『BCPのすべて』解説セミナー【2023年4月18日開催】
- 気候変動・気候危機
- 防災
- テクノロジー
- 国際情勢
- BCP・危機管理
- レジリエンス
- サプライチェーン
スペクティでは防災・危機管理に関するお役立ち資料をご提供していますが、その中でもBCPについて解説した全66ページの資料『BCPのすべて~意義・策定方法からレジリエンス経営の実現まで~』については、「非常に勉強になった」「部内の勉強会で使わせていただいた」など、ご好評の声を多くいただいております。
今般、最新の情報を反映した最新版を公開したことを受け、4月18日には解説セミナーを開催いたしました。また、本年1月1日に発生した能登半島地震から見えてきたBCPの課題についても解説いたしました。本レポートではその抜粋版をお届けしたいと思います。
『BCPのすべて』のダウンロードはこちらから
https://spectee.co.jp/documents/wp_bcp/
❶BCPの重要性が増している理由
BCP(事業継続計画)とは、企業にとって危機事象が発生した際に、損害を最小限に抑え、事業の継続や早期復旧を図るための計画を言います。このBCPを導入しようとする企業が増え、国もそれを様々な制度で支援しています。その背景には、企業の事業を阻害してしまうような様々なリスクが現在高まっており、不確実性の高い時代になってきているということがあります。
現在のリスクトレンドして、大きく4つ挙げることができます。まずは気候変動・気候危機。温室効果ガスの排出に伴う地球の温暖化が進んでおり、このまま対策をしなければ世界の気温は、温室効果ガスを大量に排出し始める産業革命以前と比べ2.0℃以上上昇してしまうことになり、自然災害が多発化・激甚化することが予想されています。
また、テクノロジーの進化も大きなリスク要因です。一般的にテクノロジーが発展することはポジティブなことですが、現在起きているのは、人工知能・コンピューティング・バイオテクノロジーなど色々な分野が融合して技術進化が加速度的に進んでいることです。あまりに急速な技術進化に対し、人間の意識や社会制度は追いついていけません。ChatGPTによって職場奪われるという危機感が高まっているのは一例で、社会を不安定化する要因になり得ます。
地政学については後に詳しく述べるとして、サイバー攻撃が増加していることは、現在の我々の社会がITやインターネットに完全に依存していることを考えると、ますます大きなリスクとなっていくでしょう。
❷BCP策定におけるキーポイント
BCPを策定するにあたっては、以下の6つのステップを踏んでいきます。
この中でも重要だと考えられるのが「②分析と検討」のパートです。BCPを策定するということは、何らかの危機事象が起きた時に、どのような戦略に基づいて、どのようなアクションをとるのかを計画することです。その基礎となるのが、自社の中核事業は何か、そしてそれを取り巻くリスクは何か、そして目標や許容レベルをどこに設定するかといったことを分析し検討することです。
その中でキーポイントとなるのが「自社にとってのボトルネックはどこか?」を徹底的に洗い出すことです。自社の事業のバリューチェーン、サプライチェーンを俯瞰した上で、このプロセスが阻害されたら事業が大幅に阻害されて復旧も難しい、という弱点を見つけ出して対策を打つことが重要です。中小企業の場合は、大袈裟な計画書を準備するまでもなく、これができているだけでリスクへの対処は容易になるはずです。
❸地政学リスクの高まりと対応
現在、地政学リスクがかつてないほどに高まっていると言うことができます。
現在、我々は「ポスト・ポスト冷戦時代」に生きていると言われます。これまで国際社会を支配してきた秩序が大きく乱れ、それが表面化したのがロシアによるウクライナ侵攻や、中国の覇権主義的な行動と言うことができるでしょう。それにともなって現在進行しているのが「世界の分断」です。中国やロシアを筆頭とした強権主義的な陣営と、欧米を中心とした民主主義的な陣営が対峙する構図が出来上がりつつあります。
それによって、第二次世界大戦後ずっと進展してきた、いわゆるグローバリゼーションに急激なブレーキがかかり始めています。企業は「世界の工場・中国」を中心としたサプライチェーンの組み替えを余儀なくされ、また各国の規制リスクも高まることで国際的なビジネスの環境は大きく不安定化するものと考えられます。
こうした高まる地政学リスクに対応するにはシナリオを作ることと、トリガーを見極めることが大切です。地震や洪水といった危機事象は自社への影響がストレートですが、地政学リスクの場合には原因事象と自社への影響に距離があります。よって、例えば「気候危機に対して各国が規制を導入するリスク」という原因事象がある場合、まずシナリオ分析をし、どういう国がどのような規制を導入する可能性があるかを検討します。その上で、自社に影響が及ぶようなトリガーを、例えば「A国が規制を導入することで自社にとって戦略的な部材であるBのC国からの調達が難しくなる」といった形で見定めたうえで、そのトリガーの発生について、報道やシンクタンクのレポート等をもとにモニターする必要があります。
❹能登半島地震がつきつけた課題
本年1月1日に、文字通り日本を揺るがした能登半島地震。そこから見えてきたBCPの課題は何でしょうか。
ひとつはBCPが思ったように機能しなかったということです。せっかく策定したBCPであっても、それに沿って行動することで実際に効果をあげなければ意味がありません。内容を定期的に見直すこと、そして訓練や教育を通じてBCPに実効性を持たせることが非常に重要です。
もう一点は、自社の状況把握はできたとしても、自社の事業を支えるサプライチェーン全体への影響把握には時間がかかってしまったということです。原材料を調達し、生産し、それを顧客まで届けるサプライチェーン全体において、何かインシデントが発生した際にそれを迅速に覚知し、さらに影響範囲や復旧までの見込みなどを把握する体制を築くことで、対応力は大幅に改善できるものと思われます。
⑤不確実な時代:BCPは経営のど真ん中へ
最後に、BCPは「非常時の行動計画」というだけではなく、もっと経営の中心に位置づけるべきでなはいかという話です。
BCPは一義的には、事業やステークホルダーを守るために導入するべきものですが、その策定の過程において、事業継続に何が重要なのかを明らかにするために、事業を分解し、業務の関連性や優先順位などを徹底的に検討する必要があり、結果的に事業継続能力が高まるだけではなく、効率化など業務改善につながります。
ましてや今は不確実性の高い「危機の時代」です。常に企業は様々なリスクに囲まれて事業を営んでいます。よって、BCPというのは総務部やリスクマネジメント部など一部の部署が取り組むべき課題ではなく、経営戦略の中心に据えられるべきであり、トップマネジメントのコミットメントが必要です。そして、策定の目的は、自社の企業価値を毀損しないこと、ではなく企業価値を向上させることとするべきです。多様なリスクに囲まれながらも事業を止めない企業の価値は、これまで以上に高まっていくはずです。
(要約:根来 諭)
May 01, 2024
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