レポート

【SNS分析】令和2年7月熊本南部豪雨災害

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九州南部を記録的な豪雨が襲い、甚大な被害が広がっています。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、救助活動や復旧活動が少しでも早く進展することを願っております。

熊本県南部における降水量推移

気象庁は4日の午前4時50分に、熊本県南部の16市町村と鹿児島県北部4市町村に対して「大雨特別警報」を発出しました。この「大雨特別警報」は、各地で設定された降水量基準と、5キロ四方の地中雨量から土砂災害の危険度を示す「土壌雨量指数」をもとに発出されますが、4日午前3時半の時点で基準を超えていた区画はたったの2つ。その後の2時間ほどで集中して降雨があったことが伺えます。まず最初に、氾濫した球磨川沿いでも大きな被害を受けた人吉市と、その上流3地点の降水量をまとめてみました。

(出典:https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php 気象庁の計測データよりスペクティ作成)

多良木・湯前横谷については7月4日11時以降、上については7月4日午前11時から7月4日午後4時まで欠測値となっておりますが、他地域の降水量を見るに全体の傾向に大きな影響を与えるものではないと判断しています。この降水量推移を見てみると、7月3日のお昼頃から降り出した雨が、7月4日の午前2時台に猛烈な雨となって時間当たり60mm~70mmに達し、その後一旦落ち着き始めるものの、再び午前8時頃をピークに降水量が増えていることが見て取れます。

この中で時間あたり降水量が最も多かったのは、人吉市における7月4日午前2時台の68.5mm。気象庁の定義によるとこれは上から2番目の「非常に激しい雨」に該当するものの、最も激しい時間当たり80mm以上の「猛烈な雨」にまでは至りませんでした。しかし、これはあくまで観測所での数値であり、局所的に「猛烈な雨」に至った場所があることも否定できませんし、また水害被害については、雨量のみならず地形や、それまでの天候などに大きく左右されることは言うまでもありません。


SNS投稿数と降水量の比較

次に、我々スペクティが熊本県の豪雨災害について配信したSNS投稿数と、降水量の比較をしてみます。

棒グラフが上記4地点での降水量の合計を表し、線グラフはスペクティによる配信数(種類別)となります。雨は7月4日の午前2時ごろから急激に勢いを増しますが、深夜の時間帯だったこともあり、特に配信数は多くありません。その後午前4時台から家への浸水・冠水、河川の氾濫に関する投稿が増え始め、午前7時~8時にピークを迎えます。そして同じく午前7時~8時ころから、土砂災害に関する投稿が多くなるのと同時に、救助要請が発され始め、それは夜まで続くことになります。その後雨は降りやむものの、翌朝になって甚大な被害を及ぼす可能性のある土砂災害に関する投稿が複数なされました。

ひとつ気になる点は、降水量のピーク(午前2時)と氾濫・浸水に関する投稿のピーク(午前8時)の間が大きくあいていることです。雨のピークから実際に河川が増水・氾濫するにはタイムラグがありますが、ここまで長くあいているということは、人々が寝ている間に状況が悪化し、朝に目が覚めて外の様子を見て驚き、慌ててSNSに投稿をした、というようなケースが多かったと想像できます。災害の兆しはつかんでいたものの、人々が寝静まっている時間であったことが、住民に対して注意喚起や避難勧告を出すことの遅れにつながってしまわなかったか、振り返っての検証が必要だと思われます。

(出典:降水量については気象庁の計測データより https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php)

浸水推定図の早期公開

今回の災害対応においては非常に大きな進化がひとつ見られました。大雨災害時の浸水の範囲や深さといった情報は、救助計画の立案や実行、援助物資の手配や避難所の準備、また保険会社のリソース配分の決定などに大変重要なものとなりますが、以前は主に現地調査で長い時間をかけてようやく作成されるものでした。

この度においては国土地理院が、7月4日午前10時までに収集したSNSに上がった画像・動画と標高データを用いて、「浸水推定図」を同日午後1時に公開しました。以前では考えられない速さでの分析と公開に、スピードが生死を分かつ災害対応が、一歩大きく進化したことが実感されます。このSNS上の画像・動画の収集にはスペクティの提供する「Spectee Pro」が活用されており、今後もさらなるブラッシュアップを図っていきたいと考えています。

(出典:https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R2_kyusyu_heavyrain_jul.html、国土地理院)

実際のSNS投稿

最後に、いくつか特徴的だったSNS投稿をご紹介します。

降水量のピークであった7月4日の午前2時台の投稿。すでに場所によっては冠水していることがわかります。


これも同じく7月4日午前2時台の投稿。球磨川が既に増水していることが、人吉市の「水の手橋」付近の映像からわかります。


球磨村において球磨川が氾濫危険水位に達したとの情報。緊迫感が高まります。


7月4日午前4時台には芦北町において氾濫が発生します。


夜が明け、すでに家の周辺の道が川のようになっている人吉市の様子。


八代市における球磨川の様子。増水し、「あと階段5段」分しか余裕がないとのこと。


すっかり冠水してしまった球磨村の様子。


7月4日午前6時台、「雨がやんできた」とありますが、このあと午前8時台に再度ピークを迎えます。


「道の駅 芦北でこぽん」で、車の屋根に乗り、救助を待つ人々。


午前8時近くなり、土砂崩れについても報告され始めます。


マンション高層階から見た人吉市の様子。


一階部分が完全に水没している建物もあります。


球磨村の渡乙糸原地区にて、孤立世帯や土砂崩れが発生しているとの投稿。


肥薩線の線路が完全に流されてしまっています。


土砂崩れによって完全に倒壊してしまった家屋。


(根来 諭)
July 6, 2020

参考情報

令和2年(2020年)7月3日からの大雨に関する情報(国土地理院)
https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R2_kyusyu_heavyrain_jul.html/

雨の強さと降り方(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html/


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