【Webセミナー】自治体における防災テックの活用事例~導入の裏側と今後に迫る~【2023年9月27日開催】

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毎月、防災や危機管理に関する様々なテーマで開催しているスペクティのWebセミナーですが、9月27日には福井県庁防災安全部副部長(危機管理)の三田村佳紀様をお迎えして、福井県では自治体DXでどのようなことを推進しているのか、そして特に防災分野でどのような取り組みをしているのかについてお話を伺いました。本レポートではその抜粋をお伝えします。


冒頭ではスペクティの提供するサービス「Spectee Pro」のご紹介をさせていただきました。AIをはじめとした先進技術を用いて、災害や事故など「どこで何が起きているのか」を覚知したり、浸水の状況を予測したりできるソリューションで、既に非常に多くの地方自治体や中央官庁において導入いただいているサービスです。


防災DXの取組みについて(福井県防災安全部・三田村佳紀様)

福井県では令和3年にDX推進本部を設置し、DX監が全体を統括する体制で、「スマートふくい」の実現のために生活DX・産業DX・行政DXの推進に取り組んでいます。

◆状況把握や避難所に関するDX

雨量、水位、積雪量あるいは土砂災害の情報や避難所の開設状況、道路通行状況などといった多岐に渡る防災情報をひとつのホームページにまとめ、ワンストップで見ることができるシステムを構築しています。自治体職員が情報を入力することで、エリアメールやL-ALERTを通じて住民に対する情報発信がまとめてできるように、関連システムと連携した設計となっているのが特徴です。

被災状況の把握においては、福井県では産学官の連携で県民衛星「すいせん」を打ち上げており、その画像を被害の把握などに役立てています。さらなる活用として、土砂災害対策施設の建設にあたり、衛星画像を解析して地すべり変動量を割り出すことで事業優先度マップを作成し、業務の効率化を図る実証を現在行っています。

被災時に避難所は非常に大切ですが、その運営は大変な労力がかかり、特に避難者名簿を作成するプロセスはどの自治体も頭を痛めているところです。福井県ではSNSを活用して簡単に受付ができる仕組みを作り、避難者情報を把握できるようにしています。また避難者に向けた情報発信をスムーズに行うためにもSNSを活用しています。LINE等が使えない方のためにAI音声による入力の取組みも行っています。LINEとのAPIは福井県で開発を行いましたが、他の自治体様にもぜひご活用いただきたく、興味がある方はお声がけください。

また、昨年局所的な大雨で大規模な土砂災害が発生した際に、川や山間部の道路などの被害状況を限られた人数で把握するのが難しかったという教訓を踏まえて、災害用ドローンの整備を進めています。飛行ルートは事前に登録してあり、災害時には自律運航して被害状況が把握できる仕組みを構築しているところです。

◆道路関連のDX

福井県は雪が多いところもあり、大雪が降ると北陸道や国道8号が大渋滞を起こすということがあります。除雪に対する県民ニーズが非常に高く、雪の情報をリアルタイムでわかりやすく伝えられるように「見える化」推進を行っています。県内には約500~600台の除雪車がありますが、3時間ごとにどこが除雪されたかがわかるようになっています。さらに市町が管理する2,000台の除雪車についても、県から補助をすることで、今年度いっぱいでその全てにGPSを導入して可視化の対象とします。また、コネクテッドカーの走行データを活用して、大雪で除雪しきれずに路面が凸凹してしまっている道路はどこか、というような情報も見られるようになっています。

道路法の改正でどの自治体も5年に一度、定期的な点検を行い、計画的な補修をしなければならず負担が大きくなっていますが、福井県ではクラウド型のシステム使った道路施設データベースを導入し、業務の大幅な効率化を実現しています。本件については金沢大学と連携し、コストを押さえられていることがひとつの特徴です。道路の維持補修については予算が厳しく、これを効率的に行う必要がありますが、福井県内2,000キロの道路を見て回ること自体が非常に労力がかかる仕事です。そのため、現在パトロールカーのカメラ画像を解析し、どこの道路が損傷しているかなどを自動で判別できるようなシステムを構築しています。

また、ドライバーから電話問い合わせがある県管理道路に関する情報について、「みち情報ネットふくい」と連携したAI音声で24時間対応可能にしています。運転している方はスマホを見ることができないため、音声で道路情報を案内しています。

Q&Aとトークセッション

Q. 平常時と災害時の垣根を取り払う「フェーズフリー」という概念があるが、Spectee Proはサービスのアイデア段階からフェーズフリーを必須条件として位置付けていたのでしょうか?

Spectee・村上)
災害時のみに使うものとして自治体が予算を取るのは大変ですし、逆に言うと普段から使えるものでないと、いざという時に使えないという面もあります。Spectee Proというサービスは、フェーズフリーを意識して作ったかというと必ずしもそうではないですが、例えば物流会社にとっての渋滞だとか、その他事故や火災などは毎日どこかしらで起きていますので、そういったもの可視化することで普段のリスク管理ツールとして使っていただき、いざ大きな災害時にも役立つというサービスにしていければいいなと考えています。
福井県庁様の防災を担当する部門は、平常時にはどのような業務をしているのでしょうか?

