レポート

非接触社会へ?BCP(事業継続計画)はDXと一体となり発展していく

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新型コロナウイルス流行の終息がまだ見えない中、「ウィズ・コロナ」時代を生き抜くために、AIやロボットといったテクノロジーを活用した新しいビジネスが次々と脚光を浴びています。不可欠となる要素は「非接触化」。ソーシャル・ディスタンスを保ったまま経済を回すことができる社会が、今後も発生しえるパンデミック(感染症の世界的大流行)に対してレジリエントな社会と言えるでしょう。どのような取り組みがあるのか、そしてどう発展していくのか、このコラムでご紹介したいと思います。


ロボット配送

米国「Starship Technologies」社は、Skypeの共同創業者2人が2014年に立ち上げた会社で、6輪走行する「スターシップロボット」を開発、2018年には英国ミルトンケインで商用サービスを開始しています。




このロボットは重量約100ポンド(約45 kg)、6つの車輪を持つため段差や縁石なども乗り越えることができ、約20ポンド(約9 kg)までの荷物を半径6キロの範囲で自動配送することができます。消費者はスマートフォンを使って注文し、ロボットが店舗から荷物を配送することで人と人の接触無しに商品を受け渡すことができます。現在は新型コロナウイルス拡大による追い風を受けてその展開を加速、アメリカの複数個所で商用サービスを開始し、大学のキャンパス内での自動配送も大幅に拡大していく計画となっています。英国でロックダウンが起こった際には当然需要が急増し、共同創業者のRyan Tuohy氏は声明の中で「数週間で非接触配送の需要が爆発的に拡大した」と述べています。


無人店舗

日本では入退室管理システムを手がけている株式会社セキュアが、顔認証技術を用いて入店や決済ができる「SECURE AI STORE LAB」を2020年7月に東京・新宿にオープンしました。来店者は事前に登録をしておけば、自動でゲートが開閉して入店でき、棚から商品を取るだけで紐づいているクレジットカード等でキャッシュレス決済が完了、店員と接触することなく買い物が完結します。ソーシャル・ディスタンスを守るための入店制限も容易に実現が可能で、サーマルカメラで高熱を検知するとゲートが開かないようにする仕組みもあります。

米国「Amazon Go」や、高輪ゲートウェイ駅の「TOUCH TO GO」などのごく少数を除き、まだ実証実験レベルがほとんどの「無人店舗」ではありますが、SECURE AI STORE LABは実際の店舗運営を通じて小売業を大きくアップデートする計画を立てており、その進展が期待されます。人工知能を活用して、来店者の行動分析から売れ筋を把握したり、手に取られた商品を認識し、その商品に関連した口コミなどの情報をサイネージに表示したりといった機能も今後ブラッシュアップされていくのではないでしょうか。

(出典:SECURE AI STORE LABのホームページより)

パンデミックに備えるBCPの特性

その他にも例えば米国スターバックスは、400店舗を閉鎖し、スマートフォンで注文後にピックアップする形で利用する店舗を300店舗新たに開店するという計画を掲げています。パンデミックを受けて多くの企業がそのビジネスモデルを大きく変革する必要を感じています。またいつパンデミックが発生するかわからない中でビジネスを継続していくには、事業自体を変革しなければならないという環境適応の活動と言えます。

この世界には様々な「危機」が存在しますが、事業の継続を危険にさらす事象は大別すると「自然災害」と「パンデミック」という事ができます。特定の事象が起きた場合のシナリオに基づいてBCP(事業継続計画)を立てるのは一般的ですが、BCPへの積極的な取り組みで知られるある半導体製造会社は「地震」と「パンデミック」の2つのシナリオに基づいて計画を立てているそうです。この2つのシナリオに沿えば、ほとんどのケースに対応できるからです。

逆に言えば、「自然災害」と「パンデミック」は同じ危機であっても性質が全く異なると言えます。

自然災害においては、瞬間的なインパクトは非常に大きいものの、被災地が果たしていた機能の代替を確保できれば業務量は一気に回復します。パンデミックへの対応が難しいのは、その感染拡大フェーズでどこまで広がるのか、そしてその感染症がどれほど危険なのかがわからない点で、フェーズを分けて徐々に対処レベルを上げていく必要があります。そして回復過程でも(今日本社会もまさにこの段階にありますが)①感染リスク、②社会的責任、③経営面への影響、の側面に目を配りながら、徐々に業務量を回復していく必要があり、数カ月または数年にわたる長期戦になります。


DX=BCP?

一方、現在多くの会社がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。 DXは、経済産業省のDX推進ガイドラインの定義で「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。AI(人工知能)や5Gネットワークなどのデジタルテクノロジーやデータサイエンスが発展を見せる中で、ここ数年大きく脚光を浴びているコンセプトではありますが、コロナ禍を受けてその重要度はより高まるのではないかと我々は考えています。

なぜならば、パンデミックという「危機」が上述した理由で長期間に渡って社会にインパクトを与えるもので、「立ち向かう」のではなくDXを通じて「適応する」必要があるからです。単発の自然災害ではなく、長期的・継続的な気候変動も今後大きな問題になってくるでしょう。今回のコロナ禍を受けてDXによる社会の変容を成し遂げ、ニューノーマルの環境に「適応」できるかどうかが、我々がレジリエントな社会を築きあげられるかの試金石になると考えています。



スペクティは、多くの企業や地方自治体に続々導入されている「Specte Pro」やAI開発プラットフォーム「SIGNAL」を通じて、防災/危機管理を進化させるべく日々努力を続けています。
(リアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』)


(根来 諭)
August 7, 2020

参考情報

玄関口までロボットが配送、シリコンバレーでは現実に(日経XTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00060/00003/

コロナ禍のなか無人店舗をスピード出店、ベンチャーが手がける小売店舗の新形態(マイナビニュース)
https://news.mynavi.jp/article/newsinsight-58/

Zero-touch technology could make it safe to use elevators and ATMs again (Fast Company)
https://www.fastcompany.com/90515753/zero-touch-technology-could-make-it-safe-to-use-elevators-and-atms-again?partner=feedburner&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=feedburner+fastcompany&utm_content=feedburner/


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