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スペクティは、2020年6月24日に「ウィズコロナ時代の防災・危機管理」に続きまして、7月21日に「未曽有の災害に対応するAI防災の最前線」と銘打ちWebセミナーを開催いたしました。自治体や民間企業、非営利団体に至るまで、多数のご参加ありがとうございました。本レポートではそのエッセンスをお伝えいたします。

激甚化し、予測が難しくなる自然災害

今月頭に熊本県を中心に九州や中部地方などを襲った豪雨や、昨年の10月に長野県を中心に大きな被害が出た台風19号など、毎年のように想定外の自然災害が起こり、その被害規模が大きくなっていることは皆様も実感されているところではないでしょうか。これは地球温暖化による長期的な気候変動がその一因とされ、人間社会はこの「予測が難しく」「激甚化」した自然災害と今後闘っていく必要があると思われます。

下記のスライドにある通り、日本は残念ながら国民一人あたりで言うと、世界で最も自然災害による損失額が大きい「災害大国」。我々は世界の先頭に立って、最先端の技術で災害に立ち向かう必要がある、というのがスペクティの持つ課題意識です。

「直前防災」「リアルタイム防災」とは

下記は江戸川区のハザードマップです。江戸川区全体がすっぽりと浸水エリアに入ってしまい、「どこにも逃げ場がないではないか」と話題になりました。江戸川区を出て、隣の区も超えて、他県や東京の西部への避難を呼び掛ける内容は半ば笑い話のようにとらえられましたが、これも災害の発生予測が難しくなっていくことに関連しています。ハザードマップを作成する自治体側からすると、最優先すべきは住民の生命と安全です。予測が難しいとなると、どうしても安全マージンを沢山とって被災地域を広く広く設定しなければならなくなるのです。

また、例えば昨年の台風21号では、千葉県のハザードマップの浸水想定エリアの外で大規模な浸水被害が発生しました。事前予測は難しい。その事実を受け入れたとき、次に考えるべきは何でしょうか?

スペクティでは一昨年から「直前防災&リアルタイム防災」という概念を提唱しています。ハザードマップを作り、それを元に避難計画を立てたり、避難訓練をして災害に備えるといった「事前防災」がこれまでの主流でしたが、予測が難しい以上、迫りくる災害や刻一刻と変わっていく状況をリアルタイムに把握し、予測を随時アップデートしていくことで人々の生命と安全を守る、という考えです。スペクティが提供し、多くの自治体に導入いただいている危機管理情報サービス「Spectee(スペクティ)」は、SNSに上がる情報をAIで解析することでリアルタイムに状況を把握するのに役立つものでありますが、その他にも、高速通信網である5Gの普及、あらゆるものがネットワークでつながるIoT時代の到来、ドローンやロボティクスの技術の発展など、「直前防災&リアルタイム防災」を実現するための技術環境が急速に発展してきているのが現在の状況です。

最新のテクノロジーと災害対応

ここからは、事前防災&リアルタイム防災を実現し、また災害後の被害対応に貢献する、各所で研究や実証実験が行われている最新のテクノロジー事例をいくつか紹介したいと思います。

