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東南アジア・タイの首都バンコクにおいて9月19日の午後から20日の朝にかけて、大規模な抗議デモが行われました。

タイでは、2014年の軍事クーデーターで首相の座についたプラユット氏率いる現政権について、軍の影響力を背景とした強権的な姿勢に対する抗議デモが何度も起きていますが、今回のものは過去最大の規模で行われました(主催者の発表で5万人以上)。軍政によって制定された憲法の改正や王制改革を求めるものです。

当初は、19日にタマサート大学タープラチャン校において集会を行ったあと、20日にはラーチャダムヌン通りを行進して首相府に至り、要望書を提出する計画でしたが、タマサート大学キャンパスを追い出された群衆は隣接するサナーム・ルアンに移動。夜のうちに周囲の道路をバリケードで塞がれたことにより行進もかなわず、デモのリーダーからバンコク都市警察の代表者に対して、枢密院(国王の諮問機関)に届けるようにと要請される形で、要望書が提出されるにとどまりました。

タイの主要紙であるバンコク・ポストの報道によると(※)、9月24日に議会の外において、さらに場所は未定ですが10月14日に、新たな抗議デモが予定されているとのことです。

◆背景に関する考察

これまで幾度となく行われてきたタイでの反政府デモですが、今回について特異であったのは「王制の改革」にまで踏み込んだ点にあります。タイには不敬罪が存在し、王室を批判することは強い禁忌となっているからです。実際、タイで王室の人気はこれまで非常に高く、プミポン国王の時代には、政党間の衝突やクーデターなどの危機に際し、あらゆる政治勢力を越えた存在として国王がその事態を収拾してきたことからも強い敬愛を集めてきました。

しかしプミポン国王の崩御後に即位したワチラロンコーン国王については、数々のスキャンダルや放蕩的な生活(主にドイツのミュンヘンで過ごしているとされる)が報じられており、国民の間には内心不満が積もっていたと思われます。また、現政権も国王側に近づく姿勢を見せており、2017年の憲法改正で国王の権限が大幅に強化された背景があります。つまりこれまでの「政治勢力を越えた国民統合の象徴」であった王室が、「強権的な手法で国民を抑圧する政権側の存在」へと変化したことが、今回の異例の王制批判を招いていると思われます。

そうした禁忌に踏み込んだ要求に対し、政府側の出方が注目されましたが、バリケードで道路を塞ぐなどは行ったものの、暴力でデモ参加者を排除するようなケースは見受けられませんでした。今回バンコク・ポストがフェイスブック上でデモを生中継していたように、国内外からの監視の目があることも政府側の対応を抑制させた一助になったものと思われます。しかし、デモ参加者が道路に埋め込んだ、王制改革を訴えるプレートは即時に撤去されるなど、抗議デモを抑え込もうという強い意思が伺えました。

タイは日本企業が多く製造拠点を構え、またシンガポールの高コストを嫌った企業が東南アジアにおける営業拠点や地域本社機能をタイに移す動きも見られます。2011年の洪水発生時に日本企業の生産やサプライチェーンに大きな影響を与えたことからもわかるように、タイにおける危機の発生は日本企業に対するインパクトが大きいことから、今後も注意を払って見ていく必要があると思われます。

◆SNSでみる事態の進展

SNSの投稿から、事態の推移を追ってみます。時間は現地時間で24時間表示。


(19日12:26)抗議デモスタートの何時間も前から、人々は会場であるタマサート大学のキャンパスに集まり始めていました。


(19日13:31)船でチャオプラヤ川からタマサート大学に乗り込もうとするも、阻止されるデモ参加者たち。


(19日14:08)周辺では交通機関の乱れも見られました。バンコクメトロのサナームチャイ駅の様子。


(19日15:32)デモ参加者に暴言をはいたとのことで一人の男性が連行されました。


(19日15:38)公共の場を不法に使用していること、及びソーシャルディスタンスの懸念を理由に、政府はデモ参加者たちに対し、会場から1時間以内に退去するよう要請。


(19日15:48)要請を受けてか、タマサート大学から隣接するサナーム・ルアンに移動するデモ参加者たち。


(19日16:32)政府側が設置した柵を倒してサナーム・ルアンに入っていくデモ参加者たち。


(19日16:45)サナーム・ルアンに大勢が集まり、非常に「密」な状況に。


(19日20:12)陽が落ちても群衆はそのまま残り、スピーチを聞く、歌を歌う、シュプレヒコールを上げるなど抗議活動を継続。


(19日20:07)野党であるFaculty of Progressの党首が会場に姿を見せる一幕があった。


(20日00:25)日付が変わったころの会場の様子。


(20日01:41)政府の警備スタッフが会場の周りをパトロールしていました。


(20日2時以降)その後、予定されていた行進を阻止する目的か、多数のバリケードが設置される様子が投稿された。


(20日04:36)休息をとるデモ参加者たちの様子。


(20日7時以降)その後もバリケードの設置は続く。


(20日08:10)予定されていた首相府への行進は中止との情報が流れる。


(20日09:19)最後はデモのリーダーからバンコク都市警察の代表者に対して、枢密院に対する要望書が手渡される形で今回のデモは終息となった。


(SN)
September 23, 2020

参考情報

(※) Bangkok Postによるツイート
https://twitter.com/BangkokPostNews/status/1307525496570146816?s=20

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