防災技術の海外展開④ フィリピンの防災体制(全5回)

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第3回より続く

フィリピンは約1億1千万人の人口を抱え、南北1,851kmにわたって散在する7,000余りの島々からなる島嶼国です。首都マニラのマカティやボニファシオ・グローバル・シティといったビジネス街などでは、東京にも見劣りしない発展を遂げているさまを見ることができますが、一方で国民の約2割が世界銀行が定める貧困の定義にあてはまる、1日1ドル以下で生活しているとされており、貧富の差が大きい社会でもあります。

下記左は、少し前の2010年にOCHA(国連人道問題調整事務所)が作成した、フィリピンの災害リスクを示した地図です(大きな図はこちら)。黄色から赤で示されている地震のリスク、青の濃淡で示されている台風・熱帯低気圧のリスク、点在する活火山、黄色の線で示される近年の台風の進路、赤い線で示される海溝など、自然災害に無縁な場所は見当たりません。

(出典:左図 United Nations Office for Coordination of Humanitarian Affairs、右図 ©Google)

こうした環境のもと、フィリピンの防災体制はどのように運用されているのか、2022年11月に訪問し視察をしてきました。

(出典:THE PHILIPPINE DISASTER RISK REDUCTION AND MANAGEMENT SYSTEM (OCD))

災害に対処するため、フィリピンにはNDRRMC (National Disaster Risk Reduction and Management Council : 国家災害リスク軽減管理評議会)という組織があります。国防省長官を議長として、OCD(Office of Civil Defense : 国防省市民防衛局)が事務局を務めます。また、フィリピンの地方自治体は17のリージョン(地域)、81のプロヴィンス(州)、145のシティ(市)、1489のミュニシパル(町)、42,029のバランガイ(地区)に分かれますがそれぞれにDRRMC(災害リスク軽減管理評議会)が置かれる構造になっています。

下記左の写真は、事務局となるOCDのオペレーションセンター全景です。日本の気象庁にあたるPAGASA(フィリピン大気地球物理天文局)が得た気象データや、PHIVOLCS(火山・地震研究所)の地震観測データや火山監視カメラの映像がつなぎこまれ、Twitterの情報にも目を光らせています。

(出典:左 OCDの2022年8月5日付ツイートより、右 Spectee撮影)

次に、下記はルソン島南東部・アルバイ州レガスピ市のオペレーションルームです。ここは台風が上陸することが多く、マヨン火山という活火山を抱え、湾になっていて津波の被害も起きやすいことから防災への意識が非常に高く、詳細な防災タイムライン(右上写真)やハザードマップ(左上写真)が作られています。しかし、災害時のリアルタイムの情報収集と言う意味では課題を抱えており、電話や無線を使っての対応が中心となっているようです。

下記は、レガスピ市におけるBONOTというバランガイ(地区:最小の行政単位)のオフィスです。海が近いため、津波のサイレンが設置されています。実際に住民の救助をしたり、避難を助けたりといった役割を担います。

本レポートでは紹介しきれませんが、非常に多くの省庁や研究所、メトロマニラを管轄する組織や地方自治体などを訪問し、防災体制の視察とスペクティの紹介、現場の方々との意見交換をさせていただきました。

フィリピンの特徴として、Facebookの普及率が非常に高く、もはや社会インフラとして機能していることがわかりました。オペレーションセンターでは、電話の代わりにFacebookのメッセンジャーを使ったコールセンターのようなセクションがあり、事故やインフラの故障などの情報については、市民が積極的に国や自治体のアカウントにコンタクトして情報提供しています。そういったことから、災害発生時にSNS上の情報が有用であることは明確に認識されており(実際、若い職員たちは発災時に自分のスマートフォンを使って情報を収集しているとのこと)、Spectee Proを活用したSNS情報の取得とその他データ(気象データ・水位データ・交通情報など)との組み合わせによる「危機の可視化」が、現場の仕事を大いに助けられるであろうことは確認できました。

第5回に続く

(根来 諭)
February 15, 2023

参考情報

THE PHILIPPINE DISASTER RISK REDUCTION AND MANAGEMENT SYSTEM (OCD)
https://www.adrc.asia/countryreport/PHL/2018/Philippines_CR2018B.pdf


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