レポート

「弱い」感染症がより「大きな危機」を招く?~ジョンズ・ホプキンス大学の報告書より~

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ジョンズ・ホプキンス大学とは、米国の政治の中枢であるワシントンD.C.からほど近いメリーランド州ボルチモアにある私立大学で、全米屈指の名門医学部を持つとともに、特に公衆衛生学の分野で世界をリードする存在です。新型コロナウイルスに関しても、2020年1月にいち早く全世界の感染者情報をまとめた「COVID-19 Dashboard」を公開しており、その名前を目にした企業・自治体の危機管理担当者は多いかもしれません。

COVID-19 Dashboard
(「COVID-19 Dashboard」)

そのジョンズ・ホプキンス大学が、今から2年前、2018年5月に、今回の新型コロナウイルスを予言するようなレポートを発行していました。そのレポートの名前は「The Characteristics of Pandemic Pathogens(=パンデミックを引き起こす病原体の特徴)」。人間の命や社会に、グローバルレベルで破滅的な被害をもたらす生物学上のリスクがある病原体の特徴は何か、いうことを明らかにしたものです。

このレポートで上げられた特徴は下記の7つ。

  • ヒトからヒトへの高い感染力を持つ
  • 致死率は高いとは限らない
  • 医学的な対策が限られる
  • 人々が免疫を持たない
  • 免疫回避の特徴を持つ
  • 呼吸器系に感染が広がる
  • 潜伏期間中または軽症の間に伝染する

ひとつひとつ、新型コロナウイルスが当てはまるかを見てみましょう。

  • ヒトからヒトへの高い感染力を持つ
  • 正確な数字は今後の研究を待たなければなりませんが、感染力を示す基本再生産数(=一人の感染者が生み出す二次感染者数の平均値)を見ると、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザよりも高いとされ、感染力は強いと言うことができます。

  • 致死率は高いとは限らない
  • 新型コロナウイルスの致死率は、これも今後の詳細な研究を待たなければなりませんが、下記の近年流行した感染症に比べるとかなり低いことが予想されます。
    重症急性呼吸器症候群(SARS):10%
    中東呼吸器症候群(MERS):34%
    エボラ出血熱:40%

  • 医学的な対策が限られる
  • ワクチンや特効薬はまだなく、医学的な対策としては熱を下げる、酸素を供給するといった対症療法にとどまります。

  • 人々が免疫を持たない
  • 新型のウイルスであり、当然人々は免疫を持ちません。

  • 免疫回避の特徴を持つ
  • この点については今後の研究によって明らかになるものと思われます。

  • 呼吸器系に感染が広がる
  • 新型コロナウイルスはまさにあてはまり、この特性によって飛沫感染・接触感染が広がるものと思われます。

  • 潜伏期間中または軽症の間に伝染する
  • まだ明らかにはなっていないものの、無症状でも他の人に感染させる可能性があるという見方が一般的です。Nature紙に掲載された論文でも、症状が出る前に感染力がピークを迎える可能性が示唆されています。


今回の新型コロナウイルスの流行とそれに伴う混乱を目の当たりにし、「これが致死率の高いエボラ出血熱のような感染症であったらどうなってしまうのだろう」と想像された方も多いかとは思います。しかし、社会により大きく破滅的なダメージをもたらす感染症は上記した通り、致死率が高い(=強い)必要はないのです。その理由は、社会的な要因が大きいのではないでしょうか。もし今回の新型コロナウイルスが、非常に致死率が高いものであった場合、恐らく各国政府はもっと迅速に、都市封鎖を含む強いアクションを取っていたのではないでしょうか。当初より、「それほど致死率は高くない」という認識があったからこそ、経済活動を止めるということと天秤にかけ、漸次的にアクションを強めていくにとどまり、その裏で感染が急拡大していったという事情があると考えます。

今後も発生するであろう新型感染症の流行へは、どうやって対応していけばいいのでしょうか?ひとつには、官民で試行錯誤が始まっている、「感染症のリスクがあっても経済を回し続けられる社会の構築」(例としてマクドナルドの取り組みを挙げます)。もうひとつは、「感染症流行の端緒をいち早く覚知し、正しい対策を素早く打つこと」と考えます。

下記のグラフは、ニューヨーク州とカリフォルニア州の感染者数の推移をあらわしたものです。3月17日にはサンフランシスコ市、3月19日にはカリフォルニア州で外出禁止令が発令されましたが、ニューヨーク州で同様の措置が取られたのは、サンフランシスコ市からは5日遅れの3月22日でした。もちろん、都市の構造や人口密度、人種構成など多くの要素があるため一概には言えませんが、この5日の差は最終的な感染者の数に大きく影響を与えたものと推察されます。これを見ても、1日でも早く感染症流行の兆しを覚知し、当該感染症の危険度を見極めたうえで、迅速にアクションを取ることの重要性が伺えます。

Coronavirus
(出展:San Francisco Chronicle)

スペクティは、Spectee Proを通じて、SNS上での危機管理情報を覚知し、アラートを発するサービスを展開しています。好むと好まざるに関わらず、ウイルスと共存していかなければいけない中、テクノロジーを使って社会全体をアップデートしていくことが求められていると言えるでしょう。

spectee pro
(Spectee Pro)

(根来 諭)
May 15, 2020

参考情報

The Characteristics of Pandemic Pathogens(ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センター、2018年5月10日)
https://www.centerforhealthsecurity.org/our-work/pubs_archive/pubs-pdfs/2018/180510-pandemic-pathogens-report.pdf

Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19 (Nature Medicine)
https://www.nature.com/articles/s41591-020-0869-5

新型コロナ、インフルやエボラと比べた危険度は(National Geographic)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/021100089/


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