新型コロナウイルスの事例から見るSNS時代のデマについて
- BCP・危機管理
新型コロナウイルスによる混乱が広がる中、多くのデマが流布しています。
- 「コロナウイルスは熱に弱く、26~27度のお湯を飲めば予防になる」というデマが流布し、中には「武漢在住のコロナウイルス研究者がそう主張している」という情報が添えられたパターンもあった。
- 香川県高松市にあるスーパーは、店舗の関係者が感染したというデマがインターネット上に書き込まれた結果、系列の7店のうち6店では前年比で1割売り上げが上がったのに対して、デマを流された店舗だけは10〜15%ほど売り上げ減となった。
- 鳥取県米子市の米子医療生活協同組合に勤務する職員が、「トイレットペーパーが品薄になる」というデマを投稿、買い占めを誘発した。
- マレーシアでは、「新型コロナウイルスに感染すると、ゾンビのような状態になる」というデマがひろがり、保健省がそれを公式に強く否定する声明を発表した。
- イランでは「アルコールを飲むとウイルスの治療に効果がある」というデマがインターネットで拡散され、それを信じて密造酒を飲んだ27人がメタノール中毒で死亡した。
なぜこのようなデマが流布されてしまうのでしょうか? 東京大学大学院の橋元良明教授によると5つの心理的な要因があるといいます。
- 緊張や不安といったネガティブな感情を解消させるための「カタルシスの発散」
- 不安で落ち着かない理由を何とか見つけようとする「不安の正当化」
- 誰かと不安を共有したいという「運命共同体の意識を形成する心理。
- 自分だけが知っている情報を流したいという「優越感の誇示」
- 自分が聞きかじった情報の真偽を確かめようと流言してしまう「情報の確認・交換」
いずれも、正確な情報がわからない、自分に被害が及ぶのではないか、という「不安心理」が背景にあることがわかります。
このような事態を受け、WHO(世界保健機関)の世界的感染症対策チームのトップを務めるシルヴィー・ブリアン氏は、「情報が感染症のように拡散する状況です。この状況を我々は“インフォデミック”と呼んでいます」と述べています。このインフォデミックとは、インフォメーションとエピデミック(流行)を組み合わせた新語で、裏付けのない情報が大量に拡散する状況を指します。特にSNSが発達した現在、その拡散するスピードと範囲は以前と比べものにならないほど速く、広くなっていると言うことができます。
我々Specteeが提供する危機管理情報サービスにおいて、有害なデマ情報が流布していることを察知した際には、お客様に情報提供をしています。
こうしたデマの伝播を追っていると、SNS時代ならではの特徴が見えてきます。
まず、LINEやWhatsAppといったクローズドSNS(特定の仲間内でのみ情報やメッセージを共有できるタイプのSNS)において、ごく親しい家族や友人の間で情報が伝播していきます。思いやるがゆえの念のための注意喚起であったり、不確かながらも共有しておくというレベルの情報であっても、伝聞形式で伝わっていく過程で、情報伝達の意図が曖昧になったり、語尾が変化することでデマ情報が生まれてしまいます。クローズドであるだけに第三者のチェックが働きにくいことがこれに拍車をかける面もあります。
そして、その情報がTwitter、Facebook、InstagramといったオープンなSNSに流れ出た瞬間、凄まじいスピードで広範囲に伝播していくことになります。
デマ情報を流布させないために、我々個人が気を付けるべきことは何でしょうか? Specteeでは以下の5点が大切だと考えています。
- 人づての話は勇気をもって「疑う」。
- 常に政府機関・自治体などの公式情報を確認する。
- ネットメディアやブログ等の情報はアクセス数を稼ぐために、不確かなもの、センセーショナルに書かれているものも多く存在します。本当に事実確認されているか、科学的検証がされているかを冷静に見るようにする。
- 少しでも疑念をもったり、自分で判断できない情報はシェア(リツイート等)しない。
- 情報をシェアすることは、“善意であっても”自らが情報の拡散に加担しているということを認識する。
また、Specteeも加盟する「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」において、コロナウイルスに関連して真偽が確認された情報がシェアされています。ご参照下さい。
FIJ「新型コロナウイルス特設サイト」
https://fij.info/coronavirus-feature
(根来 諭)
April 26, 2020