コラム

2021年のサプライチェーンリスクのトレンドは?BSIのレポートより


BSI(British Standard Institution、英国規格協会)が2021年5月、グローバルなサプライチェーンに関するレポート「Global Supply Chain Intelligence Report」を発行しました。BSIは、その名の通り、英国における国家規格の運営・管理などを行う非営利団体ですが、サプライチェーンについての研究に従来から力を入れており、自らもBSI Connect SCREENというリスク情報・サプライヤー管理のプラットフォームを提供しています。

まず第1章の「Summary of forecast global risks(グローバルリスク予測の要約)」では、地域ごと、そしてサプライチェーンに対するリスク要因別に下記のように分析されています。

(出典:「Global Supply Chain Intelligence Report」より筆者作成)

このレポートは、貨物の盗難リスクや、特に欧州で課題となる移民問題、違法ドラッグの流通など広くカバーしていますが、本稿では、インシデントの早期覚知が鍵となる「Man-made Disruption(人為的な途絶)」と「Business Continuity Planning (BCP: 事業継続計画)」にフォーカスしてご紹介します。


人為的な途絶

人為的なサプライチェーンの途絶としては、ストライキや政治的な抗議デモが大きなリスク要因となります。2020年の前半は、COVID-19 によるロックダウンによって外出自体が抑制されたためにその数は減少したものの、2020年後半以降は大きく増加しました。内容としては、ロックダウンなど政府のCOVID-19抑制策に対する抗議や、経済的な苦境に対する不満の表明、特定の産業の労働者を守るためのアピール、そして色々な不満が合わさった上での反政府デモなど、そのテーマや態様は様々です。

COVID-19によって特に苦しい状況となった産業(観光・交通・娯楽など)でレイオフされたり解雇された労働者の抗議は今後も続くと見られますが、経済の再開が進むことで徐々に沈静化すると思われます。これら抗議デモも、平和裏に行われている分にはサプライチェーンへの影響は小さいですが、インドでの新農業法制に対するデモでは道路を封鎖が行われましたし、フランスでのイエローベスト運動(労働者による反政府抗議)やタクシー運転手によるデモなどでは頻繁に交通が遮断されます。時には暴力的な略奪や放火などに発展するケースもあるため、人々の安全も含めて注意が必要です。

BCP:事業継続計画

BSIが2020年に行った調査によると、BCPを策定している組織は62%。そしてサプライチェーンの途絶がBCPにおける関心事のトップ3に入りました。サプライチェーン途絶の要因として注目すべきは自然災害です。BSI Connect SCREENというリスク情報プラットフォームで覚知した中では、例えばベトナムを何度も襲ったサイクロンでは、国合計で13億ドルもの損害を出し、港湾や道路の閉鎖によって輸送が滞ったり、避難時の盗難リスクが増加するなどしました。また、米国カリフォルニアでは大規模な山野火災が頻発し、停電による事業の停滞や、火に近い道路の封鎖など、サプライチェーンにとって大きな脅威となりました。

こうした自然災害の脅威に対し、COVID-19を前提に、BSIは総合的なリスクアセスメントのやり直しと、色々なケースに対応できるフレキシブルな緊急時行動計画を立てるべきとアドバイスしています。COVID-19の影響で対応能力が落ちているのは明白ですが、新型感染症の発生というケースを含めて自社のBCPを大きく見直すことで、レジリエンスを高める機会ということもできます。



また本レポートは規制の変化についても紙面を割いています。5月には、中国・新疆ウイグル自治区における強制労働をめぐる輸入停止措置に違反した疑いがあるとして、日本のユニクロのシャツの輸入をアメリカ税関が差し止めていたという報道がありました。「サプライチェーンにおける人権の尊重」はより重要なテーマとして、企業が順守すべきものとなっており、エシカルな調達を行う必要性が高まっています。

筆者はまた、今後ワクチンが行き渡って経済が再開するにつれて、需給ギャップが大きくなる点にサプライチェーンにとっての大きな脅威が横たわっていると考えています。すでに半導体不足やウッドショック(住宅用輸入木材の不足と価格高騰)による深刻な影響が出ていますが、今後の経済のリカバリーは、一律で進むものではなく、産業ごとや国ごとによってかなり濃淡がある形で進んでいくものと思われます。そうした中、グローバルなネットワークが複雑にからみあっていることを鑑みると、供給不足や供給過剰が簡単に起きうるのではないでしょうか。サプライチェーンの川上・川下まで広く見渡したうえで、自社への影響を見極める必要があります。

(SN)
July 10, 2021


参考情報

Global Supply Chain Intelligence Report (BSI)
https://www.bsigroup.com/en-GB/our-services/consulting/supply-chain-risk/supply-chain-reports/

2020年 世界の抗議デモまとめ(スペクティ)
https://spectee.co.jp/report/protests_in_2020/

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