世界的にも珍しいと言えるでしょう。噴火や降灰の情報は気象庁のホームページで知ることができます。

◆ムラピ火山(インドネシア)

インドネシア・ジャワ島中央部にある、インドネシアで最も活発な火山です。歴史上何度も大きな噴火を繰り返し、多くの犠牲者を出してきました。近くのジョグジャカルタには世界遺産のボロブドゥール遺跡がありますが、大きな噴火があると火山灰からの保護の目的で閉鎖を余儀なくされることから、地元の観光産業にも影響が出ます。

◆御岳・諏訪之瀬島(日本)

鹿児島県のトカラ列島に属する火山島で、現在も数十人の住民が島に住んでいます。1813年の大噴火では溶岩流が西海岸まで達し、全島民が避難。1883年まで無人島となった歴史があります。昨年末から活動を活発化させており、今年3月5日には気象庁が「諏訪之瀬島の噴火警戒レベルの判断基準」を更新・公開しました。

◆ファグラダルスフィヤル火山(アイスランド)

アイスランドの首都レイキャビクの南西約30kmにある火山で、3月に大噴火を起こしました。この火山が噴火するのは実に800年ぶりとのことです。2010年にアイスランドの別の火山(エイヤフィヤトラヨークトル火山)が噴火した際は、火山灰と煙の影響でヨーロッパの空の交通が大いに乱れましたが、今回の噴火は火山灰や煙の放出は少なく、航空への影響は少ないとのことです。SNSには溶岩でソーセージを焼く動画が投稿され、話題になりました。

◆シナブン火山(インドネシア)

インドネシアのスマトラ島北部に位置する標高2,460メートルの活火山です。400年以上目立った活動がありませんでしたが、2010年に大きな噴火を起こし、近隣住民1万8000人が避難する事態となりました。その後は2013年から毎年噴火し、今年3月には噴煙が上空5,000メートルに達する大きな噴火がありました。現在、火山から半径5キロ以内に居住者はおらず、特に大きな人的・物的被害や、航空便への影響は出ていません。

◆ポポカテペトル火山(メキシコ)

メキシコ南部・プエブラ州にそびえる標高5,426メートルの火山です。見た目が富士山に似ているため、日系人からは”メキシコ富士”と呼ばれることもあるとか。16世紀に噴火が確認されて以来、これまでに15回大きな噴火が確認されており、昨年末から再び活動を活発化させています。

◆浅間山(日本)

長野県と群馬県にまたがる標高2,568メートルの火山で、この200年ほどは甚大な被害をもたらす大噴火はないものの、日本における最も活動的な火山のひとつに数えられます。昨年の6月下旬から活動が活発化しているとして、気象庁は噴火警戒レベルをレベル1(活火山であることに留意)から、レベル2(火口周辺規制)に引き上げました。



日本における火山のリスク

日本の誇る富士山は、1707年の宝永大噴火を最後に300年以上平穏な時期が続いているものの、活火山であることを忘れてはいけません。富士山の噴火については、静岡、山梨、神奈川県などで作る「富士山火山防災対策協議会」が今年3月、噴火被害を想定したハザードマップの改訂版を公表しました。新たな知見が反映されるとともに、従来のものと比べて視覚的にわかりやすいものになっています。近隣の方々は必ず目を通しておくことをお薦め致します。

また、見逃してはいけないのは北朝鮮と中国に国境に位置する白頭山(ペクトウサン、標高2,744メートル)です。これまで1,000年周期で大噴火を繰り返したとの研究結果があり、西暦964年に噴火してから1,000年以上が経ち、噴火の予兆も見られることから警戒が必要です。大噴火が起きると、北朝鮮と中国東北部では火山灰や溶岩流などで壊滅的な被害をこうむることが予想されるほか、韓国ほぼ全域が火山灰に覆われ、日本でも中国地方を中心に火山灰が1センチ以上降り積もるとのシミュレーション結果が、釜山大学により発表されています。また、火山による直接的な被害に限らず、北朝鮮と中国の情勢を激変させるという意味で国際政治的なリスクもはらみます。



この度の噴火の増加が何か大きな変動の予兆なのかはわかりません。火山の噴火を予測する技術や知見も進化を遂げていますが、時期・場所・規模を正確に予測することはまだ難しいのが現状です。しかし、噴火が起きるであろう場所はある程度限定されているため、発災した際の行動を想定し、シミュレーションしておくことは比較的容易かと思われます。ハザードマップを確認し、予め備えをしておくことが重要であることは言うまでもありません。


(根来 諭)
March 12, 2021


参考情報

富士山ハザードマップ検討委員会報告書(富士山火山防災協議会)
http://www.bousai.go.jp/kazan/fujisan-kyougikai/report/

朝鮮半島の「聖山」白頭山に噴火兆候 想定される規模と日本への影響(辺真一)
https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20190416-00122528/


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