レポート

米国東部を襲ったハリケーンIDA(アイダ)の衝撃

  • 気候変動・気候危機
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メキシコ湾で成長したハリケーンIDAが、5段階のうち2番目に強い「カテゴリー4」の勢力を保ったまま8月29日に米国南部のルイジアナ州沿岸に上陸、その後勢力を弱めながらも北東方向に進み、深刻な被害をもたらしました。地下室や車中で洪水に巻き込まれるなど、40名以上の方が亡くなったと報じられています。

ニューヨーク州やニュージャージー州では非常事態宣言が出されました。また、それに先立ってニューヨーク市では史上初めて洪水警報が発出され、市民に最大限の備えや対応をするよう呼びかけられました。雨量を見てみると、ニューヨークのマンハッタン中心部セントラルパークや、ニュージャージー州ニューアークでは1時間の降水量が80ミリと過去最多を記録しました(下記、アメリカ国立気象局のツイートより)。

ニューヨークでは、大雨が降ると地下鉄で雨漏りがするのは日常的なことですが、今回は滝のように水が流れ込む衝撃的な映像が多くSNSに投稿されていました。ニューヨークのマンハッタンを中心とした地図に、各地の様子がわかるSNS投稿をプロットしてみました。

(地図データ:©Google, 2021)

①ニュージャージー州ロディで町が冠水
②ニュージャージー州テターボロ空港が冠水
③ニュージャージー州ショート・ヒルズで町が洪水に襲われている様子
④ニュージャージー州ニューアーク・リバティー国際空港が冠水
⑤ニューヨーク州マンハッタン・145丁目駅
⑥ニューヨーク州マンハッタン・28丁目駅
⑦ニューヨーク州クイーンズで浸水した建物内部を人が歩く様子
⑧ニューヨーク州ブルックリンのシナゴーグが浸水している様子
⑨ニューヨーク州パーク・スロープで町が冠水
⑩ニューヨーク州ブルックリン・フランクリン・アベニュー・フルトン・ストリート駅


都市型水害の衝撃

米国で水害は決して珍しいものではありません。2005年に発生し、莫大な損害をもたらしたハリケーンKatrinaはまだ記憶に新しいところで、初期対応や復旧にも非常に時間がかかり、大規模災害への対策の難しさを浮き彫りにしました。その後も、500年に一度や、1000年に一度と言われるような記録的な洪水がたびたび起きています。しかし今回特に衝撃的だったのは、人口が集中しており世界経済の中心地ともいえるニューヨークで「都市型水害」が発生したということです。

都市部では地表がコンクリートやアスファルトで覆われているために保水・遊水機能低く、水を吸収する地面がないため、集中豪雨で下水処理能力を超える水が流入した場合に流すことができずに溢れ、いわゆる「都市型水害」が発生します。都市型水害を防ぐには、下水道の排水能力を高めたり地下に貯留スぺースを作るなど、都市としての保水・遊水能力を高める必要がありますが、大きな設備投資が必要で、一朝一夕でできるものではありません。地球温暖化を原因とする気候変動で降水量が大きく増えるのであれば、それを前提としてニューヨークを含む世界の都市は、その都市機能を考え直す必要があります。

しかしハードウェアでの対策では資金も時間も必要となるため、ハザードマップの更新や住民への正確で迅速な情報提供などのソフトウェア対策を同時に進めていく必要があると考えられます。

(根来 諭)
September 3, 2021


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