2022年テクノロジーで振り返る「防災・危機管理」【2022年12月15日開催】

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毎月開催しているスペクティによるWebセミナーですが、先週12月15日には2022年テクノロジーで振り返る「防災・危機管理」と題して、防災に関わる技術動向についてお話をさせていただきました。話題となったテクノロジーの内容を説明しつつ、それが防災の領域にどう活用されるのかについて解説しました。本レポートではその抜粋をお伝えします。

1. Web3の世界

Web1.0はインターネットが使用されるようになってきた黎明期で、情報はそれぞれのサーバに置かれている時代でした。その後、2000年代後半に入ってからは、データセンターが普及しクラウド化が進みました。これが今我々がいるWeb 2.0の世界です。デジタルプラットフォーマーやビッグテックと呼ばれるGAFAMのような企業が情報を抱え込んでおり、色々と便利なサービスが登場した一方、一部の企業が独占的な地位を占めていることの弊害も指摘されています。

Web2.0では中央に情報が集約されているのに対し、これからやってくるWeb3.0は「自律分散」の世界です。デバイスの性能が上がっている中で、ネットワークの中で情報を共有しながら、末端(エッジ:個別のデバイス)で分散して情報を処理します。GAFAMではなく各個人が情報のオーナーシップを持ちつつ、インターネットを介して情報を交換し合うこととなり、コミュニケーションの流れが変わり、これまでよりも多くの情報が多方面に飛び交うようになります。社会はよりデータ駆動型に変わっていくでしょう。

2. メタバース×防災

メタバースとは、コンピュータの中に構築された仮想空間のことを指し、いわゆる「VR(仮想現実)」が発展してきたものと言えるでしょう。コロナウイルスの流行でライフスタイルが変わり、仕事や教育の現場などでもリモートという選択肢が当たり前になる中で、仮想現実を使ったソリューションが大きく進化してきています。

防災の領域では、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった技術を使い、より臨場感のある防災訓練などが実現されていくでしょう。従来の、避難経路をただ辿るだけの訓練ではなく、いまいる場所が、被災時にどういう状況になるかを体感することができれば、訓練の効果は飛躍的に高まるのではないでしょうか。


3. デジタルツイン×防災

デジタルツインとは、IoT技術を使って現実空間をデータ化し、それをサイバー空間に再現する技術や概念のことを指します。サイバー空間において、例えば工場のオペレーションの最適化や都市設計などを行い、それを現実空間に反映させる、といった活用がなされます。防災の世界でも、仮想空間上で水害の発生時にどう浸水が広がるのかや、地震が起きたときにどのような損害が発生するかということをシミュレーションするという使い方が考えられます。

国道交通省はPlateauという都市デジタルツインモデルを既に公開しており、今後活用が進んでいくと思われます。スペクティでも、浸水推定図のリアルタイム生成をSpectee Proの中でサービスとして提供してますが、こうしたデータをGoogle Earthに展開し、より臨場感ある形で浸水の可視化を行うような取り組みも進めています。

(出典:国土交通省)

4. ジェネレーティブAI

最近、画像や音楽、文章などを自動で作ってしまうAIが話題になっており、ニュースなどで耳にした方も多いと思います。このようにコンテンツを自動生成するAIを「ジェネレーティブAI」と呼びます。AIによるコンテンツの自動生成は、これまでは高い技術的知識や、処理速度の速いスーパーコンピュータなどを持っていないとできませんでしたが、誰でも作れるようになってきたというのがこの1年のトレンドです。

これに付随して発生した問題として、9月に静岡で害が発生した際、デマ画像が出回ってしまいました。これはStable DiffusionというジェネレーティブAIを使って作成されたもので、完全にゼロから作ったデマ画像が国内で広く流布した初めてのケースと言えるかもしれません。これを見抜くのは、技術的には難しくありませんが、人の眼には容易ではありません。今後もデマやフェイクニュースといった問題はより深刻になっていく可能性があります。


5. 衛星インターネット

防災の分野で非常に重要になってくると思われるのが衛星インターネットです。ロシアのウクライナ侵攻では、ウクライナ側の通信インフラが破壊されたものの、Space X社のイーロン・マスクCEOが、人工衛星を活用したインターネットサービス「スターリンク」の提供を宣言。世界中で話題となりました。このような衛星インターネットが商用化される動きが進んでいます。

現在、我々の社会は通信インフラなしには成り立ちません。必須のライフラインと言う事ができるでしょう。災害と対峙する際も、通信を途絶えさせず、情報収集やコミュニケーションを行える環境を構築することが何より大切です。

スペクティでは、世界最大の衛星インターネットサービス会社・インテルサット社のライセンスを有するTD衛星通信システム様と業務提携し、2022年11月よりサービスを提供開始しました。「非常時に使うだけなのに、普段から高額なランニングコストを負担するのは難しい」という声にお応えし、月々のランニングコストはゼロ、非常時にのみ課金される料金形態となっています。Spectee Proと合わせて提供することで、自治体や企業の危機対応部署が「被災時にも通信インフラを失わない」という環境を実現していきたいと考えています。


その他にも、スペクティの2022年の取り組みとしては自動運転支援技術へのチャレンジがありました。自動車にはセンサーが沢山ついており、目の前の障害物を回避するような仕組みの開発は進んでいますが、例えば100メートル先での事象を自動運転に反映させる部分は実現していません。先に事故車がある、道路が凍結してしまっている、などの状況をカメラで自動判定し、後続の車に伝達するような仕組みの開発に取り組んでいます。

テクノロジーはどんどん進化し、そのスピードも加速しているように思います。防災・危機管理の世界を変革するために、スペクティは今後も貪欲にテクノロジーを取り込んで、新たなサービスの開発に尽力してまいります。

(根来 諭)
December 21, 2022


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スペクティが提供するAI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』(https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性、正確性、網羅性で、「危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握すること」が可能です。AIを活用して情報解析、TwitterやFacebookなどのSNSに投稿された情報から、自然災害や火災、事故などの緊急性の高い情報、感染症に関する情報など、100以上の事象を、市区町村、空港や駅、商業施設、観光地周辺といった対象と組み合わせて、「どこで何が起きているか」をリアルタイムに確認できます。

(AI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』)
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