ポストコロナに向けてどのようにビジネスを見直し、立て直すべきか? Aon社のレポートより
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米国シカゴに本社を置く世界最大級の保険・リスクマネジメント企業Aon Corporationが、2021年2月、「Reprioritizing Risk and Resilience for a Post-COVID-19 Future(ポストコロナに向けたリスクとレジリエンスの優先順位付け見直し)」と題する報告書を発行しました。全世界規模で我々を襲った新型コロナウイルスの猛威。それを乗り越え、ポストコロナの時代に向けてどのようにリスクを見直し、何に優先順位を置いて立て直すべきなのか。2020年10月~12月に41カ国の様々なサイズの企業のリスクマネジメント担当社員やCRO、CFOといったポジションの500名を対象に行われたこの調査から、それを考えてみたいと思います。
まず最初に紹介する設問は、新型コロナウイルスが流行する以前から、パンデミックの発生をリスクとして想定していたかどうか、というものです。回答は地域によってかなり結果が分かれました。アジア太平洋は最も高く、約半数の企業が「想定していた」と答えています。これは恐らく2002年から2003年にかけて、香港を中心に流行したSARS(急性重症呼吸器症候群)の教訓があったからではないでしょうか。一方、それ以外の地域、米州・欧州・中近東・アフリカについては7割から8割の企業が想定していなかったと回答しています。
これは、新型コロナウイルスが流行する以前、パンデミックや健康に対する重大な危機が、想定するリスクトップ10に入っていたかを聞いたものです。業界ごとに異なり、ヘルスケア・製薬または自治体は意識が高いことが伺えますが、一方で大きな影響を受けたホスピタリティ産業については11%に留まっていたことがわかります。
上記2つの設問からわかるのは、多くの企業にとってパンデミックは”想定外”であり、準備ができていなかったところに顕在化したリスクであったということです。これは2019年に同じくAon Corporation によって行われたサーベイ「 Aon’s 2019 Global Risk Management Survey」のおいて、”パンデミック”は69 個挙げられたリスクのうち、60番目にすぎなかったことからも伺えます。
次に、災害発生時に最も影響を受ける企業活動である「サプライチェーン」がどのように阻害されたか、という設問です。今回の事象はグローバルに影響が広がったのにも関わらず、意外にも41%の回答者が「特に影響がなかった」と答えています。阻害を受けたうち、上流の調達が困難になったのが17%だったのに対し、需要低下による影響を受けたという回答が36%でした。サプライ・チェーン自体のメカニズムに問題が生じた面より、需要サイドの問題がサプライチェーンに影響を与えた面が大きかったと言うことができます。興味深いことに、7%は新型コロナウイルスに対応することで改善が進んだと回答しています。
次は、BCP(事業継続計画)/BCM(事業継続マネジメント)の見直しに関する設問です。回答者のうち56%が BCP/BCMを見直す必要があると回答しましたが、その理由を聞いたものが下記となります。
業界によってばらつきはあるものの、全体の68%は通常の業務プロセスの一環として見直しを進めると回答。ホスピタリティ業界の83%が最も高いですが、BCPを定期的に見直してアップデートしていくというサイクルが定着している事が要因かもしれません。そして残る32%は、通常のプロセスより優先順位を高く置く形でBCP/BCMを見直すと回答しています。どのような形であれ、今回の新型コロナウイルスから学んだことを、BCP/BCM体制に反映させていくことは必須だと思われます。
ここからは本報告書における「reshape」、つまりポストコロナに向けてどう体制を再編し、立て直すのかに移ります。再編・立て直しにおいて何を最も優先するのか?業界を問わず順位が最も高かったのが健康と幸福(wellbeing)でした。伝染病であり、年齢や基礎疾患によっては命に関わることもある感染症ですので、まずそのリスクから従業員や顧客、取引先、その他商業活動で関係するステークホルダーの健康を守ること。これがトッププライオリティに置かれるのは自然なことかと思います。2番目に挙げられた「オペレーションのレジリエンス」については、一つの方向性はオペレーションに関わる人々を守ることにより、事業を止めずに継続すること、もうひとつには新しいテクノロジーを導入することで省人化を果たし、そもそものオペレーションをレジリエントにするという方向性があると思います。
次に、今後、売上を維持し、伸ばしていくために何を優先するのか、という設問については「新しいテクノロジーを活用すること」がトップ回答になりました。4番目の「労働力のデジタル化」を含め、新しいテクノロジーを導入していわゆるDX(デジタル技術による変革)を推し進める進めることが、ポストコロナにおいてビジネスを伸長させていくのに重要だと考える企業が多いのだと考えられます。
最後は、今後発生することが想定される事象についての設問です。VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と言われる中、経済的に不安定になって破綻するリスクが最も高いとされています。また、新型コロナウイルスに続く別のパンデミックのリスク、そして米中衝突などいまだに世界中に多く残る地政学上の緊張、さらには、全く新しい技術やビジネスモデルによってディスラプションが起き、自社のこれまで積み上げてきたものが一瞬で価値を失うリスクも真に迫ったものがあります。このような時代を生き抜くために、どうすれば自社がレジリエントになれるのか、これは経営の本質に迫る視点だと考えられます。
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(根来 諭)
March 10, 2021