【Webセミナー】気象予測の未来~AIの活用で予報・予測はどこまで変わるか~【2023年7月12日開催】

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毎月、防災や危機管理に関する様々なトピックでお送りしているスペクティのWebセミナーですが、7月12日には『気象予測の未来~AIの活用で予報・予測はどこまで変わるか~』と題し、日本気象協会の丹治和博様をお招きしてお届けしました。本レポートではその抜粋をお伝えします。

■登壇者プロフィール
一般財団法人 日本気象協会 北海道支社 統括主幹 丹治 和博
北海道大学農学部農業工学科卒、日本気象協会北海道本部に入社。東北支局長、事業本部防災ソリューション事業部技術統括を経て現職。おもに冬期の道路気象災害の解析、吹雪対策や雪崩対策など道路防雪対策の検討、道路気象情報の開発と提供に取り組む。技術士(総監・建設)、測量士、気象予報士。

気象予測ができるまで

気象予測を行うには、まず今気象がどうなっているのかを知る必要があります。そのためには地上の観測機器に加えて、ラジオゾンデという気球や気象衛星などを使った上空の気象観測を行います。そうした気象観測を世界同時に行い、そのデータを収集し、コンピュータが解析しやすいように地球を覆う気象データの分布を作成します。そのデータをもとに、スーパーコンピュータで物理モデルなどを使って計算します。この計算結果は数値の並びでしかないため、これを天気図や具体的な天気予報に「翻訳」して皆さまに届けています。

気象予測にも得意・不得意がある

気象予測の精度は年々上がって来ていますが、気象予測にも得意なことと不得意なことがあります。現在では2、3日先の低気圧・高気圧の位置やコース、冬型の気圧配置などは非常に精度よく当たりますが、「太平洋側の降雪」「台風による暴風、大雨、高潮」「線状降水帯による大雨」は正確な予測がまだ非常に難しいと言えます。

太平洋側に降雪をもたらす南岸低気圧雲域の位置は、現在ではかなり精度よく予測されますが、降雪をもたらす雲域の予測が難しく、雲域のわずかな違いによって雪の降り方が大きく変わってしまうという特徴があります。また、南岸低気圧で降る雪は、地上の気温が0℃前後で降ることが多く、ちょっとした気温の違いで雨か雪かが変わってきてしまうという背景もあります。

台風については、ひとつひとつ個性が違うため、進路の微妙な違いによって大雨や強風に見舞われる地域が変わってきます。また、昨今話題となる線状降水帯も予測が難しいものです。現在では線状降水帯の細かいメカニズムが十分に解明できていません。さらに、数値予報モデルでは一番細かくても2キロ四方、通常は5キロ四方の格子ごとに計測するため、その中に積乱雲がすっぽり入ってしまい、積乱雲の中の降水のメカニズムを再現して計算できないという課題があります。

気象予測の限界とその突破法

このように現在の気象予測にはまだまだ限界がありますが、「当たりません」とは言っていられず、いくつかのアプローチでこれを解決しようとしてます。

気象予測モデルはそれぞれ一長一短があり、ひとつのモデルでは気象予測はあたりません。そのため、複数の気象予測モデルの結果を組み合わせることで、より確実な気象予測を生成できます。また、観測値を得ることが難しい事象に対しては、スペクティさんが取り組まれているようにAIなどを活用して実況を把握することで、目先の気象精度の向上が図れます。さらに、人々が知りたいのは雨が何ミリという数値ではなく、社会経済活動や市民生活への影響でありますので、気象以外の事象を組み合わせることでその影響の大きさを予測するというアプローチもあります。

トークセッション

村上:「予測が難しい」というのは一体どういうことでしょうか

丹治:予測がなぜ外れるか、というと、ひとつには予測モデルが決して完璧ではないということが理由です。また、観測した数値が完全に正しいとは限らないことももうひとつの原因です。そうした誤差は先の予測をしようとすればするほど拡大してしまいます。この課題に対しては、「アンサンブル予測」という手法があり、少しずつ違う初期値を多数用意して複数の予測計算を行い、多数の予測結果から最もあり得るシナリオやその確率を予測します。これは降水量・降雪確率の予測などに応用できます。あとは、ひとつの予測モデルで精度を上げていくのは難しいため、国内外の色々な予測モデルのいいところどりをして統合化処理する「統合気象予測モデル」が開発・運用されています。

村上:AIの世界でも当初は猫を犬を見分けることは難しかったのですが、色々なモデルや色々なアプローチを組み合わせることでそれを乗り越えてきたので、同じような考え方だと思います。

AIのような新しいテクノロジーや新しい観測機器が出てきていますが、未来の気象予測を考えた時に、どのような技術と組み合わせるといいか、そしてどのようなアプローチがありえると思われますか?

丹治:気象のデータだけではなく、様々なデータを集めて組み合わせることで、社会で起きている「いつもと違う事象」を見つけることができないか、という内容の研究に取り組んだことがあります。その際は、気象のデータに加えて、自動車の走行データやTwitterのデータなどを組み合わせ、何らかの非日常が発生してるということを検知するというやり方でした。このようなアプローチはこれからも有望だと思います。

(要約:根来 諭)
Aug 30, 2023


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