コラム

レジリエントな組織であるために・・・推進すべきダイバーシティ

  • 危機管理
  • レジリエンス

「レジリエンス」という言葉がにわかに注目を浴びています。

レジリエンス(Resilience)は、「復元力」「弾力」「回復力」などと訳され、個人や組織などが「様々な環境や状況の変化に対して適応する力」「困難にぶつかっても立ち直ることができるしなやかな強さ」を意味します。

近年頻発する大規模災害、そして世界を襲う新型コロナウイルス感染症の流行は、人々に強いストレスと、先が読めないことに対する不安を抱かせ、個人レベルでも組織レベルでも「レジリエント」であることの重要性を再認識させたと言えます。


ダイバーシティがレジリエンスに効く?

一方、「ダイバーシティ」という言葉があります。「多様性」と訳され、東北大学の一小路武安准教授によると、1999年にダイバーシティという単語が初めて新聞記事に登場しました。この1999年は「男女共同参画社会基本法」が制定された年で、男女の権利を平等に尊重しようという意識が高まったタイミングでもありました。だからでしょうか、近年までは「ダイバーシティ」というと、差別をせずに様々な属性の人を受け入れなければならない義務として、主に人権尊重やCSR(企業の社会的責任)の文脈で語られることが多かった気がします。

しかし近年、ダイバーシティはそうした倫理上の問題であるだけではなく、企業経営を強化するための大切な要素として捉えられるようになってきたと感じます。そして、ダイバーシティは何より、「レジリエントな組織」を構築するための強力な要件になります。短期的な視点、長期的な視点の両方から見ていきます。


短期的視点:危機を生き延びる

いままさに人類が直面している新型コロナウイルス感染症の流行。人間未踏の地が減っていくことで動物との接触が増え、人の移動がより活発になれば、今後も新しい感染症が人間社会を襲う可能性は高いと言えます。そして気候変動の影響もあり世界中で多発化・激甚化する自然災害。我々は今後も「危機」に対応し、乗り越えていかなければなりません。

危機とは、組織に強烈なストレスがかかり、平常時とは違った視点をもって対応しなければならないものです。そうした時、似たような属性の人で固まった組織より、多様な属性の人々が意見を出し合って柔軟に対応できる組織の方が、上手に対応できるはずです。

資生堂の魚谷CEOは、2020年6月9日のNIKKEI STYLEのインタビューにおいて、「未曽有の経済危機に女性活躍は当面、棚上げせざるを得ないのではないか?」という質問に対し下記のように答えています。

「私の見方は正反対だ。リーマン・ショックを上回る不況がやってくるという予測もある。企業は新型コロナウイルスの感染拡大で事業が滞り、窮地に陥っている。ここからレジリエンス(回復力)が試される。そのカギは経営の柔軟性を高めることだ」

「コロナとの闘いは長期化する。企業経営は元にはもどれない。従来の発想では危機を乗り越えられない。多角的な視点で複数のアイデアを持ち寄り、回復の道筋を探らなくてはいけない。その実現にはダイバーシティ(人材の多様性)が不可欠。ニューノーマルの企業経営には女性の力・見方が今まで以上に必要だ」


長期的視点:イノベーションを起こす

米中衝突を軸に再編される世界の勢力図、仮想通貨の登場、少子高齢化の進展、様々なテクノロジーの登場と社会への実装、これから世界は社会的、地政学的、経済的あらゆる面で不確実性の高い時代に突入していくことになります。まさにVUCA(Volatility変動性・、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧性)の時代です。

日本の高度経済成長期のように、「多くモノを作り、多くモノを売る」という方向性で一致していた時代には、均一な価値観を持ち、命令に従って一糸乱れずに動ける組織が貴ばれました(いわゆる「体育会系」の組織)。しかし、これからの時代、方向性もバラバラで予想のつかない環境変化に対し、組織はイノベーションを起こし、自己変革を繰り返していかなければ生き残ることはできません。

ではイノベーションはどのような組織で生まれるのでしょうか?早稲田大学ビジネススクールの入山教授が指摘しているように、何か新奇なアイデアがゼロからポンと生まれてくるわけではなく、イノベーションは既存の知と既存の知の結合で生まれるものです。同質性の高いメンバーではグループシンク(集団浅慮)に陥るリスクがある一方、多様性の高いメンバーであれば、それぞれの持つ「知」が化学反応を起こし、既存の枠を超えるアイデアが出る可能性が高くなります。

環境の変化が続いても柔軟に適応し、イノベーションを生み続けて絶えず自己変革していく組織。そうした組織こそが長期的にレジリエントな組織と言うことができるでしょう。


レジリエンスを高めるダイバーシティの取り込み方

では組織のレジリエンスを高めるために、どのようにダイバーシティを実現したらよいでしょうか。属性の違う人々をただ集めて、組織に取り込んでいけばいいわけではありません。BCG Henderson Instituteは「経営上の必須課題としてのダイバーシティ」と題するレポートの中で次の5点を挙げています。

  • 異なる意見も受け入れて正当に評価する
  • 経営トップ主導のダイバーシティへの戦略的な取り組み
  • チーム内外の頻繁かつオープンなコミュニケーション
  • 新しいアイデアに対するオープンなカルチャー
  • 公正で透明性の高い雇用慣行

筆者はここに加えて、「組織が一丸となれるビジョン」を持つことが重要だと考えます。組織が追い求める目標や夢を共有し得てこそ、初めて多様な人々が目線を揃えてひとつのチームになれるからです。




最後に、上述のBCG Henderson Instituteのレポートの中にある、ダイバーシティを推進した民間企業が財務的に良い結果を出しているという調査結果をご紹介します。ダイバーシティは組織にとっての義務ではなく、より強くしなやかに生き残って発展していくための必要条件と言えるでしょう。

(出典:BCG HENDERSON INSTITUTEのレポートより作成)

(SN)
May 26, 2021


参考情報

日本におけるダイバーシティ概念の社会的受容 ―新聞記事データの分析から―(東北大学・一小路武安准教授)
https://toyo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=8667&item_no=1&page_id=13&block_id=17

どうなる女性活躍 コロナ不況でも「歩み止めない」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO5990861003062020000000/

世界の経営学が示唆する、イノベーション創出のための人材・組織マネジメントのあり方(パーソル)
https://www.persol-group.co.jp/service/business/event/28.html

経営上の必須課題としてのダイバーシティ(BCG Henderson Institute)
https://image-src.bcg.com/Images/2oct2019-The-Business-Imperative-of-Diversity_tcm9-230892.pdf

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