不確実な時代に何が必要か、競争優位を確立する戦略的サプライチェーン改革
防災・危機管理ソリューションを提供するSpecteeは、毎月様々なトピックでWebセミナーを開催しています。2026年6月16日には「不確実な時代に何が必要か、競争優位を確立する戦略的サプライチェーン改革」と題し、株式会社船井総研サプライチェーンコンサルティング(以下、船井総研SC)の中野好純氏を特別ゲスト講師としてお迎えして開催しました。
ホルムズ海峡封鎖に端を発するサプライチェーン混乱が続く中、企業が直面するリスク環境は急速に変化しています。セミナーでは、Specteeの村上と船井総研SCの中野氏が、地政学リスクへの対処から平時のSCM改革まで、実践的な観点でそれぞれの知見を解説しました。本レポートでは、その内容を一部抜粋してご紹介します。
船井総研SC 登壇者プロフィール中野 好純
1993年、外資系消費財メーカーのP&Gへ入社。買収先におけるS&OPモデルの構築や、化粧品・ヘアケア部門のサプライチェーン再構築に従事する。1998年からは船井総合研究所にて、大企業を対象としたサプライチェーンおよび市場戦略プロジェクトの統括を歴任。2012年には上海法人の立ち上げを牽引し、総経理として日系大手の中国市場拡大を支援した。2020年より現職に転籍し、現在はロジスティクスからサプライチェーン全般への領域拡大を推進、多角的な支援を展開している。
「サプライチェーンを可視化する」Specteeの最新テクノロジー
セミナー前半はSpectee 村上より、Specteeのサプライチェーンリスク管理ソリューションについてお話いたしました。ご興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。
製造業のサプライチェーンのリスクを統合管理「Spectee SCR」
https://spectee.co.jp/service/specteescr/
シンプル・低コストでサプライヤーのリスクを可視化「スマートリスク管理」
https://spectee.co.jp/smart_risk_management/
お問合せ窓口:pro@spectee.com
❶激変するリスク環境と、日本製造業の3つの構造改革
Spectee 村上:ホルムズ海峡封鎖により1日100隻超の通航が約3隻まで激減し、エネルギーコスト急騰・ナフサ由来原材料不足・工場用手袋の入手困難による生産停止など、間接資材の欠如が工場稼働を止めるという現実が顕在化しています。この事態から、Specteeは3つの構造改革の必要性を提言します。
①備蓄・在庫の見直し
②調達の冗長化
③リスク管理の高度化・日常化

❷SCMの不具合が営業利益を蝕む4つのポイント
船井総研SC 中野氏:ホルムズ海峡問題により、コンサルのアポイントが複数中止になるほど現場は混乱しています。有事が落ち着いても、SCMの構造的な問題は利益を静かに蝕み続けます。下記は、よく見られる現象とそれによる営業利益の阻害例になります。

❸営業利益を倍増させる7つの手法
船井総研SC 中野氏:こうした営業利益の圧迫を防ぐために、 7つの手法を提示します。すべての起点となるのがAI需要予測です。過去実績に加え、チャネル数・市場価格・気象・販促係数などをAIに取り込むことで、「本当に需要を喚起したのか、押し込んだだけか」が商品ごとに見えてきます。ERPの1/100程度のコストで導入でき、見込み生産の会社には特に効果的です。これをきっかけに無駄な生産を減らし、浮いたコストをマーケティングに再投資することで、利益体質に転換した例も多くあります。SCMとマーケティングは「攻めの機能」として両輪をなし、市場ファーストで一体運営できる組織が改革の基盤です。

②ショートサイクル生産 在庫圧縮によるキャッシュフロー改善を優先し、大ロット生産の見直しを検討する。
③「なくてもいい商品群」の特定 売上・利益への貢献度と需要の安定性を掛け合わせ、利益を食いつぶす下位商品を可視化する
④What-Ifシナリオの議論 「ナフサが2ヶ月遅れたら」など有事シナリオを経営陣も含めてS&OPで議論する。
⑤横持ち配送の削減 販売計画精度の向上とショートサイクル化でエリア間の在庫偏在を解消する。
⑥無駄な調達の排除 What-ifシナリオから導かれたファクトに基づいた調達計画を立てる。
⑦廃盤ポリシーの全社共有 ディスコン対象を関係部署で決定し、販売チャネルをまたいで方針を統一する。
❹「やめる」と言えるのは経営者だけ
セミナー後半は対談形式で、SCM改革を阻む現場の壁と、それを乗り越えるための経営者の役割について議論しました。
・月末の押し込みという慢性的な病
Spectee 村上:代理店への押し込みで流通在庫が積み上がるケースをよく見ます。どう防ぐか悩む企業が多いですね。
船井総研SC 中野氏:押し込みは一度始めると誰かが止めない限り続きます。流通在庫を把握しないまま作り続け、知らないうちに体力が弱まる。まず経営者から「やめる」という指示を出してもらい、AI需要予測のデータで必要性を示します。
・下位5%の廃盤整理とショートサイクル生産
Spectee 村上:先ほどの下位5%の商品を切るという判断も、理屈では分かっていても、実行できる企業は少ない印象です。
船井総研SC 中野氏:判断できるのは経営者だけです。SCM部門が「下位5%が利益を食いつぶしている」と数字で示し、経営会議に上げることが重要です。ショートサイクル生産も同様で、大量発注のコスト優位は実際には小さく、2年分の在庫を抱えるよりも原価が多少上がってもショートサイクルに切り替えた方が得なケースが多い。
今回のセミナーで見えてきたのは、サプライチェーン管理に求められる視点の根本的な転換です。地政学リスク・自然災害・調達途絶が日常的に発生する時代において、リスク情報のリアルタイム把握と、利益を生み出す体制への構造改革の両輪が不可欠となっています。SCMはコスト部門ではなく「攻めの機能」。平時から変革に取り組むことが競争優位の源泉となるでしょう。
(要約:井垣麻美子)
Aug 04, 2026
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