ソニーグループが挑むレジリエントな組織づくり~有事に機能する危機管理体制の作り方とAI×SNS情報等の活用事例~【2022年7月7日開催】

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スペクティでは毎月色々なテーマでWebセミナーをお届けしていますが、7月7日にはソニーグループ株式会社 HQ総務部 リスクマネジメントグループで、危機管理・事業継続計画に関するグローバルガバナンス、各拠点リスクの低減の推進、本社の危機管理事務局などを管轄されている大塚様をゲストにお呼びして「ソニーグループが挑むレジリエントな組織づくり~有事に機能する危機管理体制の作り方とAI×SNS情報等の活用事例~」と題したセミナーを共催させていただきました。本レポートでは、ソニーグループ発表部分の抜粋版をお届けしたいと思います。


ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」をPurpose(存在意義)として掲げて多様な事業を展開しています。その中で、リスクマネジメントグループとしては、自然災害等に対するソニーグループ全体の危機管理能力の最大化と、企業活動への影響の極小化を図る、をミッションに据えて活動しています。

これまでのインシデント対応事例をひとつ挙げると、2019年の終わりから始まった新型コロナウイルス感染拡大があります。2020年2月には、ソニーグループCEOをトップに据えた危機管理体制を立ち上げ、全世界から収集される感染情報を集め、その場で意思決定をする体制を構築することができました。非常に迅速に対処することができたと考えていますが、最初からできていたわけではありません。

少しさかのぼって、2016年には熊本地震という大きな災害が発生しました。幸い大きな人的被害はありませんでしたが、熊本にあるソニーのイメージセンサーの生産拠点が大変な被害を受けました。当初は1週間程度で回復すると思っていましたが、震度7の本震が2日後に発生、その後も余震が続いたことで安全確認のために工場内に立ち入ることもままなりませんでした。翌日朝には本社からスタッフと物資を輸送開始。私もその足で現地入りしました。尽力した結果、復旧は順調に進み、5月9日には稼働再開し、9月末には震災前の水準に戻すことができました。

熊本地震で対処にあたり、現場と本社の総合防災本部の間を橋渡しした経験から、ソニーグループに重大な影響を及ぼすインシデント・事業中断に備えて、効率的な活動ができる体制の必要性を痛感しました。それを受けて、現場・本社総合防災本部・クライシスマネジメントチームの間のコミュニケーションプロトコルや危機管理体制の発動フローを構築し、以後これに沿って対応しています。これがあったからこそ、2020年2月に、新型コロナウイルス感染拡大に対応する危機管理体制を迅速に立ち上げることができたわけです。

課題と解決策

当時の課題としては、「本社のグローバル危機管理体制が不明確」であったことと、「本社が被災の対応を行った経験がない」ということでした。その解決策として、災害時の意思決定や行動などを確認する、災害発生時のコミュニケーション手段を確保する、疑似的に緊急事態を体験することが必要であると考えました。下記がそのための具体的な取り組みです。

「行動の整理/ツールの用意」の部分で大切だと考えたことは、災害発生時には初動対応が何より重要で、その際に組織間でしっかり連携できることが欠かせないということです。そのため、初動対応でのポイントを整理し、会議開催プロトコルやコミュニケーション手段の整備、そしてマニュアルの作成と周知を行いました。マニュアルについては、あらゆるアクションを全て吸い上げてまとめると辞書のようになってしまい現場では使えません。なので、原則を押さえた薄いものとし、関係者への周知説明を徹底しました。

「訓練」の部分は、整理した行動を検証して課題を抽出し、総合演習、レクチャー・シミュレーション、メールでの周知を通じて行いました。

情報収集と分析・活用の事例

ソニーグループの拠点は全世界各地に点在し、数千人が働く製造事業所から数人のオフィスまであります。危機管理は初動が重要で、被災した拠点から本社などに連絡するルールを定めてはいるものの、その通りワークするかは別で、現地から第一報があるとは限りません。目の前に怪我をしている人がいたら、連絡より人命救助を優先すべきです。

よって、現地に頼らずにインシデント発生をキャッチする必要があります。ソニーグループでは、様々な専門サービスやニュースレター、メンバーによる情報収集やRPAを活用するなどしてインシデントを覚知する体制を整えています。Spectee Proはその情報源の一つとして活用しており、グループの拠点を登録しておいて情報を覚知しています。具体例としては、2021年1月27日に、神奈川のコールセンターがある地域で停電が発生しましたが、本社では現地と同タイミングで事態を把握し、対処を行うことができました。

(根来 諭)
August 03, 2022


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