“内なる危機” メンタルヘルス課題にテクノロジーで取り組む
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新型コロナウイルスに関する危機管理を考えるにあたり、ウイルスに感染してしまうことが外での「危機」とすれば、不自由な生活によるメンタルヘルスの毀損こそが内なる「危機」と言えるでしょう。
感染への不安、経済的な不安に加え、テレワークで長期間にわたり他人との対面コミュニケーションが減る特殊な状況で、多くの人がメンタルヘルスの悪化を感じているようです。国連は13日、新型コロナウイルスの世界的な流行がメンタルヘルスの危機をもたらすだろうと警告し、加盟国に対策を強めるよう求める提言を発表しましたが、そのサーベイによると、感染拡大後に苦痛を感じる人の比率が中国で35%、米国で45%、イランでは60%に達したとされます。
今回のコロナ禍をきっかけにテレワークが広く導入されましたが、終息後も継続することを望む声は多く、企業側としても流行の第2波を考えると、BCP(事業継続計画)の観点から制度を維持するケースが多いと思われます。よって、テレワーク環境を前提とし、組織のメンバーのメンタルヘルスをいかにケアしていくのかについて、この機会に見直しておくことが肝要かと思われます。本コラムでは、テクノロジーを活用し、テレワーク下のメンタルヘルス課題に効果が見込めるサービスを、「気づく」「相談する」「ストレスを軽減する」に分けて紹介したいと思います。
気づく
対面でのコミュニケーションがなくなると、細かい表情やしぐさといった「非言語」の情報からメンバーの状態の変化に気づくことが難しくなります。自ら、または組織メンバーのメンタルヘルスの状況を計測し、把握することが大切になります。
COCOLOLO(ココロ炉)
https://www.winfrontier.com/appservice/cocololo/スマートフォンのカメラに約30秒指先を当てて、皮膚の色変化から心拍のゆらぎを検出、ストレス・リラックスの傾向や疲れ具合などを簡単に見える化することができます。チェックの結果履歴をカレンダー形式で追うことができたり、リラックスするための方法や本などのレコメンド機能があったり、楽しくメンタルの状態を客観視することができるアプリです。
じぶん予報
https://jibun-yohou.jp/lp「じぶん予報」は、音声感情解析AIの開発を手掛けるEmpath Inc. が有する解析技術「Empath®」を利用し、毎日音声を入力することで、その日の気分の状態を計測するソフトウェアです。組織のメンバーは自らの気分の変動を意識することで、あらかじめストレスに対する心構えを形成することができ、組織の上長はメンバーの気分の遷移を日次で確認することができるので、メンタル状況の変化に気づくことが容易になります。
相談する
テレワーク下では、同僚に気軽に声をかけて相談する、ということが難しくなり、生じたメンタルの問題を自分の中に抱え込みがちになります。メンタルの不調を感じたら相談できるルートを用意していくことが重要ですが、現在「オンラインカウンセリング」が盛り上がり始めています。
Cotree
https://cotree.jp/オンラインミーティングアプリ「Zoom」を活用し、ビデオ・通話形式でカウンセリングを受けることができるサービスを提供している会社です。現在、「新型コロナ メンタルサポートプログラム」と題して、Cotree社と企業が共同で支援をする形で、従業員が無償でオンラインカウンセリングを受けられるプログラムも提供されています。
Spill
https://www.spill.chat/Spillは英国発のサービスで、Slackなどを通じたオンラインのテキストカウンセリングのサービスを提供しています。「対面でのカウンセリングはハードルが高い」と感じる方がメンタルヘルスケアに気軽にアクセスできる、ということを重視している企業で、残念ながらまだ日本での展開はありませんが、今後のオンラインカウンセリングの方向性を示すものと思われます。
ストレスを軽減する
自らストレスを軽減するように努めることも大切だと考えます。不安やストレスの軽減やパフォーマンスの向上を目的とした「マインドフルネス」や「瞑想」、これは一種のメンタルトレーニングですが、GoogleやNikeなどの米国先進企業が研修に取り入れるようになって脚光を浴びています。これらを自分で手軽に実践できるアプリがあります。
Meditopia
https://meditasyon.zendesk.com/hc/jaMeditopiaは、専門家監修の下に組み立てられた、1,000以上の瞑想・音楽プログラムで、ストレス軽減、睡眠改善、幸福感の向上など、メンタル面を総合的にサポートするために作られたアプリです。元々ドイツで誕生し、現在は日本語を含む8ヶ国語でプログラムを展開、全世界500万人以上ものユーザーがいることが特徴です。
RELOOK
https://www.relook.jp//lp聞くだけで不眠・ストレス・集中力改善に効果のあるマインドフルネス/瞑想アプリで、ボイスヨガの開発者や臨床心理士、ヨガインストラクターなどの専門家が監修したコンテンツが100種類以上利用可能です。不安を感じた時、ゆっくり眠りたい時など、自分のシーンにあったコンテンツを選べるとともに、瞑想を記録することで自分のメンタルコンディションを見返すことができます。
テクノロジーを活用したメンタルヘルスのケアは、引き続き進化していくことが見込まれます。いくつかのサービスを試してみて、組織のメンバーに紹介するだけでも効果が期待できるのではないでしょうか?内なる危機を未然に防ぐため、今後も注目していきたいと思います。
(根来 諭)
May 22, 2020
参考情報
半数超が新型コロナ収束後もテレワーク継続を希望、全国テレワーク実施率の調査(BCN)
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200418_168565.html
国連、新型コロナ「メンタルヘルスの危機に」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59072610U0A510C2000000/