福井県・三田村)
いざという時の体制を検証したり、訓練を行ったり、また住民の方にいかに情報を届けるかについて強化・改善するような取り組みをしています。

Spectee・村上)
「緊急時には役にたつけど普段は役に立たない」だと自治体では予算がつきづらいと言われることがあります。

福井県・三田村)
市町単位で予算を確保することはなかなか大変だろうということで、なるべく県の方でプラットフォームを用意することで環境を整備しようという考えで進めています。

Q.福井県では、災害時における県と市町村の防災関連機関の間の情報共有について、何かシステムなど活用されているのでしょうか?また、どのように情報収集・共有しているのかお聞かせください。

福井県・三田村)
プレゼンテーションで最初に紹介した総合防災システムがプラットフォームになっています。関係機関がこれをすべて使えるようなっており、IDを配っている関係機関(市町や消防など)の方も情報を入力し共有できるようになってます。本当に緊急事態の場合にはどうしても電話を使うことになりますが、例えば浸水の箇所がどこか、どこで被害があったか、などについてはシステムに位置情報や写真を入れてもらうようになっています。

Spectee・村上)
福井県様はMicrosoft Teamsを入れていると聞いていますが、そういったものを使って市町村と連携や情報共有を行っているのでしょうか。

福井県・三田村)
令和3年にDX本部ができて最初に要望したのですが、最初はセキュリティのハードルがあって県の職員しか使えませんでした。今は市町や除雪の業者様などとも情報のやりとりをできるようになりつつあります。

Spectee・村上)
昨今はTeamsやSlackなどの便利なコミュニケーションツールが沢山出てきているので、自治体の中でもそういったものが広がっていくと便利になるのだろうなと感じています。

福井県・三田村)
普段の業務では便利に使っているので、災害の情報などの伝達にも使っていけたらいいなと考えています。

Q.福井県庁では賞味期限や使用期限がある物品の管理はどのようにされているのでしょうか?

福井県・三田村)
データベースにインプットして47都道府県で情報を共有するような仕組みもあり、そこでデータを見て期限が切れそうなものを順番に訓練・講習会・防災キャンプ等の機会にでお配りしたりしています。

Spectee・村上)
いまは企業様でも、一定の従業員数がいる場合は備蓄をきちんとしておかなければいけないということもあり、悩ましい課題です。大きな会社だと千人単位で社員がおり、置いておくスペースが足りず、期限管理も大変な作業です。我々と同じスタートップ企業でLaspyという会社があるのですが、クラウドで備蓄品の管理ができるサービスを提供しており、民間企業で少しずつ広まり始めています。こうしたサービスは自治体様でも活用できるかもしれません。

福井県・三田村)
福井県では、地元の企業様と協定を結んで備蓄を置いていただいたりといった取り組みもしています。

Q. 防災DXとして様々な取り組みをしていると思いますが、県庁や自治体で新しい技術やサービスを導入する上で困ることは何でしょうか?

福井県・三田村)
結局はコストに跳ね返ってしまうことですが、例えば衛星データでは普通のものですと解像度が低いので、もっと細かいものがあるとより迅速に業務が進められるのにな、だとか、路面の状況確認でも例えばグーグルカーのようなものがあって常に測量できると効率的に道路管理できるのになと思います。

Spectee・村上)
我々スタートアップの視点から言うと、自治体に新しいものを導入していくにはすごく時間がかかるということがあります。スタートアップは企業体力があるわけでないですし、変化についていくためにスピード感が大事なのですが、書類をそろえて予算申請がなされ、その後入札の手続きがあり、ようやく次の年で入る。そこに間に合わなければ、さらにもう1年先の導入になる・・・ただ今はだいぶ状況が変わってきて、やりやすくなってきているのも事実です。

福井県・三田村)
最初に村上社長と接点いただいたのは5年くらい前でしょうか?その時からはだいぶ良くなったと思います。

Q.県民の方へ災害情報を伝えるのにX(旧ツイッター)を活用されているのでしょうか?

福井県・三田村)
Xでの情報発信も行っていますが、フォローされている方の数も限られています。その点、Yahoo!防災ですと県民の四割くらいの方は見ていらっしゃると思うので、なるべくそちらに情報が入るように意識しています。

Spectee・村上)
住民からすると、どこに何の情報があるのかわからないというのが問題ですよね。

福井県・三田村)
なるべくシンプルにやりたいので、「まずYahoo!防災を入れてくだされば、プッシュ式で情報が来ます。細かい情報については「福井県防災ネット」を見て下さい。停電、通信、鉄道・バスなどの全ての状況がわかります」としています。

Q.防災DXにおいて、今後やっていきたい取り組みはありますか?

福井県・三田村)
河川について発信できる情報は、洪水予報河川である大きな河川に限られるため、県として200箇所くらいに設置している水位計を活用して、登録市町を決めればそこの情報は全部プッシュ式で届けるなど、県民の方に細やかに情報をリーチさせるということをやっていきたいと思います。大きな河川は水位がどのようになるかある程度予測ができるのですが、小さい河川では難しいということもあります。水位計・雨量・カメラ映像などそういったものを学習し、水位を予測して県民の方に情報提供できるようになれるといいなと思っています。

Q.スタートアップとしても自治体にソリューションを提供したいが、どう働きかけたらいいかわからないと思っている企業は多いと思います。どのようにアプローチすればいいでしょうか?

福井県・三田村)
1枚でもいいので「オッ」と思うような提案書などがあると、食いつきがいいかなと思います。

Spectee・村上)
我々の経験でも、提案書を持っていくと見てくださったり、とりあえず話を聞きたいと言って下さったりしたことがあります。

(要約:根来 諭)
October 25, 2023


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スペクティが提供するAI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』(https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性、正確性、網羅性で、「危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握すること」が可能です。AIを活用して情報解析、TwitterやFacebookなどのSNSに投稿された情報から、自然災害や火災、事故などの緊急性の高い情報、感染症に関する情報など、100以上の事象を、市区町村、空港や駅、商業施設、観光地周辺といった対象と組み合わせて、「どこで何が起きているか」をリアルタイムに確認できます。

(AI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』)
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