レポート

9.11アメリカ同時多発テロ事件から21年、アルカイダの現在は?

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複数の航空機が国際テロ組織アルカイダにハイジャックされ、世界貿易センタービルやペンタゴン(米国国防総省)の建物などに激突、日本人24人を含む2977人が犠牲となったいわゆる「アメリカ同時多発テロ事件」から21年が経ちました。

航空機が高層ビルに突っ込む瞬間や、その後ビルが崩れ落ちるショッキングな映像がリアルタイムで放送され、まさに世界中が震撼させられるテロ事件でした。そしてこの事件は同時に、主にイスラム過激派を対象とする「対テロ戦争」の時代の幕開けともなりました。


公安調査庁は毎年、国際的なテロリズムの情勢をまとめた報告書、「国際テロリズム要覧」を発行しており、最新版は2022年度版になります。全462ページというボリュームで、各地域の情勢を解説するとともに、資料集として世界のテロ組織が掲載されています。また、公安調査庁のホームページの「地域別テロ情勢等」にある地図からは、特定の国やエリアの情勢を確認することができ、グローバル企業の危機管理担当者の役に立つコンテンツになっています。

(出典:公安調査庁「国際テロリズム要覧 (2022)」)

この「国際テロリズム要覧」では、活動的で影響力の大きい組織として2つのイスラム過激派組織、「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」「アルカイダ」について多くの紙幅が費やされています。この20年を振り返ってみると、前半の10年についてはアルカイダによるテロが主たる脅威であったものの、後半の10年間はISIL(イスラム国)が大きく台頭しました。ISILはアラブ諸国における民主化のうねりである「アラブの春」による情勢の不安定化に乗じ、シリアとイラクにまたがる地域においてイスラムに立脚した「カリフ国家」を打ち立て、欧州でも複数のテロ攻撃を実行するなど隆盛を誇りました。しかしその後、指導者を殺害されるなどして失速、現在でも組織は残るものの退潮が著しい状態です。

そんな中、復活を図ろうとしているのがアルカイダです。

米国は、9.11以降、「対テロ戦争」の主戦場のひとつとしてアフガニスタンに軍を駐留させていましたが、撤退を決定・実行しました。当初は、国際社会と協調できる政権の樹立を目指したものの、険しい地形によって中央権力を全土に行きわたらせることが難しく、しかもそもそも部族社会ということもあって、民主的な形での統治が困難であることがわかり、これ以上巨額の費用を費やすことの正当性が失われたことがその背景です。

結果、アフガニスタンは米軍の撤退とともに大きな混乱に陥り、2021年8月26日にはカブール国際空港の近くで大規模な自爆テロ事件も発生しました (実行はISIL系勢力・死者180人以上、負傷者150人以上)。そして、イスラム原理主義組織であるタリバンが実権を掌握するに至ります。アルカイダは、声明を発表し、タリバンによるカブール制圧を「十字軍同盟に対する大勝利」と位置付け、タリバンの最高指導者たちを称賛しました。


(スペクティが世界の報道機関に配信したカブール国際空港でのテロ被害の様子:クレジット@samiull57940027)

この契機に復活を図ろうとするアルカイダに、米国も手をこまねいているわけではありません。2021年10月には、米国国防次官が、アルカイダが1~2年で米国本土を攻撃する能力を持つ可能性を指摘するなど警鐘を鳴らし、また、2022年7月には、アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリ氏をアフガニスタンの首都カブールでミサイル攻撃で殺害するなど、その抑え込みに必死になっています。タリバンは政権奪取前に米国と和平合意を結び、アルカイダとの関係を断絶して国土をテロ活動の拠点にしないと約束したものの、米国はタリバンがザワヒリ氏を匿っていたとして非難していることからも、一筋縄では行かない状況がうかがえます。

アフガニスタンが再びテロの温床となってしまうのか、注視が必要です。また、テロ組織と直接の関係を有さない「ホームグロウン・テロリスト」によるテロは、欧州を中心として引き続き多く発生しており、組織本体の活性化がそれに与える影響も無視できません。現在ではインターネットを通じて、思想を広め、影響を与えることが容易にできてしまいます。特に、新型コロナウイルスがおさまって人流が回復してくるタイミングでは、これまでテロの実行を見合わせていた人間が犯行に及ぶ可能性があり、特に警戒が必要と思われます。

(根来 諭)
September 14, 2022


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