サプライチェーン混乱の原因、そしていつまで続くのか
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現在サプライチェーンの逼迫と混乱が続いており、特に自動車業界においては、重要な部品である半導体の不足や部品製造を担う東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大によって、各社は生産調整を余儀なくされています。この混乱はどのような原因で起こっているのでしょうか。また、今後事態はどのように展開していくのでしょうか。
様々な要素が影響
下記は、New York Timesによる分析記事「How the Supply Chain Crisis Unfolded」にあった図を和訳したものです。これを見ただけでも実に様々な事象がからみあっていることがわかります。この図は多くの要素をわかりやすく1枚の図に押し込んだものと言え、実際には「コロナ拡大期」と「コロナ収束期」に分けてとらえた方がいいでしょう。
●コロナ拡大期
まず新型コロナウイルスが各国に広がりパンデミックが宣言されたことにより、経済活動全体に急ブレーキがかかり、生産活動・販売活動が縮小しました。当然、船舶や飛行機による輸送に対する需要にそれに合わせて急激に縮小することとなります。ただし一方で、「巣ごもり消費」に対応するモノやサービスについては、コロナ禍以前と比較して需要が急拡大しました。一言でいうと、需要と供給のバランスが短期間で急激に歪められたと言う事ができます。
●コロナ収束期
感染の勢いが弱まり、ワクチンが普及することで収束のフェーズに入ります。経済は再始動するものの、消費行動はコロナ禍以前からのトレンドであったオンラインショッピングへの移行が加速し、人とモノの流れがコロナ禍以前と比して不可逆的に変わりました。また、拡大期に急激に縮小した海上輸送力・航空輸送力をすぐには戻すことは難しく需要が供給能力を上回る状況となっています。特にコンテナの不足は、アジアから北米に向けたマスクなどの医療器具や巣ごもり消費向けの商品(家具・玩具・家電など)の輸出が急増したことや、コロナウィルス感染による港湾での処理能力の低下などを原因として、非常に深刻です。
人々のニューノーマルなライフスタイルに向けた需要と供給のバランシングが現在進行しているが故の混乱と言えるでしょう。他に現在の状況に影響を与えている要素としては、米中の地政学的緊張もあります。中国のテクノロジー企業は米国による制裁を警戒して半導体や半導体製造装置の備蓄を増やしており、一方で中国に生産拠点を置くグローバル企業はカントリーリスクを考慮してサプライチェーンの見直しにとりかかる動きが顕著です。さらにエネルギーコストが大幅に上昇していることで輸送費用が高騰していることも混乱に拍車をかけています。
今後の展望は
新型コロナウイルスの流行は、拡大から収束へと全世界的に同時に進めばよいのですが、日本は感染者をごく少数に抑え込めている一方、欧州などはいまだ感染拡大が続いており、世界各国で足並みを揃えて収束に向かっていけているわけではありません。資本主義の重要な機能である需要と供給の調整メカニズムが、新型コロナウイルスによる急激な社会変化によって追いつかなくなっていることが根本的な原因ですので、ニューノーマルに戻っていく中で何度か波を経験しながら、様々な要素・局面で徐々に調整がなされていくのではないかと考えます。
このような状況で、企業は自社のサプライチェーンリスクをどう考えるべきでしょうか。サプライチェーンリスクマネジメントは下図のように4つのステップに沿って進めますが、アフターコロナの世界に合わせてこれらを見直すことが必要でしょう。
●サプライチェーンの可視化
水平分業化とグローバル化が進み、サプライチェーンは今だかつてなく複雑化しており、自社から見えない・コントロールできない部分が多くあるのではないでしょうか。可視化できていない部分がある事自体がひとつのリスクですので、コストやリードタイムとのトレードオフになりますが、よりシンプルな構造に作り替えることを検討してもいいかもしれません。
●リスクの分析と把握
自然災害のうちある程度準備ができる事象(水害など)、準備ができない事象(地震や竜巻など)、火災や事故、テロや政変などのリスクは既に想定をされていると思いますが、これだけ長く広い範囲に影響が及ぶ「感染症の流行」をリスクとして想定していた企業は少なかったと思います。今後も新型コロナウイルスのような感染症の流行が発生する可能性は十分にありますので、その前提でリスクの分析と把握をやり直すべきだと考えます。
●リスク対策の実行
可視化したサプライチェーンについて、どこがボトルネックになるのかを把握し、その対策を実行します。日本企業はジャスト・イン・タイム生産方式に代表されるように効率的なオペレーションを非常に得意としますが、そこにレジリエンスの要素を取り入れる事が欠かせません。コストやキャッシュフローを犠牲にしてでも在庫の持ち方を変えるなど、財務部署との折衝も必要になるかもしれません。
●リスクのモニタリング
リスク事象の発生をいち早く覚知することは、事前準備にも増して非常に重要です。代替生産のオーダーを入れる、輸送の代替ルートを確保するなど、他社より一歩先んじることによって大きなアドバンテージを得ることができます。「Spectee Pro」は現在、製造業などの荷主企業や物流・流通企業において急速に導入が進んでいるツールで、何がどこで起きているのか、自社の拠点の場所やニーズに合わせてリスク事象の発生を迅速かつ正確に把握することができます。ぜひ導入をご検討ください。
(根来 諭)
December 15, 2021
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