水害発生!その時、被害状況を瞬時に可視化・予測【2021年9月29日開催】

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毎月テーマを変えてお届けしているスペクティによるWebセミナーですが、9月29日には「水害発生!その時、被害状況を瞬時に可視化・予測~ AIを活用した『3Dリアルタイム浸水推定図』のその裏側に迫る~」というテーマで開催をさせていただきました。各メディアからも注目をいただいているリアルタイム浸水想定図の現在と今後の課題につきまして、本レポートではセミナーの抜粋をご紹介したいと思います。



スペクティでは、5月に3Dリアルタイム浸水想定図の開発に成功したことを発表させていただきましたが、この夏にも各地で豪雨災害・水害が相次ぎ、都度リアルタイム想定図を作成してきました。本日はその仕組みと、現在進めている精度検証についてお話しいたします。

現在スペクティが既に広く提供している「Spectee Pro」という危機管理情報サービスでは、SNSに投稿された画像・動画・テキストをAIで解析することで有用な情報を抽出し、顧客に届けています。スマートフォンの所有率は9割を超えており、あらゆる人が高性能なカメラを持ち歩いている状況と言え、そこから発信される情報をリアルタイムに解析して防災に活用することは、もはや必要不可欠なことと言えるでしょう。

リアルタイム浸水想定図は、SNSに投稿された画像を起点に作成されます。画像を解析し、特許技術を使って場所をピンポイントで特定、また、例えば自動販売機が水につかっている画像などから水位の推定を行います。そこに降水量や地形データという情報をインプットすることで、数分のリードタイムで自動的に浸水図を作成しています。1枚の画像から約10km四方の範囲の地図を3Dまたは2Dで作ることが可能です。

下記の図は、それぞれ2021年8月の豪雨の際に佐賀県の武雄市と島根県の出雲市について作成した浸水推定図となります。

このうち、武雄市の六角川流域について作成した推定図につき、検証を行いました。左の図は、国土地理院が災害発生翌日である8月15日に航空機で撮影した写真をもとに作成したものです。そして右はスペクティが発災直後に自動作成した推定図となります。

左図は一日経過してからの状態ですので水が引いていることもありますが、我々の推定図との相違も多く見られます。詳細を検証した結果、川のカーブの内側より外側の方がより浸水がひどく、そこが両図のギャップとして大きいことがわかりました。標高のデータだけではなく、地形や川の流れなども計算に反映させるべく、今後補正とAIの再学習を行い、精度を高めてまいります。

さらにいま進めているのが、リアルタイムでの浸水状況の把握だけではなく、SNSの情報に他の様々な情報を掛け合わせた上での浸水予測シミュレーションです。

先日新聞などでも報道されましたが、スペクティが名古屋市とともに実証実験を予定しているのが、SNS・河川カメラ・水位計データ・気象データを使って水害シミュレーションを行い、さらに過去の発報記録の学習データをかけあわせることで、避難指示の発報可否や発報レベルの判定をサポートするという取り組みです。自治体の災害担当の皆様が苦慮されているのが避難指示に関する意思決定で、その部分をテクノロジーでサポートできればと考えています。

SNSを活用してこうした「危機の可視化」を行うことの最大の利点は、圧倒的なスピードとリアルタイム性にあります。また、水位計などが無い場所でも、そこにSNS投稿する方がいれば現場の情報が入手できます。

しかし一方、課題として挙げられるのは、精度をさらに上げるためには詳細な標高データや、地形による水の流れの推定(流体力学的な物理シミュレーション)が必要になるという点です。また、SNSの弱点と言えるのは、航空写真などに比べると俯瞰性に欠ける点や、また、投稿する人がいないような地域についてカバーすることができない点です。しかし、こうした弱点をカバーする取り組みもすでに進んでいます。

9月8日に発表した通り、一般財団法人リモート・センシング技術センターの協力のもと進めている、衛星画像とSNSの投稿画像の解析をかけ合わせた災害監視システムの開発が、内閣府「令和3年度 課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」に採択されました。このプロジェクトのもと、SNSと衛星画像の弱点を補いあったシステムを開発し、より正確性の高い災害時の被害推定技術の開発を進めてまいります。

スペクティは「危機を可視化する」ことをミッションに掲げて日々歩を進めています。それも、「現在何が起きているのか」だけではなく、「過去何がどのように起きたか」の分析や、「未来に何が起こるか」の予測も含めて可視化することで、災害によって人命や資産が損なわれることがない社会の実現に向けて邁進していきます。

(根来 諭)
October 29, 2021


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スペクティが提供するリアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』(https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性、正確性、網羅性で、「危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握すること」が可能です。AIを活用して情報解析、TwitterやFacebookなどのSNSに投稿された情報から、自然災害や火災、事故などの緊急性の高い情報、感染症に関する情報など、100以上の事象を、市区町村、空港や駅、商業施設、観光地周辺といった対象と組み合わせて、「どこで何が起きているか」をリアルタイムに確認できます。

(リアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』)

 

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