AIエージェントはサプライチェーン・マネジメントに変革をもたらすか?
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ソフトウェアのパラダイム・シフト
「AIエージェント」が現在注目を集めています。AIエージェントとは、ユーザーの指示に従って、自律的にタスクを実行するAIシステムのことで、これまでも人間と同じように会話ができるチャットボットのようなものはありましたが、単なる質問応答にとどまらず、情報収集・分析・意思決定・アクションの実行まで行えるのが特徴です。OpenAI社のGPTシリーズやGoogleのGeminiに代表されるような大規模言語モデル(LLM)が急速に進化したことに加え、マルチモーダルな(画像・音声・動画・テキストなど、異なる情報を統合して処理できる)AIが登場したことで、人間と自然に対話したり、自律的にタスクを遂行したりする能力が大幅に向上しました。実際、OpenAI社が2025年2月にリリースしたAIエージェント「deep research」は、ウェブにあるテキストや画像、pdfファイルといった情報を分析したうえで高度なリサーチを実行することができ、学究活動を含む知的作業のやり方を大幅に変革するものと受け取られています。
AIエージェントは、以下のような特徴を持っています。
(1)自律性(Autonomy)人間の介入を待つことなく、自己判断でタスクを実行する。
(2)適応性(Adaptability)環境の変化に応じて学習し、パフォーマンスを向上させる。
(3)意思決定能力(Decision-Making Capability)複雑なデータを分析し、最適な行動を決定する。
(4)相互作用(Interactivity) 他のシステムや人間とコミュニケーションし、タスクを遂行する。
まさに人間の代理人(エージェント)としてタスクをこなしてくれるのです。
現在、我々のスマートフォン画面は数十のアプリ(アプリケーション・ソフトウェア)のアイコンで埋め尽くされていますが、今後ほとんどの作業はエージェントを通じて可能になり、アプリは消滅するのではないかという見方があるくらい、AIエージェントはこれからの我々の社会を大きく変えていく可能性を秘めています。

サプライチェーン・マネジメント領域への適用は?
このAIエージェントを、サプライチェーン・マネジメント(SCM)に適用すると、どのようなことが起きるでしょうか?
現代のサプライチェーンは、部品点数の増加や調達のグローバル化、サプライチェーンや物流の多層構造化などの要素によって非常に複雑な構造になってしまっています。そのため、モノの流れを無駄なく・効率よく管理することや、サプライが途絶してしまうリスクに対処することの難易度がかつてなく上がっています。この状況に対処するために、各社は「リアルタイムでのサプライチェーン上の情報把握」を目指して努力しているものの、販売の見込みをもとに生産計画・調達計画を立てる「計画系」のシステムと、製造・物流・販売を司る「実行系」のシステムが分断されていることが一般的で、また外部の情報を取りこむことには限界があり、サプライチェーンに関する情報・データをシームレスに活用できるようになっていないという問題点があります。
しかし、昨今はクラウド関連技術やデータ統合技術が大きく発達することによって、様々なところで生成・格納されるデータを収集、統合して分析できる仕組みができつつあり、分断されていたシステムを真の意味で「一元化」し、原材料の調達先から最終消費者への販売に至るサプライチェーン全体のデータをまとめて扱ってマネジメントすることができる環境が整ってきています。システム・データを一元化することによるメリットは大きく、これまではエクセルファイルを販売現場から生産現場にリレー形式で渡していき、その間に担当者が「意思入れ」することで歪められてしまっていた販売見込みも、全社統一のものを把握することができますし、それに基づいて立てられる生産計画・調達計画は全体最適なものになるでしょう。当然、在庫のマネジメントもより効率よく行うことができるようになります。
AIエージェントの役割
しかし問題は、サプライチェーンを真に一元化することができたとしても、その膨大なデータをどうやって分析して適切な意思決定につなげていくかです。その点、大量のデータを集めて分析した上で、具体的な意思決定を自律的な実行を行うこと(しかも24時間休まず!)はAIエージェントの得意とするところ。当初は人間による自然言語の問いかけ(例えば「どこがサプライチェーン上のボトルネックになっているか調べて」など)に応じて分析するようなAIエージェントが登場するかもしれませんが、学習が進めば人間の介在をほとんど必要せずにサプライチェーン全体の回せるようになるかもしれない。さらに情報処理の世界に留まるのではなく、AIとロボティクスが結びつくことによって、倉庫作業や物流についても最適化したオペレーションを実現することができるかもしれません。サプライチェーン全体がまるで生き物のように、自律的に分析・決定・実行を行い、常に最適なオペレーションを行うような世界は、今や夢物語というほど遠いものではないと思います。その実現の鍵は、AIエージェントが握っているかもしれません。
(根来 諭)
April 09, 2024
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