レポート

水害時、中小河川こそ注意すべき理由

  • 気候変動・気候危機
  • 防災
  • 自然災害

水害が発生しやすい季節に入っています。日本には山奥の小さなものも含めると全部で3万5千あまりの河川がありますが、その中で水位計をつけて細かく監視をし、発災時に避難を呼びかける態勢がとられているのは、主要な2千の河川になります。

そうした主要河川(=大きな川)は、氾濫時に流域に甚大な被害を及ぼす可能性が高いため、当然に気をつけなればなりませんが、実はそれ以外の中小河川にこそ我々は注意を払う必要があります。本レポートではその理由を解説したいと思います。

理由①:急に水位が上がる

中小河川はキャパシティ(流量)が小さい分、流域雨量が増加した時にどうしても急激に水位が上昇してしまいます。下の写真は、2017年7月九州北部豪雨の際の小野川の様子です。14:30時点では流域雨量指数は注意報を発報する基準をわずかに上回るものでしたが、そこからわずか1時間で避難が困難な状況に陥りました。

(出典:気象庁「流域雨量指数・危険度分布の活用による中小河川の洪水からの避難」より)

これほど急激に状況が変わるとなると、十分なリードタイムを取って避難指示を出し、住民が安全に避難を行うことは非常に困難です。避難に時間のかかる高齢者や体の不自由な方においては、豪雨の予報がある際には事前に避難してしまうことや、そうでなくても即刻避難できるように事前に十分な準備をしておくなどの必要があると考えられます。

理由②:ハザードマップが整備されていない

ハザードマップは、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などを表示した地図を指しますが、当然一定の前提条件を定めたうえで作成されます。前提条件を決める際、どうしても氾濫した際に大規模被害が予想される「大きな河川での氾濫発生」にフォーカスされることとなります。

下の図は、左が2019年10月に台風19号によって発生した浸水範囲を示した地図、右が阿武隈川の水害ハザードマップとなります。ハザードマップでは浸水が想定されていなかった赤丸で囲まれた範囲が、左の図では浸水しており、実際に人的被害も発生してしまいました。これは阿武隈川という大きな川にフォーカスし、中小河川による影響を十分考慮に入れなかったことが原因かと思われます。もし、このハザードマップを見て、赤丸のエリアの住民が「ここは浸水リスクが低い」と思って避難していなかったとなると大きな問題です。

(出典:国土交通省「中小河川の水害リスク評価に関する技術検討会」資料より)

こうしたことを受けて、国土交通省は2021年2月、これまで大きな河川を対象していたハザードマップの作成を、中小河川についても義務づけることを発表しました。これまで対象の河川は2千あまりだったところ、住宅近くを通る中小河川を中心に1万5千ほど増加することになります。

但し自治体の負担は重く、一足飛びに整備が進むことは期待できません。また大きな河川とそこに注ぐ中小河川は影響を与え合うため様々なケースや発災の態様が考えられます。一つの前提条件をもとに作るハザードマップで、あらゆるケースをカバーすることはそもそも不可能と言えます。

理由③:バックウォーター現象が発生する

中小河川が大きな川に流れ込む地点の近くでは、バックウォーター現象に注意する必要があります。バックウォーター現象とは、本流の増水により支流の水が合流時点でせき止められ、行き場を失って逆流する現象のことです。豪雨災害の際に、少なからぬケースで堤防決壊の原因となっています。

これを防ぐには、堤防を強化したり、川底を削ることで流れることができる水の量を増加させることが考えられますが、多大なコストを要するものであり、すぐに整備が進むものではありません。



見てきたように、中小河川で発生する水害には、大きな河川とは異なる難しさがあります。現在各自治体で中小河川に対する水位計の設置が進んでおり、国道交通省「川の水位情報」のページや、地方自治体の防災ページからリアルタイムに確認することができます。また、気象庁の「キキクル」でリスクの高まりを確認することも有効です。家や職場の近くに中小河川がある場合は、ハザードマップやある程度広いエリアに対して発表される警報・注意報だけに頼るのではなく、こうした情報を確認することが有効です。

一方、水位計の単価は下がってきており、国土交通省は低コスト・小型・長寿命の浸水センサを使い、水害リスクの高まりや越水・決壊などの状況を細やかにキャッチして防災や保険金支払いなどに活用する「ワンコイン浸水センサ実証実験」を現在推し進めています。スペクティも参画しており、中小河川もカバーした防災・減災の取り組みに貢献していきたいと考えています。

(SN)
June 22, 2022

参考情報

国土交通省「ワンコイン浸水センサ実証実験」
https://www.mlit.go.jp/river/gijutsu/wankoinsensa/index.html



メールマガジン

信頼できる危機管理情報サービスとして続々導入決定!

スペクティが提供するリアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性、正確性、網羅性で、「危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握すること」が可能です。AIを活用して情報解析、TwitterやFacebookなどのSNSに投稿された情報から、自然災害や火災、事故などの緊急性の高い情報、感染症に関する情報など、100以上の事象を、市区町村、空港や駅、商業施設、観光地周辺といった対象と組み合わせて、「どこで何が起きているか」をリアルタイムに確認できます。

(リアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』)
Share this with:
コンテンツ一覧
  • 資料ダウンロード
    資料ダウンロード
    サービス概要価格については資料で詳しくご説明しています。
    無料トライアルも用意しております。

お電話でも承ります。

03-6261-3655

お問い合わせ時間:平日 9:00〜17:30

営業目的のお電話は一切受け付けておりませんのでご了承ください。