SNSで見る軽石の漂着

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2021年8月に噴火した小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」。戦後最大級とされるこの噴火での噴出物は少なくとも東京ドーム約80個分と推計され、海に放出された大量の軽石が各地に漂着して問題となっています。

軽石とは、多孔質(穴が多くあいた)で密度の小さい石で、水や二酸化炭素、火山ガスを含んだ溶岩が急速に冷却・減圧されることによって形成されます。穴が開いていることで比重が水より軽いものが多く、海面上に浮かんで沈みません。軽石の弊害としては、養殖魚などが誤飲して死んでしまったり、工場などの海水取水口を詰まらせてしまったりという事が考えられますが、何より船の航行への影響が最も大きいでしょう。船はエンジンの冷却装置のフィルターに軽石が詰まると航行できなくなる恐れがあり、漁船や観光用のボートなどが出航ができなくなったり、離島では唯一の移動・輸送手段であるフェリーが止まることで、人流・物流の両面から人々の生活に大きな影響を与えています。

スペクティでは軽石の漂着情報についてSNSへの投稿を解析・収集していますが、下記図は日にちごとの漂着場所と投稿件数をあらわしたグラフです。全92件中半数は沖縄県に集中しており、次いで東京都の伊豆諸島、千葉県となっています。昨日12月1日はこれまでの観測期間で最大の10件でしたが、初めて静岡県の駿河湾に浮かぶものがとらえられていました。

続いて、軽石の漂着に関する投稿を、投稿された週ごとに日本地図にプロットした図となります。10月の下旬は沖縄県や鹿児島県の奄美大島で観測され、11月の中旬からは東京都や千葉県、茨城県などでも観測されるようになりました。沖縄には現在も漂着し続けており、やはり最も軽石被害が大きい県であると言えるでしょう。

次にご紹介するのは国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が11月16日に発表した、軽石漂流に関する予測シミュレーションです。高知県沖で観測された軽石がどのように漂流するのか、北からの風の影響が大きいケース(赤色)、風の影響がある程度あるケース(青点)、風の影響が無いケース(黒色)に分けて示されています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の人工衛星からとらえた場所情報をもとに、海流や潮の満ち引きの影響を含めたJAMSTEC開発の予測モデルを用いたシミュレーションですが、軽石が潮のどの部分に乗るかで漂流のルートは当然大きく変わってきます。

SNSへの投稿と見比べてみると、やはり日本列島に沿って北東に流れる黒潮のルートを考えると、紀伊半島や四国などへ漂着していないことは妥当なようです。一方、SNSでは東京都の城南島海浜公園や千葉県の検見川浜など東京湾の奥深くでも観測されており、局所的な風の影響などもあるのだと思われます(もしくは福徳岡ノ場由来ではない軽石の可能性も)。

黒潮の流れや、冬の気圧配置による西からの風で、今後軽石は太平洋の方に流れ出していき、これ以上悪化する可能性は低いのではないでしょうか。軽石の回収は容易ではないですが、政府や自治体による支援策も打ち出されており、一刻も早く平常の生活に戻れることを祈っています。

最後に、SNSの投稿から軽石漂着の様子をピックアップしてご紹介します。



11月20日、沖縄県・宮古島


11月23日、茨城県・日川浜


11月23日、沖縄県・宜野湾市の川に流入している様子


11月28日、沖縄県・渡嘉敷港


12月1日、千葉県・検見川浜


(根来 諭)
December 3, 2021


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