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レジリエンス、もしくはレジリエントという言葉を目にすることが増えてきました。


レジリエンスとは英語で「弾力性」という意味、レジリエントは「弾力性のある」という意味です。イメージがわくでしょうか?そう、レジリエントな企業とは、「災害や不景気といった経済的なダウントレンドを柔軟に受け止めて、それを反発力に変え、以前より大きく成長する企業」を指します。


レジリエンスという言葉が使われる理由の一つに、一言で表す日本語がないということがあります。レジリエンスは危機を防ぐ防災や危機に耐える堅牢性・強靭性を意味してはいません。また危機の回避やリスクを分散する冗長性とも考え方が違います。あくまで危機を受け止めて力を利用して跳ね返す力を指すのです。


戦略コンサルティングファームのマッキンゼーが出しているレポートでは、経済のダウントレンドをいち早く脱出し成長を遂げた上位20%の企業をレジリエントな企業として定義し、その特徴を研究しています。レジリエント企業は経済が回復に乗った段階でも成長を続け、やがて支配的なインフラとして社会に定着していきます。


震災や戦争、パンデミックといった危機においては、その前後で社会の構造が劇的に変容してしまうということが起こります。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにかかる影響を見ればわかりやすいですね。その社会変容に対して柔軟に対応し成長する企業は成長します。一方で、社会変容に対応できなかった企業は縮小均衡を余儀なくされます。社会変容の局面ではそのような二極化が生じること、そして避けることができない危機はいかに準備をしていても必ずくる事がわかっているからこそ、経営者は自らの組織がいかにレジリエントになっているかを気にする必要があります。


前述のマッキンゼーのレポートでは、レジリエント企業に共通する特徴は”Speed and Discipline”(スピードと統制)であると定義しています。Specteeでも、様々なレポートや過去の災害や不景気を糧に成長したレジリエント企業を研究し、以下の特徴を普段から経営者が意識しておくことが必要だと考えています。


(1) 危機を察知し影響を推測する

多くの企業は危機に対して万全の備えをしていることでしょう。しかし、全ての危機に対して予見し備えることは不可能です。企業は平常時より情報収集を怠らず、あらゆる情報源に神経を張り巡らせ、それを一覧で把握できる即時性の高い危機管理ダッシュボードをBCP(注①)の一環として備えておくことが必要です。

特にインフラを扱う企業にとって、この数年間において最も即時性の高い情報源として使えるようになったものがあります。それは、現場にある無数のスマホです。スマホにはカメラをはじめとしたありとあらゆるセンサーが搭載され、刻一刻とSNSやWebに投稿されてます。

火災や事故の情報はスマホからの投稿が一番早い場合があります。複数の人が上げた情報は多面的に解析することができます。事故や災害以外にもマーケティング上のいわゆる炎上(注②)をしていることもあります。企業にとってこのスマホから集まる情報をいち早く解析し自社の情報を掛け合わせて状況把握すること、これはいかなる企業にとっても必須です。

(2) 柔軟に組織を変える

危機を察知したら次に素早く動かなければいけません。その場合、企業は情報と権限が集約されたチームを迅速に組成することが求められます。英語では”War Room”(危機対策室)と呼ばれる場所と組織を速やかに組成して権限集約します。

実は、日本の大企業の大半はこの情報集約と権限集約が苦手だと考えています。平時は緻密に積み立てられたオペレーションプロセスと適度な権限分散が企業のガバナンスを支えます。しかし、生死を分ける緊急時にはこのプロセスは必要に応じて無視されショートカットされる必要があるからです(火災が起きてる時に、承認がないと消火器を持ち出せません!とは言わないのと同じです)。

(3) 危機に対して素早く対応する

レジリエント企業は危機に対応して素早く行動しています。例えばパンデミックの局面ではいち早くリモートワークの体制を整え、従業員の安全を確保しながら普通の業務を継続することができる企業とそうでない企業の明暗が分かれました。

また、危機からくる経済的なダウントレンドに対しても素早く行動を起こします。このような企業は普段から財務的なストレステスト(注③)を行っており、短期間のうち経済回復までの運営資金を確保することができます。資金確保が後手に回らないので、戦力を保持したまま反転攻勢のタイミングを待つことができるのです。

(4) 反転攻勢のタイミングを察知する

レジリエント企業は危機対応能力ばかりが評価されますが、実は、経済回復期によりアグレッシブな事業開発やM&Aを仕掛けることも特徴です。これは経済危機を機に成長し、回復過程に至るまでに一定の力をため込んでいることも理由の一つでしょう。

また、危機下に必要だったサービスはその後の社会変容により、基礎的なインフラになることを求められるようになりますので、足りないピースを早急に埋めていく必要性が社会から求められます。

その後も長期間成長する軌道に乗るためには、綿密な情報収集を行う必要があります。危機下の体制を徐々に平時の体制に移行しつつ、競合に先んじて積極果敢に投資を行っていくために、リアルタイムで情報取得できるツールの存在が重要となります。

(5) 成長を継続する能力

危機下での成長と平時での成長は質が違います。たとえ危機下での成長を遂げることができたとしても、平時に戻った時にその成長が維持できないと意味がありませんし、それこそ打ち上げ花火にしか過ぎなくなります。

レジリエント企業は、危機下からいち早く平常モードへと経営を切り替え、成長に合わせた組織の形、プロダクトの形を整える必要があります。例えば危機下では許容されたユーザーインターフェースの稚拙さやセキュリティの甘さ、サービスの欠落などは平時では受け入れられません。


今、先が見えない時代だからこそ、企業経営者は自らの組織をレジリエントにしていくことが求められています。この数年の間に100年に一度の災害が何度あったことでしょう。自然災害のみならず、人為的な災害や企業のレピュテーションなど、危機は必ず訪れます。


Specteeは危機管理のスペシャリストとして、顧客のレジリエンスを高める支援をさせていただいています。

(KS)
April 25, 2020

レジリエンス

注① BCP
事業継続プラン、危機に際して企業活動を存続するためにどう行動するかをあらかじめ決めておく計画

注② 炎上
ネット用語で、不祥事や失言などと判断されたことをきっかけに、ネット上で非難や批判が殺到して収拾が付かなくなる状態


注③ ストレステスト
市場に不測の事態が生じた場合に備えて、ポートフォリオ(ポジション)の損失の程度や損失の回避策を予めシミュレーションしておくリスク管理手法



参考情報

「レジリエントな組織」を考えるためのフレームワーク (Biz/Zine)
https://bizzine.jp/article/detail/160

Business Resilience – McKinsey & Company
https://www.mckinsey.com/featured-insights/business-resilience

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