国連関係の防災会議に出席:期待される新しいテクノロジーとスタートアップの力

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国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)傘下のアジア太平洋災害情報マネジメント開発センター(APDIM)は、タジキスタンの首都ドゥシャンベで2023年12月7日・8日にかけて、「Regional Expert Group Meeting on Advancing Disaster Resilience: Harnessing Data, Technology, and Policy for a Safer Tomorrow (先進的防災レジリエンスに関する地域専門家会議:データ・テクノロジー・政策を活用してより安全な明日へ)」と題する会合を開催しました。防災テクノロジーの開発と実装を推進しているスペクティに対して、この会合へ出席するよう要請があり、会社を代表して参加してきましたのでご報告したいと思います。


タジキスタンはあまり一般的に知られていない国かと思われます。私も今回訪れるまで予備知識はほとんどありませんでした。空き時間には、海外からのゲスト参加者はタジキスタン国立博物館に連れて行っていただき、その悠久の歴史を垣間見ることができました。タジキスタンを擁する、ユーラシア大陸のど真ん中に位置する中央アジアは、「文明の十字路」と言われている通り、様々な文明圏の影響を受けた地域です。古くから交易の中心として栄え、エレクサンダー大王の遠征、チンギス・ハーン率いるモンゴル帝国やその後継であるティムール帝国による支配、そして近代ではソビエト連邦に組み込まれるなどダイナミックな歴史を歩みました。宗教の面では、古くはゾロアスター教が広く普及し、仏教やキリスト教の影響も受けつつ、現在ではイスラム教が支配的です。しかし、ソビエト時代の共産主義下の無神論的な教育施策もあって、今では政治と宗教の間には一定の距離があります。歴史が重層的に積み重なった、実に興味深い国であることがよくわかりました。また、タジキスタンは、中央アジア5か国では唯一のペルシア系民族(タジク人)が多数を占める国です。APDIMがオフィスを構えるイランで話されるペルシア語と、タジキスタンで話されるタジク語は非常に近い言語らしく、APDIMスタッフとタジキスタン政府高官とは普通に会話をしている様子が印象的でした。

さて、本会合は、年に一度のAPDIM運営評議会と同時に開催されたもので、防災を進化させてより安全な明日を実現するために、いかにデータ・テクノロジー・政策を活用していくかについて議論するものです。ESCAPやAPDIMのメンバー、そしてタジキスタン、カザフスタン、イラン、トルコ、バングラデシュ、インド、パキスタン、モンゴル、カンボジア、マカオの各国政府から多くの方が参加しました。内容としては、大きく2つのセッションに分かれ、ひとつは「Synergy Building: Navigating the Science-Policy-Action Nexus through Data-Driven Decision-Making and Policy Desig(シナジーの構築:データドリブンの意思決定と政策設計を通じ、テクノロジー・政策・アクションをいかに連携させるか)」、もうひとつは「Catalysing Resilience: The Power of New Technologies and Startups in Disaster Information Management(レジリエンスを促進する:災害情報マネジメントにおける新しいテクノロジーとスタートアップ企業の力)」がテーマとして掲げられました。

ひとつ目のセッション「シナジーの構築・・・」においては、いかにデータ・ガバナンスを確立するとともに、そのデータに依拠した政策設計をしていくことの必要性が強調され、各国の取組みが紹介されました。鍵となるのは、データの利用可能性を高めて適切にステークホルダー間で共有することであり、それを実現するためには、データを集めること・活用することについて明確なルールを定めること、そして縦割りの組織を越えてそれを災害リスク抑制に使えるようにすることが重要であると説かれました。また、「Early Warning centered approach」が提唱されました。これは、防災対策は多面的なものであるものの、その中の「Early Warning System(早期警戒システム)」の確立を中心目的に据えて検討することによって、どのデータがもっと必要なのかという現状とのギャップが明確になるとともに、改善を人々を災害のリスクから守ることに直結させるという考え方です。

ふたつ目のセッション「レジリエンスを促進する・・・」では、防災レジリエンスを高めていくには、新しいテクノロジーやスタートアップ企業の起こすイノベーションの力を活用することが不可欠ではないかという課題意識のもと、各国の取組みやサクセスケースが紹介されました。スペクティはこのセッションにおいて登壇し、日本においてAI防災ソリューション「Spectee Pro」が防災の現場を変革している現状や、国際協力機構(JICA)のプログラムのもとフィリピンにおいて進めているフィージビリティ・スタディの進捗についてプレゼンテーションしました。AIという先進技術を活用したソリューションが実際に広く現場に導入されている点や、それを早くも海外展開しようとしていることを高く評価していただき、会合参加者からは技術的なチャレンジや今後の世界展開について多くの質問をいただきました。

防災に活用できるテクノロジーの開発に取り組むのスタートアップは多く出てきています。そしてAIをはじめとしたテクノロジーの進歩も目を見張るスピードで進んでいます。このような活力を積極的に取りこんで活用していくことが、国際的な防災コミュニティにとって必須であると考えられます。スペクティがこの会議に招聘され、また将来を期待いただいているのは、その表れだととらえています。


会議に参加しての感想として、こうした国際的な場において知見を共有することは大変意義があると感じられました。国際関係は様々に難しい局面がありますが、こと防災というテーマは、気候変動により自然災害による危機が高まるなかで国境を越えて取り組まなければならないものです。今後もこのような機会があれば積極的に参加し、我々のミッションである「危機を可視化する」ことを通じて世界の防災レジリエンス向上に貢献していきたいと思います。

また、「Early Warning centered approach」という考え方には目を開かされました。早期警戒システムによって人々を適切なタイミングで避難させることは、災害対策を考えるうえでひとつの大きなゴールです。そのゴールから目をぶらさずに、それを実現させるには何が必要なのかを考えることで、最短距離を通っていくことができるでしょう。スペクティが参画している、環境省が主導する「早期警戒システム官民連携協議会」での活動にもより力を入れていきたいと考えています。

(根来 諭)
December 13, 2023


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