紅海危機・地震など具体的ケースから学ぶ:グローバルサプライチェーンリスクの対応力向上【2024年1月19日開催】

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防災・危機管理に関するソリューションを提供するスペクティでは、毎月様々なトピックでWebセミナーをお届けしています。2024年1月19日には『紅海危機・地震など具体的ケースから学ぶ:グローバルサプライチェーンリスクの対応力向上』と題して、貿易業務の可視化・効率化をサポートするクラウドサービスを提供する株式会社Shippio様とセミナーを共同開催させていただきました。本レポートでは、その内容を抜粋してお届けいたします。

■登壇者プロフィール
株式会社Shippio コンサルティングセールス 川嶋 章義
総合物流会社の配送センターでの現場管理・提案営業、大手電機メーカーでの物流企画を経験した後、2020年にShippio関西支社立ち上げメンバーとして参画。数多くの顧客にShippioを導入し、顧客課題の解決、業務の効率化・標準化を成功させた実績がある。毎月第一火曜日に配信の「Logistics Insight Digest」のメインパーソナリティ。

株式会社Spectee 代表取締役CEO 村上 建治郎
ソニー子会社にてデジタルコンテンツの事業開発を担当。その後、米バイオテック企業にて日本向けマーケティングに従事、2007年から米IT企業シスコシステムズにてパートナー・ビジネス・ディベロップメントなどを経験。2011年に発生した東日本大震災で災害ボランティアを続ける中、被災地からの情報共有の脆弱性を実感し、被災地の情報をリアルタイムに伝える情報解析サービスの開発を目指し、株式会社Specteeを創業。著書に「AI防災革命」(幻冬舎)


◆紅海危機のサプライチェーンに及ぼす影響と押さえておきたいリスクマネジメントのポイントは?

川嶋(Shippio)
現在、紅海におけるフーシ派による攻撃を避けるため、スエズ運河を通過する予定だったコンテナ船の95%がアフリカの喜望峰周りのルートを選択するといった、世界のサプライチェーンを揺るがす事態となっています。こうした事態そのものを避けることは難しいため、サプライチェーンレジリエンスを高める動きが世界的にも強まってきています。 サプライチェーンレジリエンスは、「抵抗力」と「回復力」の2つで構成されています。 まずは事象をいち早く検知して初動対応をとり被害を最小限に抑える「抵抗力」、その後いかに迅速に原状復帰できるかが大切な「回復力」の2構成です。サプライチェーンを可視化・複線化・冗長化することは、サプライチェーンレジリエンスを高める有効な策の一つだと考えています

村上(Spectee)
せっかくなのでスペクティでどのように見えているのかをお見せします。 このように紅海危機に関する情報を覚知することができます。元の情報がアラビア語など特殊な言語であっても問題なく収集でき、日本語でタイトルがつきます。また、サプライヤーの情報なども登録し、地図上で見ることができます。 今に始まったことではなく、このエリアではずっと色々な事象が起きていますが、ここ最近は連日激しい動きがあり、日本のメーカーを含めて、工場での生産を停止するなど大きな影響が出ています。対応しなければいけないことは多岐にわたりますが、そのために必要な情報を収集することが大切で、そこにSpecteeはお役に立てるのではないかと思います。

村上(Spectee)
Shippioさんのサービスを利用しているお客様の中で、情報を取得する段階のところで課題を抱えているという方はいらっしゃいますか?

川嶋(Shippio)
例えば事故・事件の発生が週末だった場合、週明けの月曜日にならないと対応が取れないというお声をいただいたことがあります。

村上(Spectee)
能登半島の地震はまさに1月1日に発生し、こうした場合にどう対応するのかは課題です。人が実際に会社に出ないと対応できないのでは大変です。情報を取得した後のコミュニケーションにおいて、Shippioさんで「こういうことができる」というのはありますか?

