JICA民間連携事業とは:サステナブルに社会課題を解決する
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スペクティは、JICA(独立行政法人 国際協力機構)が行っている「中小企業・SDGs ビジネス支援事業」に採択していただき、今年中に日本の防災の現場で広く普及しているAI防災ソリューション「Spectee Pro」をフィリピンにおいて立ち上げる計画です。本レポートでは、スタートアップ企業がJICAという公的な組織のサポートを得ながら海外展開を図ることの意義について述べたいと思います。
ODAの現状
JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を推進することをミッションとする、外務省所管の独立行政法人です。ODAとは、港湾や橋などのインフラを整備したり、特定の技能を持つ人間を育成したりといった形で、政府が開発途上国に対して行う資金や技術面での協力を言います。ODAは先進国としての責務として、そして人道的な立ち場から、開発途上国の社会開発を助けて人々の福祉を向上させることを目的とするものですが、同時に外交における重要なツールでもあり、友好国を増やしていくことも大切な目的です。昨年、8年ぶりに改定された「開発協力大綱」でも、ODAを日本が提唱する外交構想である「自由で開かれたインド太平洋」の推進につなげることが明記されました。
しかし、日本のODA予算は1997年度の1兆1,687億円をピークに減少し、2024年度は5,650億円とほぼ半減している状況です。国連は国民総所得比で0.7%のODA予算を計上するよう目標を掲げているものの、厳しい財政事情のもと、日本の実績は目標の半分程度になってしまっています。一方、先進国から開発途上国へと向かう資金全体におけるODAの割合は約15%と言われており、OECDの資料によると2017年における世界全体のODA総額が約1,900億ドルであったのに対し、途上国向けの民間直接投資は約5,400億ドル・個人による海外送金は約4,300億ドルと、民間における資金流入の方がはるかに大きいのが実情です。
援助からビジネスへ
政府の財政事情は厳しく、ODA予算額を大きく引き上げるのは難しい状況においては、いかに潤沢な民間資金を途上国の社会開発に差し向けるかが重要な課題です。こうした背景のもと、JICAが民間資金を途上国開発に活用する目的で運営しているのが「民間連携事業」であり、その中でも代表的なメニューが、スペクティが今般採択いただいた「中小企業・SDGs ビジネス支援事業」です。この事業では、新興国が抱える開発課題の解決に役立つ技術・製品を持っている企業が、海外展開の支援を受けることができます。
途上国の開発については「援助からビジネスへ」「支援から協働へ」という潮流があります。ODAのひとつの限界として、開発援助のプロジェクトは期限が決まっていることから、一旦インフラを整備したものの、資金的・技術的な制約からその後メンテナンスされずに放置されてしまうようなケースが有り得ます。外部から注入する力によって一時的に能力が上がったとしても、その国の底力自体があがったことにはなりません。一方で、民間企業が参入して社会課題を解決するようなビジネスが立ち上がり、しっかりと利益を出して回していくことができれば(現地で人を雇って育てることを含む)、その仕組みはその国に真の意味でビルトインされたものになり、かつ利益が出る限り終了期限のないサステナブルなものだと言うことができます。こうしたことから、民間資金の活用・ビジネスの支援というものに脚光が当たっているわけです。
JICAの強み、日本ブランドの価値
スペクティではフィージビリティスタディの段階からJICAからサポートをしていただいていますが、その中で感じたことは、JICAがこれまで積み重ねてきた「信頼資産」の大きさと、日本という国が持つソフトパワーの強さです。
財務基盤が弱いスタートアップ企業であるスペクティとしては、調査費用などの財政的なサポートも大変ありがたいのですが、JICAの持つ人的ネットワークが何よりもの大きな助けとなりました。日本のスタートアップが途上国政府の意思決定ができる層にアプローチしようとしたとしても、門前払いになることは想像に難くありません。JICAのネットワークを活用することで、いきなり中央省庁のトップに近い方と直接コミュニケーションを取ることができ、また総じて熱心に話に耳を傾けていただくことができました。「JICAが紹介するものであればきっと良いものだろう」という信頼がベースにあることは間違いありません。また、中央政府・地方自治体ともにかつてJICAでの研修を受けたことがある、いわゆる「JICAアルムナイ」の方々が少なからずいらっしゃり、(フィリピンのお国柄もあるかもしれませんが)すぐに打ち解けて深い話をすることができました。
特にスペクティは防災という、公共・準公共の分野に取り組んでいることから、中央省庁・地方自治体に入りこんでいくことは不可欠です。先人が築いてきた信頼や、「日本の技術」というものに対する高い期待は、強力なドアオープナーになると感じました。我々も成功裏にビジネスを立ち上げ、利益を出しながらそれを回していくことで、社会課題の解決をサステナブルな形で進め、日本ブランドの価値をさらに高めていきたいと思います。また、フィリピンの後は、自然災害に苦しむことが多いASEAN諸国やその他のアジアの国にも広げていきたいと思います。
プレスリリースにも載せているこの写真は、弊社代表の村上と共に昨年、2013年に巨大台風ヨランダに襲われたタクロバンを訪れた際に撮影した写真です。この学校は、校舎に書かれている通り、JICAの支援によって建設されたものであり、災害時には避難所としても機能するようになっていました。アポもなく突然訪れたにも関わらず、大勢の子供たちが大歓迎してくれました。少子高齢化の進む日本と異なり、元気な子供があふれる活気あるフィリピン。こうした子供たちを災害から守る力になれればと願い、Spectee Proの立ち上げを進めていきたいと思います。
(根来 諭)
July 3, 2024
信頼できる危機管理情報サービスとして続々導入決定!
スペクティが提供するAI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』(https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性・正確性・網羅性で、危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握することが可能です。
また、『Spectee SCR』(https://spectee.co.jp/service/specteescr/)はサプライチェーンに影響を与える危機を瞬時に可視化し、SNS・気象データ・地政学リスク情報など様々な情報をもとに、インシデント発生による危機をリアルタイムで覚知し、生産への影響や納期の遅れ等を迅速に把握することができます。
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