レポート

超巨大火山噴火の可能性も?インド洋のスンダ海溝

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地震の巣「スンダ海溝」

我々の住む日本列島は、海のプレート(太平洋プレート・フィリピン海プレート)が、陸のプレート(北米プレート・ユーラシアプレート)に沈み込む境目にあることから、世界でも有数の地震多発エリアに存在しています。同様のプレート境界部は世界中にあり、いずれも地震や火山が多いという特徴があります。

(出典:気象庁ホームページ)

そうしたプレート境界部のひとつに「スンダ海溝」があります。スンダ海溝は、インドネシアのスマトラ島からジャワ島に沿って弧を描いて存在する海溝で、年間数センチずつ、オーストラリアプレートが北向きにユーラシアプレートに沈み込むことによって地震を引き起こします。このエリアは、数年から数十年ごとに大きな地震とそれに伴う津波が発生する地域となっていますが、その最たるものが2004年に発生したスマトラ沖地震でしょう。東日本大震災を上回るマグニチュード9.1の巨大地震が、クリスマス直後の12月26日に発生。大津波がインド洋を四方八方に広がって、約22万人の死者を出す未曽有の自然災害となってしまいました。震源に近い、インドネシア・スマトラ島北部のバンダアチェ市では、人口約25万人のうち約3万人が犠牲となりました。

下図がスンダ海溝周辺の地図です。インドネシアでは海溝に沿って火山の活動も活発で、今年もムラピ火山やスメル火山などが何度も噴火を繰り返しています。

実は最も恐ろしい超巨大火山噴火

人類の歴史の中で最大規模の火山噴火がいつどこで発生したかご存じでしょうか。約7万5,000年前に発生したインドネシア・スマトラ島でのトバ火山噴火がそれだと言われています。噴火によって膨大な量のマグマが放出されて山が吹き飛び、現在は「トバ湖」というカルデラ湖(火山活動によってできた陥没地が湖になったもの)ができて、有名な観光地になっています。このトバ湖の大きさは長さ100キロメートル・幅30キロメートルもあり琵琶湖の1.5倍。さらに最大水深は530メートルもあります。何度かの噴火を繰り返してできあがったと見られていますが、これだけの大きさのカルデラができる噴火とは一体どれほど大規模なものなのか、想像するだけで恐ろしくなります。

スンダ海溝付近はこのような超巨大噴火が起きやすいエリアだとされています。火山噴火は、沈み込んでいくプレートに含まれる水によってマントルの岩石の組成が変化して融点が下がり、溶岩(マグマ)が発生して地表に向かって上昇することによって発生します。スンダ海溝においては、上記地図にグレーの矢印でオーストラリアプレートの動きを書いていますが、プレートが海溝に対して直角ではなく斜めに沈み込んで行っていることが特徴です。そうすると横ずれの断層が発達しやすくなり、さらに隣り合った断層をつなぐような形で割れ目が形成されやすくなります。こうしてマグマが蓄積される「マグマだまり」が大きくなるため、噴火の規模も大きくなるというメカニズムです。ちなみに日本列島にはこれほど大容量のマグマだまりが出来る仕組みが存在しないため、トバ火山で起きたような超巨大噴火は起こりにくいと考えられています。

超巨大火山噴火の恐ろしさは、溶岩流でも津波でもなく、気候を大きく変動させてしまう点です。火山の噴火によって大量の噴煙があがって成層圏にまで達し、火山ガスからできた大量の硫酸や硫酸化合物がエアロゾルと呼ばれる微粒子を作り、数年にわたって地球の大気を広く覆ってしまうことから太陽光線が遮られ、地表の気温を低下させてしまうのです。世界が寒冷化すると、農作物が不作となり、食糧危機から様々な地政学リスクを高めてしまうなど、世界的に危機レベルが上がってしまう事態が考えられます。通常自然災害というのは局地的に被害を及ぼすものですが、トバ火山で起きたような超巨大火山噴火が発生すると、火山から遠く離れて住んでいたとして影響を免れることができず、人類社会の危機につながる可能性があるのです。

2023年5月13日、スメル火山噴火の様子

(根来 諭)
March 27, 2024

参考情報

火山噴火がもたらす気候への影響
https://www.isad.or.jp/wp/wp-content/uploads/2022/05/no148_10p.pdf


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