軍事クーデーター勃発から1か月、ミャンマーの今後は

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ミャンマー国軍がクーデターを起こし、民主化の英雄アウンサンスーチー国家顧問を含む政府与党の幹部を拘束してから約1か月が経過しました。国軍最高司令官のミン・アウン・フライン氏が軍政の最高意思決定機関を設置して自ら議長に就任し、新たな体制づくりを推し進めるなか、連日ミャンマー各地では大規模なデモが行われています。治安部隊のデモ隊への対応は徐々に暴力的になってきているように見受けられ、2月28日には発砲で少なくとも18人が死亡したと国連が発表しました。


ミャンマーという国

ミャンマーという国は日本とのゆかりも深い国です。アウンサンスーチー氏の父であるアウンサン将軍を日本が援助してイギリスからの独立を手助けしたとという経緯もあり、親日的な人が多いとされています(その後、第二次世界大戦中には日本軍が当時のミャンマーであるビルマを軍事的に占領したという負の歴史もありますが)。日本の「軍艦マーチ」がミャンマー軍の行進曲になっているというのも有名な話です。

アウンサンスーチー氏の長期にわたる自宅軟禁を経て、2010年から不完全ながら民主化の歩みを進めていた中での今回のクーデター勃発でした。また、ミャンマーには多くの少数民族が住んでいることも特徴的です。ロヒンギャ問題に対する批判が象徴するように、民主政権においても少数民族は抑圧的な対応をとられていたのにも関わらず、上に紹介したように多くの少数民族が抗議に立ち上がってる事実に、“軍政に戻りたくない”という国民の強い気持ちを読み取ることができます。

安定化してきた近年のミャンマーには400社以上の日本企業も進出しています。国として発展の途に就いたミャンマーの成長が止まってしまうのか、それら企業も事態の推移を固唾を飲んで見守っているものと思います。

今後の展開は:ここにも中国の影

今後はどう展開していくのでしょうか?識者も軍の本当の関心や守りたい権益がどこにあるのかわかりあぐねており、予測するのは難しい状況です。ただこのまま軍政に移行し、西側諸国からの経済制裁で再び以前のような鎖国に近い状態に戻ってしまうのであれば残念なことです。

ところで、今回のクーデーターは当初から「背後に中国がいる」との見解が多く出されています。中国政府は否定したものの、SNSでは「中国が技術者を送り込み、軍政がインターネットを検閲できる体制づくりを援助している」との噂が流れましたし、国内外でミャンマー人による反中デモも多く行われています

なぜ、中国がミャンマーに関与をしていると考えられるのでしょうか。ひとつにはミャンマーが天然ガスや宝石、鉱物資源などの天然資源に恵まれた土地であること、もう一つは地政学的に要衝に位置するからです。ミャンマーは、中国とインドとの間に位置するため、台湾と並んで中国と米国を筆頭とする民主陣営の対立の最前線ということができます。また、中国から見るとインド洋へアクセスする経路にもなります。中国にとって、ミャンマーを自らの側につけておくことの戦略的重要性がわかると思います。

抗議デモとSNS

昨今世界各地で起きている抗議デモと同じように、人々が連絡を取り合い、デモの場所や日時を決めるために、ミャンマーでもSNSが大きな役割を果たしています。また、それは国境を越えて、隣国のタイや香港、台湾などの人々との連帯を築く助けにもなっており、東南アジアでポピュラーなミルク入りのスパイシーな紅茶にちなんで「ミルクティー同盟」なるネットワークも形成されています。



それだけに、ミャンマー国軍はインターネットを頻繁に遮断しており、 インターネット監視団体NetBlocksのツイートによると、今日時点で17日連続で夜間はインターネットが遮断されているようです。SNSが民衆を結束させる力を持つことを国軍も重々認識しているものと思われます。

ちなみにミャンマーではFacebookが圧倒的なシェアを誇り、Facebookとそのメッセンジャーがニュースと接したり、友人と連絡を取り合うための支配的な手段になっています。民主主義をめぐる戦いに必須のツールとなったSNSの情報解析を通じて、スペクティは今後も現場のリアルタイム情報を顧客に届けていきます。

(根来 諭)
March 03, 2021

参考情報

DIGITAL 2021 (We Are Social / Hootsuite)
https://datareportal.com/reports/digital-2021-myanmar


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