川嶋(Shippio)
クラウドサービス「Shippio」では、案件ごとに管理することが可能です。各案件は、様々な絞り込み機能を使って、一覧で表示できます。 紅海危機によって欧州からの船便に影響が出ると予測した際、ハンブルク港など該当する輸出港で絞り込み検索をし、該当案件を抽出することによって、遅延が発生しそうな案件を素早く把握することができます。さらに、有事の際は納品が近い案件から対応しなければなりませんが、絞り込みした一覧を「納品日順」に並び替えて詳細情報を確認することもできます。また、「Shippio」上でサプライヤーや物流会社とチャットも可能なので、パッキングリストを共有しながら緊急AIR対応が必要な案件のやり取りなどが、三社間でスムーズに行えます。これはメールなどよりも圧倒的に早く、履歴が残らない電話よりも確実に対応することができます。順序としては、まずはSpecteeさんのサービスなどによる情報覚知が第一です。「Shippio」は、その情報が自社サプライチェーンのどこに影響するのかを把握する部分でお役に立てると思います。


◆能登半島地震など災害時に正確な情報収集と対応時に重要視するべきポイントは?

村上(Spectee)
お客様からは急いで状況確認をしないといけないというお声をもらっており、正確かつ迅速に情報を収集する部分でSpecteeは貢献できていると思います。 スペクティの画面をお見せすると

このような形で現地の情報を収集していましたが、お客様の生産拠点、サプライヤーや取引先の場所などを登録しておいて、その周辺情報を入手したり、例えば特に重要な拠点については半径何メートル以内で特定の事象が起きたらアラートメールを受けとることもできます。また、サプライヤーに対して状況確認のアンケートを自動で送付して操業可能かどうかを確認することもできます。こうした機能を使うことで正確な情報、そして自社に影響のある情報だけを集めることがポイントです。今回は正直テレビだけを見ていてもまったく状況がつかめなかったのではないでしょうか。自社の状況を知るだけでも難しいのに、他社を含めて把握するのは至難の業です。

川嶋(Shippio)
幸いにも能登半島地震では、当社のお客様に大きな影響はでませんでした。金沢港も、1月6日には稼働していました。 過去の地震や災害においての活用では、クラウドサービス「Shippio」は船の位置情報をGPSで取得しているので、タイムリーに船の位置情報を見て対応を取ることができたというお客様もいらっしゃいました。また、テキストではなく、地図やステータスで可視化されると、経営層への報告・説明がしやすいという側面もあると思います。


Q&Aコーナー

Q.海外でアラート情報を得るためにはどのような事象を設定するのでしょうか?
A.(Spectee 村上)Specteeは国内・海外同じ仕組みで情報を取得しており、地域・国・事象などで条件設定することができ、軍事・クーデターやテロなど海外でサプライチェーンに影響を与える情報を取得することができます。また、地震については例えば「この地域でマグニチュード6以上の地震が発生したら」というようなアラート条件を設定することができます。

Q.Shippioさんは輸送のみでしょうか?また、情報収集源はフォワーダーやキャリアからだけなのか、それともそれ以外にもあるのでしょうか?
A.(Shippio 川嶋)ドア・ツー・ドアの国際輸送が「Shippio」のカバー範囲です。ドア・ツー・ドアで弊社に輸送をご依頼していただいた場合は、全てShippio側でタイムリーに情報を反映しております。クラウドサービス「Shippio」のみを利用する場合は、船の入港日・出港日を一日2回更新しております。情報源としては、主要船社47社から情報収集するとともに、船の位置情報をGPSから取得しています。

Q.能登半島地震では通信の途絶が発生しました。そういった場合の情報収集対応についてどう対策しているのでしょうか?
A.(Spectee 村上)今や電気・ガス・水道に加え、スマートフォンが最も重要なインフラのひとつになっているかと思います。スマーフォンがつながらなければ、情報を集めることも発信することもできないためです。ただ、SpecteeはSNSの情報だけではなくて、道路カメラ・河川カメラの情報(有線でつながっている)だとか、自動車のプローブデータをもとにした、道路が通れるか否かといった情報も取ることができ、多角的に状況を把握することができます。また、実際今回の能登半島地震では、電話の通信が遮断されても、家のWifiが生きているなどして、SNSに膨大な情報があがってきていました。

