「忘れてはいけない」災害伝承の重要性

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6月23日、国土地理院(国土交通省)はウェブ地図サービス「地理院地図」において、12市区町村で新たに30基の「自然災害伝承碑」を追加公開しました。「自然災害伝承碑」とは、過去に起きた自然災害の規模や被害情報を伝える石碑やモニュメントを指し、国土地理院はこれらを掲載することで、教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減等を目指しています。

例えばこのような伝承碑があります。

太平洋に面する東北地方は、実に30年〜50年の間隔で地震に伴う大津波に襲われています。

昭和の大津波以後、津波常襲地域として災害の事実や教訓を伝えるため、岩手県内だけでも200基以上の石碑が建てられました。姉吉地区(岩手県宮古市)にもまたその一つが建立されています。

姉吉漁港を中心に漁業を生業とするその集落は、明治の大津波では2名、昭和の大津波では4名しか生存者がいなかったほど壊滅的な被害を受けてきました。二度と同じ惨禍を繰り返してほしくないという思いから記念碑が建てられ、集落はその記念碑よりも高い所で再建し、今日まで生活をしてきました。

東日本大震災では、観測史上最大の遡上高40.4mを記録したものの、津波は「大津浪記念碑」の手前50mのところで止まり、子供を迎えに行った母親とその子供の4名を除き、集落の人びとは無事でした。

犠牲者は出てしまったものの、約100年前の災害の教訓が大いに生かされた結果だといえるでしょう。この事例は、災害伝承の重要性を全国的に再認識させることになりました。

津波てんでんこ

「てんでんこ」とは、「それぞれ・各自」という意味の「てんで(ん)」の方言です。

例文)兄弟とはいえ、性格はてんでばらばらだなあ。

津波常襲地域である東北三陸地方には、「津波が来るときは、他の人は気にせずに、各々で逃げる」を意味する “津波てんでんこ” という言葉が根付いています。

薄情だと思うかもしれませんが、そこには、
「家族を助けに戻ったがために、共倒れになってしまう悲劇を避けるため」
「命さえあればまた必ず再会できるから(まずは自分の命は自分で守ろう)」
「率先避難者になることで、周囲の人の危機感を高める」など、
大津波を幾度と経験してきたからこその教訓と津波から命を守る術が、その言葉には込められています。

災害と教訓の伝承に向けた取り組み

東日本大震災をきっかけに、過去の災害やその教訓を伝承する重要性が全国的に再認識され、様々な保存・伝承に向けた取組みがされるようになりました。

例えば、被災した当時の爪痕を残す構造物を「震災遺構」として、できる限りそのまま保存・活用する取組みが行われています。また、伝承施設や語り部講和、被災物など当時のものが展示された伝承施設や語り部ガイド、デジタルアーカイブなど、様々な手法でも保存・伝承が行われています。

熊本県では、熊本地震(2016年)で被災した地域全域をフィールドミュージアムとし、各地に67もの震災遺構が保存されている「熊本地震 震災ミュージアム 記憶の廻廊」という回廊型の伝承手法が取られています。

災害伝承の手法としては他にも、「地名」にその地域の災害特性を残しているところもあります。例えば、大阪市北区にある「梅田」は、「もともと湿地帯だったところを埋め立てて田畑に変わったので“埋田”と呼ばれるようになったが、印象が悪いことから“梅田”に改名した」という歴史があります。これは、「大きな地震が発生した際の液状化現象や大雨時に水害が発生しやすい地理である」との想像ができ、実際「水害ハザードマップ」において対象地域に指定されています。

歴史的に津波の常襲地域で、東日本大震災の津波でも壊滅的な被害を受けた「田老」(岩手県宮古市)では、 「津波が何度も襲い水田が荒れ果てて“田が老いた”」という由来や、「繰り返し津波を受けたため、恐ろしさを知る老人だけが生き残り“多老”と呼ばれ、それが“田老”に変わった」という由来が語られています。

過去の災害や教訓を記憶し、次の災害対応に生かすことは非常に難しいですが、激しい自然災害が多い昨今、その重要性はさらに増しています。

(TW)
July 06, 2022


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