事例①:ドローンとAI画像解析による上空からの被害判定と被災状況把握
これまでは、台数が限られてコストもかかるヘリコプターを飛ばすか、現地自治体の方が災害が落ち着いてから現地入りして目視確認するなどの方法で、被害状況の把握が行われてきました。しかしこの方法では、タイムリーに状況把握をすることが難しく、また対応にあたる自治体の方の二次被害の心配もあります。ドローン自体やドローンが積むカメラの画質の品質が飛躍的に向上してきており、5Gの整備が進めば、リアルタイムに災害対策センターに画像を飛ばして状況を把握できるようになり、救助や避難指示を迅速に行うことができるようになると思われます。
事例②:河川水位のリアルタイム判定と被害予測
同じく通信網が高速化し、画像センサーやAI技術が発達することで、河川に設置されたカメラの画像をリアルタイムに監視することができるようになります。それを、降水量や地形データなどその他の情報と組み合わせてシミュレーションを行い、「この地点が氾濫する可能性が高い」ということを瞬時に判断し、避難指示などの対応につなげていくことができるようになるはずです。従来は、どの河川のどの地点が危ないか、過去の経験則から予測を立てて、護岸工事をして対策を行っていましたが、「想定外」のことが起きるトレンドの中では十分とは言えません。刻一刻と変わる状況に応じてリアルタイムにハザードマップを作るような動きが有効な対策につながると思われます。
事例③:道路の路面状況の自動判定
本事例はスペクティが日本気象協会とともに取り組んでいるものです。冬の路面状況の把握は、交通の安全を守るために非常に重要ですが、現在は人間が見て回って確認しており、これでは対策が後手に回らざるを得ません。我々が取り組んでいるのは、道路に設置されたカメラの画像をAIで解析し、路面が凍結しているか否か、積雪の深さ、視程がどれくらいあるかなどを把握することで、非常に高い精度で実現することができています。
事例④:AIを活用しひび割れから建物の危険度判断
本事例はスペクティが東京大学および広島大学とともに共同研究を行ったものです。通常、大規模な地震が起きた際に、建物の安全性の確認は一軒一軒見て回るかたちで行われており、非常に時間がかかっています。全棟確認するには1年以上かかるというケースもあります。しかし、安全性が確認できなければ、避難していた方々が自宅に戻ることができず、また保険金の請求手続きも進めることが出来ず、これを短時間で行うことは危急の課題です。我々の共同研究ではAIを使った画像解析で、建物のひび割れからその安全性を判定することに取り組みました。ひび割れから全てを判断することは難しいですが、少なくとも優先順位をつけることができるようになり、安全性判定にかかる時間を大幅に短縮することができるようになります。
事例⑤:SNS情報を活用した浸水推定図の早期作成
こちらに詳しいプレスリリースがありますが、今月の熊本を襲った豪雨に際し、国土地理院はSpecteeを活用してSNSの画像情報を収集、国土地理院が持つ標高データなどと組み合わせることで浸水範囲の推定を行いました。今回は球磨川が氾濫を起こした当日にこの浸水推定図が公開されました。救援・復旧活動はもちろんのこと、被災された方への保険金の支払いの潤滑化も効果として期待されます。

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その他にもロボティクス技術の発達も見逃せません。被災地で人が分け入るのが難しいような場所や水中において活動できるようなロボットの開発も世界各地で進んでいます。また、スペクティが神戸市とともに取り組んだように、AIアナウンサーとドローンを組み合わせて避難指示を出すなど、人手を介さない防災コミュニケーションというものも有用かと思われます。

こうした取り組みの中で、我々が繰り返し思い出すのが、スペクティ設立の契機となった東日本大震災です。宮城県南三陸町の職員・遠藤未希さん(当時24)は、防災対策庁舎から防災無線で町民に批判を呼び掛け続け、津波の犠牲になりました。

遠藤さんの死を無駄にしないためにも、無人化をはじめとして、テクノロジーによる被害の最小化・復興の迅速化を進めていく必要があります。今後、防災の世界でAI技術は必須になると考えます。気象データ、地形、SNS、カメラ、センサーなどの大量のデータを瞬時に解析し、活用する。AIは現在様々な場面で社会実装が進んでいますが、「防災」ほどそのポテンシャルを活かせる場面はないのではないでしょうか。スペクティはこれからもテクノロジーで防災を進化させることに真正面から取り組んでまいります。


2020年7月21日開催のWebセミナーの内容抜粋をお伝えいたしました。今後もスペクティは定期的にWebセミナーを開催いたしますので、お時間のご都合がつきましたら是非ご参加いただきたく、よろしくお願いいたします。

(SN)
July 24, 2020

参考情報

江戸川区のハザードマップ
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e007/bosaianzen/bosai/kanrenmap/n_hazardmap.html/

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