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話題のチャットボット「ChatGPT」から期待される防災DX

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ここ数カ月、「ChatGPT」(チャットジーピーティー)が大きな話題になっており、その名前をメディアで見たことがある方も多いのではないでしょうか。ChatGPTは、米国のOpenAIという企業が開発した、人工知能技術を活用したAIチャットボットです。公開からわずか5日でユーザー数が100万人を突破したあと、大手金融機関UBSの調査によると2023年1月時点の月間アクティブユーザー数が1億人に達したとのこと。まさに破竹の勢いで利用が広がっています。これに対抗する形で、グーグルも「Bard」というサービスを公開するなど、これまでの「グーグル検索」の次のパラダイムを探る動きが活発化しています。

ChatGPTは、LLM(大規模言語モデル Large Language Model)と呼ばれる言語モデルを用いたチャットサービスで、膨大な量のテキストデータを事前に学習した上で、様々な言語処理タスク(会話・回答、文章の作成・要約、翻訳、エクセルの関数やプログラミングのコード作成など)を実行します。従来のチャットサービスであるアップルSiri、アマゾンAlexa、Googleアシスタントなどとは仕組みが異なり、より自然で人間的な文章を生成することができます。但し、今のところ過信は禁物で、インターネット上の情報を学習した上で、求められている「確率的に正しそうな」回答を返す仕組みになっているため、ネット上に情報がなかったり、間違った情報しかなければ、当然に誤った回答が返ってくることになります。

ChatGPTは、基本的に誰でも使うことができます。有料プランでは、より高度な言語モデルを利用できたり、回答にかかる時間が短縮されたりというメリットもありますが、まず試しに使ってみたい場合は無料プランで十分です。 始めるには、まずChatGPTのホームページに行きます。そして、「Try ChatGPT」からサービスに入り、「Sign up」からアカウントを作るだけです。そして、下記メイン画面の「Send a message…」という部分に文章を打ち込んでみましょう。

例えばこれは「防災では何が大切?」と聞いた結果です。実にまっとうな回答だと感じられるのではないでしょうか?

では今後、ChatGPTを含むAIチャットボットはどのように発展をしていくでしょうか。

現在のChatGPTが学習したデータは2021年までのインターネット上のデータですが、今後さらに大量のデータを読み込んで学習を続けることで、精度や応用範囲は広がっていくものと思われます。そして、接客やFAQ対応といった場面だけではなく、防災でも様々に活用することができるのではないでしょうか。

実は既に、防災チャットボットは存在しており、国民一人ひとりの避難と災害対応機関の意思決定を支援する目的で、「SOCDA(ソクダ)」というチャットボットが、国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社ウェザーニューズ、LINE 株式会社によって開発されています。スペクティも所属するAI防災協議会では、今後は株式会社ウェザーニュースがこれを社会実装する方向性が確認されています。SODCAでは下記のような流れで個人に合わせた避難情報を提供することができます。

(出典:株式会社ウェザーニューズ)

こうした防災チャットボットが最新のLLMを活用して進化することで防災DXが進化していくでしょう。具体的には下記のような役割が期待されます。

1.災害時における情報の提供・収集

防災チャットボットの活用によって、気候や浸水範囲など、被災地における様々な情報を分析したうえで、個人に合わせた情報を提供できます。また、チャットボットに集まる質問を解析することで、どのような困りごとを抱えた人がどこにいるのかの情報を収集でき、現場の可視化につながります。

2.避難の支援

災害の状況や、一人ひとりの場所や健康状態などに合わせて、避難所や避難ルートを提示することで適切な行動を促すことができます。現在のような、一定のエリアに対する一律の防災無線によるアナウンスでは、「自分は大丈夫だろう」というようなバイアスが邪魔をして、適切な避難活動につなげるのが難しいのが実情です。個別対応で逃げ遅れを防ぐことで、人命を守ることにつながるでしょう。

3.問い合わせ対応

これが最も期待される役割でしょう。災害時には平時と比べものにならない大量の問い合わせが集まります。それに対して、通り一遍の回答ではなく、それぞれの状況に合わせた回答を返すことで、適切な情報を住民に提供することができます。人手では到底対応することが不可能ですが、AIチャットボットを利用すれば24時間365日対応することが可能です。深夜や週末でも被災者への対応が行え、被災後の支援金の受け取りの手続きのスムースさも大幅に改善されるのではないでしょうか。また、現在は言語翻訳の技術も大きく進化していますので、訪日中に被災した外国人の方々からの問い合わせにも柔軟に対応することができるはずです。


ChatGPTのその目を見張るクオリティに、「AIに仕事を奪われる」というネガティブな取り上げ方も多くされています。しかし、製造業に機械が導入されて熟練工が不要になったり、自動車の普及で馬車の御者が不要になったり、パソコンが普及することで定型業務を行うホワイトカラーの仕事が大幅に減少したり、これまでも新たなテクノロジーによるワークシフトは何度も繰り返されてきたことです。AIチャットボットを使うことで、空いたリソースを用いて新たな課題の解決にあたることができれば、我々の社会はより進化するのではないでしょうか。特に、労働人口の減少が問題となる日本では、こうした新しい技術を積極的に取り入れていく必要があると考えます。

(根来 諭)
April 12, 2023


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