レポート

世界経済フォーラム「Global Risks Report 2024」から読み解く注目のリスクとは

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2024年における注目のリスクは何か。多くのシンクタンクのレポートやビジネス雑誌において、様々な知見が共有されています。そうした中でも最も有名なレポートが、官民両セクターの協力を通じて世界情勢の改善に取り組む国際NPO「世界経済フォーラム」によるGlobal Risks Reportではないでしょうか。2024年版はここからダウンロードすることができます。

2023年を振り返れば、スーダンでの紛争やパレスチナを舞台とした激しい武力衝突、熱波・干ばつ・森林火災・水害といった自然災害、政治的な分断や暴力的な抗議デモなど危機的な事象が発生し、2024年の展望については「A deteriorating global outlook(悪化する世界的な見通し)」との表現を使い、本レポートはかなり悲観的なニュアンスで伝えています。

下記は、1,490名にのぼるグローバルリスクの専門家・政策立案者・業界リーダーなどに対して行われた調査をもとに作成された、2年内・10年内に顕在化するであろうリスクの重大性・深刻性に基づくランキングです。

短期的リスク

短期的に最も深刻なリスクとして挙げられたのが、誤報やフェイクニュースです。1月1日に発生した能登半島での地震においても、救助活動の妨げになるような悪質な偽情報が多く見受けられ、政府も有識者による対策検討チームを発足させる事態となっています。

こうした災害に関連するフェイクニュースが有害なのは明白ですが、さらに社会に重大な影響を及ぼすのが政治・選挙におけるフェイクニュースでしょう。今月行われた台湾における総統選挙は、親米姿勢をとる与党・民進党の勝利に終わりましたが、その裏では中国が活発的にDisinformation、つまり誤情報の流布を行っていたとされています。民進党の候補者は政治スパイだったという事実に反する情報や捏造された世論調査結果が広められたり、民進党関係者のスキャンダルとなるような音声や動画が拡散されたり、非営利団体「台湾ファクトチェックセンター(TFC)」は、台湾人の8割超が偽情報を受け取っているとの調査結果を発表しています。

民主主義の根幹は、正しい情報をもとに有権者が票を投じ、国民の代表を選び出すことによって支えられます。フェイクニュースによってその判断が歪んでしまうことは、民主的な社会を根底から崩すことにつながりかねません。今年は各国で重要な選挙が控える選挙イヤーであり、特に世界の行く末に大きな影響を与える米国大統領選挙も行われます。2020年の大統領選挙では無数のフェイク画像が出回り、いわゆる陰謀論の拡散やロシアからの妨害などもあったうえ、2021年1月6日にはトランプ支持者による衝撃的なアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件も発生したことが記憶に新しいです。

アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件

ここ数年で生成AIのクオリティが飛躍的に向上していることを考え合わせると、我々は相当慎重に情報の真贋を見極める必要があります。フェイクニュースによって政治的意思が歪められ、社会が分断し、それが世界の不安定化につながる事態は避けなければなりません。

長期的リスク

10年スパンで考えると、「異常気象」「地球システムの危機的な変化」「生物多様性喪失と生態系崩壊」といった、地球温暖化に起因する様々な事象が上位を占める形となっています。

2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定では、世界の気温を、工業化によって二酸化炭素排出が劇的に増加した産業革命の前の水準から、2.0℃の上昇までに抑えようという目標(努力目標として1.5℃)が掲げられましたが、その後2.0℃上昇と1.5℃情報では地球に与える影響が大きく異なることがシミュレーションによってわかり、改めて1.5℃が国際社会による目標として設定されました。

しかし1月9日、EUの気象情報機関「The Copernicus Climate Change Service」が衝撃的なレポートを発表しました。確かに2023年は暑かったと実感するところですが、世界の平均気温は産業革命前(1850年-1900年)に比べて1.48度高く、観測史上最高を記録したとの内容です。原因については、大気中の二酸化炭素濃度が過去最高レベルに達するなど気候変動の影響が増加したことに加え、エルニーニョ現象による海洋表面温度の上昇が挙げられていますが、いずれにしても対策が進まない中で既に目標値ギリギリに迫ってしまっている事実は非常に重たいと言えます。

昨年12月にドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)には約200カ国が出席し、化石燃料からの脱却に向けた方向性について初めて合意しました。しかし脱炭素の動きは世界の平均気温の上昇ペースに対して遅々としたものと言わざるをえません。我々は緩和策(Mitigation)に取り組みつつも、頻発する災害への適応策(Adaptation)を強力に推し進める必要があるのではないでしょうか。

(出典:「Copernicus: 2023 is the hottest year on record, with global temperatures close to the 1.5°C limit」The Copernicus Climate Change Service)

レポートは結びとして、AI技術の隆興、気候変動や地政学的な力学の変化、人口の変動などといった長期的な構造の変化がグローバルで起きている事を指摘しつつ、これに対応するにはそれぞれの場所に応じた戦略、ブレークスルーを図る挑戦、そして国境を越えた協力が必要と述べています。第二次世界大戦後、人類は貧困の削減を始めとして着実に歩みを進めてきましたが、様々な意味で曲がり角を迎え、リスクが多くの局面で高まる「危機の時代」に突入していると感じています。短期的・長期的視野に立ち、リスクを見すえ、それをマネジメントしていくことが必要とされています。

(根来 諭)
January 24, 2024


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