Q.能登半島が分断されるリスクは高い。災害時の物流を確保するために何が必要でしょうか?
A.(Spectee 村上)日本には半島の地形が多く、能登だけの問題ではないと思います。能登半島に入って行く主要な道路が遮断されてしまったことによって、ほぼ島のような孤立状態に陥ってしまいました。今後対策をしていかなければならないと思いますが、物流の確保という点で、一企業ができることは限られているかなと思います。サプライチェーンを守るという意味では、Shippioさんが述べておられたように、いかに冗長性を持たせるか、だとか、他の企業から調達できるような体制を整備しておくことが必要なのではないでしょうか。
A.(Shippio 川嶋)Shippioはソフトウェアによるサービス提供なので、物流の分断リスクへの対策は難しいと思います。ただ極端なことを言えば、トラックのドライバーさんなどにもクラウドサービスに入って頂くことで、関係各所で情報を共有し、チャットでスムーズに連絡を取り合うことで、スピーディに対応していただけるのではないかと考えます。

Q.製品の輸送が道路の分断などで滞っているのがSNSではわかりません。SNS以外の情報でわかるのでしょうか?
A.(Spectee 村上)道路状況を知ることについては、そもそもSNSよりプローブデータのほうが有用で、SNSはあくまで現場の情報を画像・動画で把握することに活用されています。SNSだけで全てを把握するのは難しいため、それ以外の情報も組み合わせて多角的に見ることが大切だと思います。例えば、大雪が降ってトラックが何千台もスタックしてしまうというようなケースが発生しますが、路面がどのような状態になっているかなどは現場からSNSに投稿された情報を見たほうが実態をつかむことができます。

Q.SNSには虚偽の情報が沢山あると思いますが、それが正しいかどうかの判断は行っているのでしょうか?今回の地震は1月1日に発生したわけですが、その際は誰かが出社して対応していたのでしょうか?また、SpecteeのBCPとしてデータセンターの分散運用などをしているのでしょうか?
A.(Spectee 村上)SNS に投稿された情報については、その全てを配信しても不必要なものを含めたその情報量に圧倒されてしまうことになりますので、AIで解析をして、情報の信憑性や有用性を判断しています。デマの可能性をAIで判断をしたうえで、24時間体制で人間がチェックをしてから情報配信を行っています。危機事態下で、お客様の方で信憑性の確認をやっている余裕はないと思われます。また弊社はリモートワークで働ける体制が整備されており、出社をしなくてもいつでもサービスを稼働させ続けられるようになっています。また、サーバーについては複数拠点に分散して冗長化を確保しており、これまで災害でサービスが停止したということは一度もありません。

Q.Specteeのサービスでは、仕入先だけではなくて、納品先も登録したりマッピングしたりすることはできるのでしょうか?
A.(Spectee 村上)可能です。完成品からスタートして、その部品のサプライヤーであったり、完成品を納品する先なども登録することができます。


◆Sepectee SCRの紹介
https://spectee.co.jp/service/specteescr/
現在、自然災害や地政学的なリスクなど様々なリスクによって事業が脅かされるなか、全世界の危機事象の発生を即時に覚知し、お客様のサプライチェーンの情報とかけあわせて被害や生産への影響を自動収集・可視化するサービスです。

◆Shippioの紹介
https://www.shippio.io/
貿易業務を可視化・効率化するクラウドサービスを開発・運営するとともに、物流会社としての機能も備えるフォワーディングとITソリューションをワンストップで提供する日本発のデジタルフォワーダー。貿易業務は、電話やメール、ファックスなど情報共有手段が多岐に渡り、社内外のコミュニケーションのハブである貿易担当者に負荷が集中しています。不測の事態が発生した際、貿易担当者をハブに伝言ゲームが発生し、対応が後手に回ってしまいがちです。クラウドサービス「Shippio」は、誰でも簡単に最新情報にアクセスでき、被害を最小限に抑えることができます。

(要約:根来 諭)
February 21, 2024


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信頼できる危機管理情報サービスとして続々導入決定!

スペクティが提供するAI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性・正確性・網羅性で、危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握することが可能です。

また、『Spectee SCR』https://spectee.co.jp/service/specteescr/)はサプライチェーンに影響を与える危機を瞬時に可視化し、SNS・気象データ・地政学リスク情報など様々な情報をもとに、インシデント発生による危機をリアルタイムで覚知し、生産への影響や納期の遅れ等を迅速に把握することができます。

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