【Webセミナー】AIがリアルタイムに浸水を推定!~ 脅威の精度を実現するサービス技術の裏側に迫る【2023年8月2日開催】

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毎月、防災や危機管理に関する様々なトピックでお送りしているスペクティのWebセミナーですが、今回は昨年から本格的にサービスを提供している「浸水推定」についての解説を、CEO村上と開発を主導したCDO(最高開発責任者)岩井の二人でお届けしました。本レポートではその抜粋をお伝えします。

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スペクティでは、SNSに投稿された画像やカメラ画像をもとにして、シミュレーションによって浸水の被害範囲をリアルタイムで予測する浸水推定機能を、Spectee Proというサービスの中で提供しています。SNSに投稿された写真では「家のまわりが冠水している」などという点の情報はわかりますが、その周辺がどうなっているのかがわかりません。それを可視化し、どこまで浸水しているかがわかる機能です。

従来、浸水の範囲を可視化するには、実際に現地を調査をしたり、飛行機を飛ばして航空写真を撮らないとわからないというのが当たり前でしたが、それでは罹災証明の発行などの目的では十分でも、現場で災害対応している人たちをサポートするには遅すぎました。現場の状況をすぐに知りたい、というニーズに応えるために開発した機能になります。

また、Spectee Proのユーザー(自治体・企業)や、損害保険会社、国土交通省、研究パートナー企業様などにデータを提供しながら、検証を行なったりもしています。他にも、衛星のデータとSNSの情報を組みあわせ、宇宙からの目と地上の目でより正確な浸水範囲の推定を行う取り組みを、RESTEC様と一緒に行いました。

参考
スペクティとRESTEC、人工衛星とSNS情報から大雨時の浸水状況を3D化し再現
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000143.000016808.html


◆トークセッション◆

村上
浸水推定の取り組みは色々とやってきましたが、その中で最も困難だったことは何ですか?

岩井
推定の精度を出すという点では、平らな面ではなく傾斜地になっている箇所については、浸水の推定がしにくいということがわかりました。今の仕組みを改善していかなければならない点だと思っています。

村上
地形の特徴によって変わってくるんですね。精度が高く出せるケース、出せないケースはどんなものがありますか?

岩井
アンダーパスなどは、地形データに反映されていなかったりするので、そういった箇所は精度として落ちやすいです。一方、河川に近いところの平面はかなり精度高く出せます。

村上
あと、SNSの画像は一般の方がスマホで撮影するので、すごく深く見えてしまったり、深さを判定するのが難しかったりしますね。固定カメラで撮っている場合のほうが解析するには都合がいいです。

◆Q&Aセッション◆

Q. SNS画像から得られる地点の浸水の深さを、あるエリアに広げて可視化するものと理解しました。この場合、一点から広げて推定できるエリアの広さはどれくらいになりますか?

A. だいたい10km四方です。場合によって狭めたり広げたりして作成しています。理論的にはどこまでも広げることはできますが、広げすぎると精度に影響します。


Q. インプットされる地形のデータはどれくらいの頻度で更新されていますか。

A. 1か月に一回ほどで情報を取りにいき、更新されていたら反映しています。


Q. 浜松市との実証実験では、実際にどのような調査をしたのでしょうか?

A. 我々がSNSに投稿された写真・動画をいくつかピックアップして、実際の場所を見に行き、浸水痕を確認してそれを浸水推定図に反映するということをしました。市の職員の方たちと、浜松市の端から端まで広く回りました。浜松市で作られている推定図は、「過去に浸水があったポイントがわかる」ということを主目的に作られているため、報告があがっていない場所については抜けている傾向がありました。


Q. 避難行動について考えています。かなりローカルな予測が必要ですが、避難しやすい時点での予測とアラートについてお考えを聞かせてください。

A. 浸水推定情報を出す一番の目的は、早めに避難させることや、浸水が進んでしまっている場合には別のアクションを取る決定をすることです。ローカルにアラートを出すには、予測というものが必要になってきます。予測をして、「1時間後にこれくらいの浸水になる」という情報を出すのは、技術的には今後できるようになっていくと思います。そのためには降水量の予測や水位の予測の情報も必須です。予測の実現に向かって、そういった情報も含めて一歩一歩研究開発を進めています。正確性だけでは足りず、迅速に予測をしてアラートを出すということが大切だと考えています。


Q. 市町村などの行政機関と防災協定を結んでいる例などはありますでしょうか?その際どのような運用でやっていますでしょうか?

A. 防災協定はいくつかの行政機関と結ばせていただいています。例えば石川県加賀市では、河川脇にカメラを設置して、川の氾濫を予測するということに取り組みました。他には名古屋市でも実証実験を行い、水位計と降水量のデータを使って氾濫予測モデルを作りました。


Q. 浜松市ではだいたい何ポイントくらい浸水痕を収集したのでしょうか?

A. 10地点以上回りました。具体的に浸水痕というのは、ブロック塀の下の方が黒ずんでいる部分などで、そこが地面から何センチかを測りました。


Q. リアルタイムで避難アラートが出すような機能が実現できるまで、どれくらいの時間がかかりますでしょうか?

A. 例えば河川の水位などをAIの予測値として出すのは難しくなく、出そうと思えば来年の出水期までに出すことはできると思います。ただ、現場で最終的に避難指示を出す意思決定を下すには、自治体の判断が必要になっており、つまり人間が判断することが必要となります。


Q. 損保会社との提携について、今後の展開を教えて下さい。

A. 各社と色々な取り組みを行っており、いまお話できる事は少ないですが、今後も災害が頻発すると保険金の支払いの部分が非常に大変になることが予想されるので、この部分をAIの力を使って効率よくできるようにしていきたいと考えています。保険金が迅速に払われなければ、それだけ復興も遅れてしまうため、とても大切な課題です。


Q. 具体的なオペレーションを意識した場合、救助や復旧のために、浸水がいつ改善するのかを知りたくなると思いますが予測は可能でしょうか?

A. 水が引いていくタイミングを予測するのはとても難しく、我々の中でも課題となっています。土の水分量であったり、色々な要素が関係してくるため。


Q. 海外の災害について、同様のリアルタイム浸水推定はできるのでしょうか?

A. 現在はお客様の大部分が日本であるため、対象は日本になっていますが、海外でもグローバル企業のお客様などからはニーズはあります。技術的には可能で、あとはデータを取れるかどうか次第となります。


Q. 今後、欲しいデータはありますか?

A. 国土交通省が、地上の様々な場所に水位センサーをつけるという事業を行っており、街なかの色々なところに簡易型センサーをつけていますが、そういった取り組みと連携していければ、よりリアルタイムで正確な情報が出せるようになっていくと思います。


Q. 今後の野望は?

A. 例えば台風が近づいている時に、一週間前には浸水推定ができているというような未来の予測を出せればと思い、研究開発に取り組んでいます。


(要約:根来 諭)
September 06, 2023


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スペクティが提供するAI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』(https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性、正確性、網羅性で、「危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握すること」が可能です。AIを活用して情報解析、TwitterやFacebookなどのSNSに投稿された情報から、自然災害や火災、事故などの緊急性の高い情報、感染症に関する情報など、100以上の事象を、市区町村、空港や駅、商業施設、観光地周辺といった対象と組み合わせて、「どこで何が起きているか」をリアルタイムに確認できます。

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