迫る日本の物流危機、解決策は

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「このままでは物流費が高騰し、モノが届かなくなってしまう」

わが国では物流危機を叫ぶ声が大きくなっています。そのような心配がなされているのは、ひとえに物流に対する需要が輸送能力を超えてしまっているからです。下記グラフは、ロジスティクスシステム協会による推計をグラフ化したものです。2030年には実に需給ギャップは36%にまで広がると見られています。


物流危機の背景

ではなぜこのようなギャップが生まれているのでしょうか。その構図を図示しました。

まず需要の増加については、オンラインショッピングの普及が大きく影響しています。特にコロナ禍によって在宅を強いられることが多くなるなか、これまでオンラインショッピングをあまり利用していなかった層も含めて広まったことがこの流れを後押ししているのではないでしょうか。また、荷主や消費者のニーズが多様化し、それに対するサービス競争が激化する中で、多品種小ロットの配送が多くなったことも梱包・管理・配送にかかる工数を押し上げています。

一方、供給減はより大きなインパクトがあり、上述のロジスティクスシステム協会の推計では、2030年の営業用貨物自動車の供給力は、2015年に比べて3割も減少してしまいます。その要因は、深刻なドライバー不足です。現職のドライバーの高齢化が進む一方、多重の下請け構造から賃金も上がらず、労働環境が過酷なことから、新たななり手が不足しています。

さらに、「2024年問題」があります。物流業界が抱える2024年問題とは、働き方改革関連法に基づき、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限規制(年960時間)がかけられ、ドライバー不足に拍車をかかってしまうという問題です。仕事量が制限されることから賃金が下がり、離職するドライバーが増えてしまうことも危惧されています。

また、脱炭素対策によるコスト増も考えられます。企業が温室効果ガスの排出の抑制を求められる中、トラックなどの営業用貨物自動車を電動化していく流れは間違いなく強まるため、企業にとってのコストは重くなります。


待ったなし、物流の効率化

何も対策を打たないでいれば、物流の遅れで生産計画が乱れ、サプライチェーンが機能しなくなる可能性があります。また、このまま物流費があがっていくと、企業の収益を圧迫してしまいます。 一方、物流という分野はデータ化や自動化が遅れ、ベテラン社員の勘に頼ったオペレーションもまだ残っていることから、改革する余地が非常に大きい分野でもあります。

現在、色々な効率化の取り組みがなされています。例えば積載効率を高めるために、他企業同士が連携をして、商品を入れる箱を標準化したうえで、共同配送をしたり、行きはA社の商品を運び、帰りはB社の商品を運ぶようなアレンジをすることで、トラックが空っぽで走ることないような取り組みがなされています。また、新しいロボティクス技術を使い、倉庫における省人化を進めたり、トラックの無人隊列走行やドローン・自動配送ロボットの活用なども積極的に検討が進められています。

さらに、「フィジカルインターネット」という手法にも注目が集まっています。

「フィジカルインターネット」とは、AIやIoT技術を活用し、物流ニーズや倉庫、車両の空き情報など物流要素を見える化しつつ、倉庫やトラック、容器などを複数企業でシェア・標準化することで物流の効率性を究極まで高めるシステムの考え方を指します。こうしたシステムを導入して効率化が進めば、温室効果ガス排出抑制にも一役買うことは間違いありません。

また、積替を前提とした柔軟なルート設定が可能になること、供給・需要の状況が可視化されることは、自然災害などのハザード発生時に物流寸断に対する耐性を持つことになると考えられ、「効率性」とともにサプライチェーンの「レジリエンス」の向上に資するものと考えられます。

フィジカルインターネットの実現には、物流網及びその近隣におけるリスク情報が欠かせません。スペクティでは、サプライチェーンの強靭化に向けて、そうしたリスク情報の収集・解析に取り組んでおり、物流会社や配車計画・動態管理のソリューション提供会社とともにフィジカルインターネットを支える技術を開発していきます。

(根来 諭)
March 30, 2022


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