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sigmaレポートで振り返る、世界で増加する水害

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世界的な再保険会社であるSwiss Re社の研究部門、Swiss Re Instituteが機関紙「sigma」を発行、2021年に世界を襲った自然災害について報告しました。特にFlood(洪水)にフォーカスを当てた内容となっており、これをもとに近年世界で増加する水害について振り返ってみたいと思います。


2021年度に世界で発生した自然災害を振り返ってみると、その損害額は約2700億USドルにのぼりました。国を荒廃させてしまったハイチ地震や欧州の市街地を襲った洪水、ニューヨークを直撃したハリケーンIdaを含む熱帯低気圧、各地で観測された寒波や熱波など、またも様々な災害が猛威を振るったと言うことができます。また、その損害のうち、約40%の1110億USドルが保険によって補償されたとしています。

下記円グラフは、その約2700億USドルの損害を、自然災害の種類別に分けたものになります。洪水と熱帯低気圧(ハリケーンなどを含む)による損害が圧倒的に大きく、次いで暴風雨、地震と続きます。地震と森林火災を除きすべて「水」にからむ災害であり、人間社会にとって水害の脅威が引き続き大きいと言うことができると思います。


次のグラフは、保険でカバーされた損害額を、「地震/津波」に関連したもの「水害」に関連したものに分けて棒グラフ化したものです。「地震/津波」については、阪神・淡路大震災やチリ地震、東日本大震災が発生した年の割合は小さくないものの、それ以外の年については圧倒的に「水害」関連の損害額が大きくなっています。水害については、米国にハリケーンKatrinaが襲来した2005年、Harvery/Irma/Mariaの3つのハリケーンが発生した2017年の損害額が抜きんでています。2013~2015年の損害額は大きくなかったものの、その後は長期トレンドである「年5~7%増加」というトレンドに戻ったと報告書は評しています。10年移動平均の線グラフを見てみても、長期的には一貫して損害が大きくなってきていることがわかります。


下記棒グラフは、2021年に発生した洪水による損失をまとめたものです。ここから読み取れるのは、①この10年間の平均損害額と比べて、2021年はその約2倍もの損害が発生したということ、②その内訳として欧州における洪水が大きく寄与したこと、そして③アジアについては損害額のうち保険でカバーされた部分が非常に少なかった(保険というリスク低減策が行き届いていない)ということです。


ご記憶の方も多いと思いますが、2021年7月中旬に欧州で発生した水害は非常に衝撃的なものでした。ドイツ、ベルギーを中心にオランダ、ルクセンブルク、スイスでも犠牲者を出したこの水害では、川沿いの美しい街並みが次々と濁流に飲み込まれました。これも気候変動による影響が大きそうです。気象分析グループWorld Weather Attributionの調査では、地球温暖化による気温の上昇で、今回の被災地のエリアでは夏の1日あたり降雨量が3%~19%増加しており、また、今回の洪水を引き起こしたのと同様の豪雨が発生する確率は最大9倍になっているとしています。


最後に、洪水リスクを、リスク事象の原因ごとに因数分解したチャートが載っていたので翻訳のうえご紹介します。水害が発生するには、当然河川の氾濫などが起きることが前提ですが、その場所に人や資産がなければ、損失は発生しません。気候変動を緩和するアクションを取ったり、堤防などのハード面での対応で「危険」そのものを減じることも大切ですが、同時に危険なところに人が住まないように誘導するソフト施策や、水害の予測や避難指示の最適化によって、「暴露」「脆弱性」を減じていくことも必要となります。

(根来 諭)
June 29, 2022


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