レポート

気候変動で増加する世界の山火事

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世界を襲う山火事

昨年はアメリカやオーストラリアでの大規模な山火事が注目を集めましたが、今年も世界中で山火事が深刻な問題となっています。スペイン、キプロス、トルコといった国でも歴史上最悪と言われる規模の山火事が起きており、またシベリアや北極圏のフィンランドなどでもこの夏は山火事が大きく増えました。

欧州連合(EU)のコペルニクス大気監視サービス(CAMS)のレポートによると、2021年7月の全世界の山火事によるCO2排出量は、2003年に記録を始めてから最大の1258.8メガトンに達し、これは過去最高値を20%ほど上回るものとのことです。そしてそのうち半分以上が北米とシベリアでの山火事に起因します。

アメリカでは史上最悪規模の広がりを見せており、下図左は2003年以降、毎年6月~8月における米国西部でのCO2排出量を示したグラフですが、2021年は過去最大であった2007年の約2倍弱に達していることがわかります。中でもDixie Fireと名付けられた山火事では、埼玉県の広さを超える約4,000平方キロもの範囲が消失しています。


アメリカで増えるFire Weather

こうした事態に対し、気象の研究を行う非営利団体「Climate Central」が「Fire Weather」と題するレポートを発表しました。Fire Weatherとは、山火事が起きて広がりやすくなる気象、つまり①気温が高く、②乾燥し、③風が強い、状態を指し、気候変動の影響でこの3条件がそろう日数が大きく増加しているとする内容のレポートです。

Climate Centralでは、米国西部17州にある225の気象観測所のデータを1973年までさかのぼって分析、上記3条件を調べました。下記の図は左から順に温度・乾燥・風速について、2020年と1973年とを比較して、山火事が起きやすい閾値を超えた日がどれだか増加したかを表したものです。こうして見ると、温度が上がっているエリアも多くありますが、特に乾燥と風速が大きく変化していることがわかります。

次の図は、Fire Weather、つまり山火事が起きて広がりやすい状態になった日数が、1973年と比べて2020年にどれだけ増加したかを示しています。2倍、3倍に増えたエリアが多く、いわゆる山火事シーズンが長期化していることを裏付けています。

Google Mapに「山火事レイヤー」追加

年々深刻度が高まる山火事に対し、Googleは9月29日、地図サービス「Google Map」において山火事の状況をリアルタイムに確認できる機能を世界展開することを発表しました。

目の前の対応として、こうしたツールを使うことで、まず人々の命や資産を守ることは非常に大切です。しかし、その根本原因が気候変動にあることを忘れてはなりません。温暖化により高温で乾燥した状態になり、また火事発生のきっかけとなる雷が増加します。そして発生しやすく、広がりやすくなった山火事がより多くの森林を燃やし、それによって木と土壌に蓄積された二酸化炭素が放出され、さらに地球温暖化を促進してしまう・・・こうした悪循環を止めなくては、今後も世界を襲う山火事が増加することは間違いありません。

(根来 諭)
November 3, 2021

参考情報

A summer of wildfires saw devastation and record emissions around the Northern Hemisphere (Copernicus)
https://atmosphere.copernicus.eu/copernicus-summer-wildfires-saw-devastation-and-record-emissions-around-northern-hemisphere

Fire Weather (Climate Central)
https://medialibrary.climatecentral.org/uploads/general/FireWeatherReport2021.pdf


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