コロナ禍におけるアジア人へのヘイトクライム増加、注意点は
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日本時間の今月17日、米国アトランタのマッサージ店で銃撃事件が起き、アジア系女性6人を含む8人が殺害されるという衝撃的なニュースが駆け巡りました。犯人は否定しているものの、アジア系に対するヘイトクライムの可能性も指摘されています。
新型コロナウイルスの流行が中国・武漢に端を発したことから、それが世界に広がっていくとともに、主に欧米でアジア系住民が暴力を振るわれるというニュースが多く伝えられるようになりました。中国人・韓国人・日本人などは外見から判別するのが難しいため、当然日本人もその対象に含まれることは明白です。実際、先月下旬にはシアトルに住む日本人で日本語教師の女性が、石を詰めたソックスで意識を失うほどの力で殴られるという事件もありました。
本当にアジア系へのヘイトクライムは増加しているのでしょうか?それとも、新型コロナウイルスとの関連でニュースで取り上げられるようなり、目についているだけなのでしょうか。下記は米国カルフォルニア州立大学のCenter for the Study of Hate & Extremism(憎悪・過激主義研究センター)が今月発表した数値です。
この集計によると、米国において警察に報告のあったヘイトクライムを2019年と2020年で比較してみると、全体としては1877件から1773件に6%減少したものの、アジア系を対象とするものは49件から120件と2.4倍に激増していることが見て取れます。
次に、ヘイトクライムと一言で言っても、どのような態様で行われているのかについて、アジア系に対する暴力に関する調査を行なっているNGO団体「Stop AAPI Hate」 のレポートで見ていきたいと思います。
まず、ヘイトクライムがどこで発生したのか、についてです。ヘイトクライムというと、路上などで暴力を振るわれる、罵倒されるというようなイメージがあると思いますが「公道/歩道」は25.3%で2番目。1番多かったのは35.4%の「職場」でした。通りすがりの人ではなく、何らかの関係を持った職場の人から向けられる憎悪はつらいものがあると思われます。また、3番目は「オンライン」となっています。
次はどのような態様で発生したかについてです。68.1%と飛びぬけて多かったのが「言葉の暴力」でした。また、「忌避/無視」や、サービス提供や交通機関の利用の拒否も、多くなっています。
ヘイトクライムを受けた方の民族性(ethnicity)を見ると、中国系の方が最も多くなっています。米国における中国系の方の人口は、日系人口の約3.5倍(2018年のアメリカ合衆国国勢調査局によるサーベイによる)ですが、今回の調査では中国系の方が受けたケースは日系の方のケースの約6.1倍。比率としても大きくなっています。おそらく、中国系の方は中華街を形成してまとまって暮らしているケースが多いことから、ターゲットになりやすいという面があるのかもしれません。
最後はヘイトクライムの対象になった人の性別と年齢です。性別としては女性のほうが男性より圧倒的に多くなっています。年齢的には、未就学の小さい子供や75歳以上の高齢者が対象のケースは非常に少ないですが、12歳から17歳の子供や61歳以上の老人も対象になっており、社会的に弱い人も含めて対象になっているのは悲しいことです。
注意点は?
コロナ禍においてヘイトクライムが激増していることは事実であり、このような状況に対して抗議の声を上げるデモも多く行われています。
このように問題提起をして思いを訴えることも大切ですが、「新型コロナウイルス流行の責任をアジア系に帰して憎悪の対象とするのは間違っている」ことをいくら説明しても、ヘイトクライムがやむとは思えません。ヘイトクライムの発生メカニズムは単純なものではなく、例えば日常の不満を募らせた人が鬱憤をぶつける対象を探して、結果アジア系に矛先が向いているというようなケースも多くあることが考えられるからです。また、トランプ元大統領が発したなメッセージが影響し、社会に排他的な空気が満ちていると指摘する識者もいます。
そのため、やはり基本は、「自分の身は自分で守る」ことを徹底するしかありません。中華街などアジア系住民が集まる場所に必要がないのに近づかない、一人ではなく複数人で行動する、夜は出歩かない、治安の悪い地域に近づかないなどの対策を改めて徹底することが大切かと思われます。
(根来 諭)
March 31, 2021
参考情報
STOP AAPI HATE NATIONAL REPORT
https://secureservercdn.net/104.238.69.231/a1w.90d.myftpupload.com/wp-content/uploads/2021/03/210312-Stop-AAPI-Hate-National-Report-.pdf
FACT SHEET: Anti-Asian Prejudice March 2021 (California State University, Center for the Study of Hate & Extremism)
https://www.csusb.edu/sites/default/files/FACT%20SHEET-%20Anti-Asian%20Hate%202020%20rev%203.21.21.pdf