レポート

経団連の提言「大規模災害に負けない持続可能な社会の構築」

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先週4月11日、日本経済団体連合会(経団連)は政府の国土強靱化基本計画の改定に先立ち、「大規模災害に負けない持続可能な社会の構築」という提言書を公表しました。政府が推し進める「国土強靭化」とは、災害大国・日本において、大規模自然災害があった時に人命や経済社会を守り、迅速に回復する強靭性(=強さとしなやかさ)を備えた国土や仕組みを構築していく取り組みです。これに対し、日本の経済社会・企業社会を代表する経団連が提言を行った、という形です。

提言の5つのポイントは下記の通りです。

防災DXの推進

①では、災害対応のどの局面でも、防災DX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠になるということを述べています。防災DXとは、デジタル技術を活用してこれまでの防災を革新的に進歩させることを指します。スペクティの存在意義はまさにこの防災DXを推し進めることにあり、SNSや気象情報・プローブデータなどの各種データを取り込み、災害状況の可視化するソリューションを提供するとともに、これから生じ得る被害の予測技術を開発しています。

提言書の中で述べられているのが「デジタルツイン」です。デジタルツインとは、デジタルの世界にフィジカル空間の情報を完全に再現した”双子”を意味します。センサーやカメラで取得した現実の情報をほぼリアルタイムでコンピュータ上に再現するものです。国土交通省が既に「Project PLATEAU」の中で3D都市モデルを公開している他、色々なプレイヤーが建物単位などでデジタルツインを構築するプロジェクトを進めています(その内のひとつであるSymmetry Dimension社と共催したセミナーの内容はこちら)。 デジタルツイン上でAIによる解析やシミュレーション、状況のモニタリングを行い、それを現実空間にフィードバックすることで、災害の予測や被害を最小限にとどめるようなアクションを効果的に行っていくことができます。

サプライチェーン強靭化

③では、サプライチェーンの強靭化が挙げられています。サプライチェーンとは、原材料が製品に加工され、消費者に届くプロセスを指します。これが寸断されると生活や経済活動に大きな影響が出ることは、新型コロナウイルス感染症でマスクが手に入らなくなったり、特定の品物の価格が高騰したことで実感したことです。企業が、災害発生時でもサプライチェーンを止めない、止まってもすぐに復旧できることが、社会全体の強さ・復興のしやすさにつながります。これに対し、提言では「多元化・可視化・一元化の推進」をポイントに挙げています。

実はこの「多元化・可視化・一元化の推進」は、経団連が2021年に発表した「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて」の中で既に提言しているものです。

多元化とは、例えば原材料をひとつのサプライヤーから調達していると、そのサプライヤーの製造がストップすることでサプライチェーンが途絶してしまいます。よって、サプライヤーを複数にすることや、自社工場を地理的に離れたところに分散すること、物流の手段も複数確保しておくことなどが多元化の具体的な手段となります。しかし、これは企業が追求するべき「効率化・コストダウン」と逆行する流れであるため、ベストなバランスを見出すという意識が必要になります。

可視化には、以下3つの可視化が含まれると考えています。
①サプライチェーン構造の可視化
②サプライチェーン上のリスクの可視化
③サプライチェーンに影響を与えるインシデント(危機事象)の可視化
現代のサプライチェーンは複雑にネットワーク化しており、その可視化が徹底できている企業は多くありません。自社のサプライチェーンを可視化した上で、そのどこにリスクが存在するのかを可視化し、かつインシデントがが発生した時に迅速に覚知できる体制を構築することが求められます。

一元化とは、サプライチェーンというものは数多くの企業や組織によって構成されているため、それら構成するプレイヤーが一元化して(=連携して)取り組むことが大切であることを意味します。企業がモノを消費者に届けるには、原材料メーカー、部品メーカー、物流業者、卸売・小売店、外部委託業者など様々なプレイヤーが関係します。自社だけで閉じていては有効な対策を打てません。川上から川下までが連携して流れを止めないことが重要です。



その他、官民の連携やコンパクトシティ化による事前復興、意識向上と人材育成など、既に取り組みが進んでいる点も含めて的を得た提言となっています。共通して言えるのは、過去の国土強靭化では堤防の建築などハードウェアに焦点が当たりがちだったものが、テクノロジーや仕組み、考え方といったソフトウェアに重きが置かれている点です。人口減少の時代を迎え、南海トラフ地震・首都直下地震・富士山噴火などの大災害の発生が危惧される今、そうした考え方の転換は必須のものであると考えます。スペクティも国土強靭化の一助となれるよう防災DXの取り組みを前進させていきます。

(根来 諭)
April 17, 2023

参考HP

経団連「大規模災害に負けない持続可能な社会の構築」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/026_honbun.html

内閣官房「国土強靭化」)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/index.html



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