レポート

東京都地域防災計画の改定と「防災DX」

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東京都防災会議は5月22日、昨年公表した首都直下型地震の被害想定に基づき、「地域防災計画」を修正しました。本計画の大幅な修正は、2012年11月以来、10年半ぶりとなります。

昨年5月公表の首都直下地震の被害想定では、30年以内に約70%の確率で発生すると予想されるマグニチュード7.3の「都心南部直下地震」を想定し、震度6強以上の揺れが23区の約6割に広がって死者は6,148人、建物の被害は19万4,431棟に上ると算定されています。前回の被害想定と比較すると、防災対策の進展によって人的・物的被害は3~4割減少するとされていますが、依然として甚大な損失が発生することが予想されます。このように新たに算定されたリスクを前提に、地域防災計画を見直したのが、今回の修正の背景となります。

修正点のポイントを見てみましょう。

(出典:東京都「東京都地域防災計画 震災編(令和5年修正)の概要」)

加えて、「減災目標の達成に向けた主な取組」として下記の4点を挙げています。

①地域防災力の再興元年
②「どこでも」「誰でも」つながる通信の確保
③東京の特性を踏まえた「マンション防災」の展開
④災害関連死の抑制にも資する避難生活の環境改善

防災DX

テクノロジーで防災を進化させることに取り組んでいるスペクティとして注目しているのが、「分野横断的視点」として防災DXが挙げられている点です。具体的には、収集したデータをもとに現実世界をサイバー空間に再現する「デジタルツイン」の活用や、帰宅困難者対策オペレーションシステムの整備が挙げられています。

デジタルツインの技術は、災害の情報を収集・解析する弊社にとって非常に重要です。具体的な活用事例については、デジタルツインのプラットフォームを開発するSymmetry Dimensions Inc.をゲストにお迎えして開催したセミナーのレポートをご参照ください。 →https://spectee.co.jp/seminar/webinar_20230221/

特に東京で大きな課題となるのが帰宅困難者対策です。多くの方が職場に残るか、徒歩等で帰宅するかの選択を迫られる中、適切な情報がなければ二次被害の発生や、救助活動を阻害することにつながってしまいます。混雑や被災の状況を帰宅困難者に正確に伝えること、そして意思決定者に対して有用な情報を提供することが決定的に重要になります。その際、企業の備蓄について適切なマネジメントを行うサービスを提供するLaspyというスタートアップ企業も登場しています。

既存の対策についてコツコツ努力を重ねることは言うまでもなく大切ですが、「防災テック」と呼ばれるような、テクノロジーで防災の課題を解決しようとする企業も多く出てきています(スペクティもそのひとつです)。大きな成果を上げるには、防災DXで一気にゲームチェンジを図る必要があると考えています。

地域防災力の再興のカギは

また、「地域防災力の強化」が重点的に取り上げられていることもポイントです。なぜならば、都内ではこの約10年の間で、地域の防災訓練などの取り組みが年間約0.87回から約0.35回に減少していることに表れているように、自主防災組織の活動が低迷してしまっている現実があるからです。

災害時に、リソースが限られる「公助」に完全に依存することは現実的ではありません。「自助」「共助」による防災力の向上が必要です。しかしいくら掛け声をかけても、平時に一人ひとりの防災の意識を高めることは容易ではありません。

それを打開するカギとなるのは通信環境とスマートフォンではないでしょうか。

「減災目標の達成に向けた主な取組」のひとつに挙げられている、どこでも・誰でもつながる通信の確保。我々の生活がネットワークにつながっていることが前提になっていることから、その重要性は論を俟ちません。衛星通信によるインターネットサービスも勃興していることから、インフラの強化で被災者が情報難民にならないような取り組みは確実な実行が求められます。

その上で、情報を伝える・受け取るための端末としてやはりスマートフォンが重要です。この10年間で、スマートフォンの世帯保有率は実に14.6%から93.0%に増加しています。広く普及している情報端末であるスマートフォンを軸として、被災者から被災状況などの情報を収集し、被災者が取るべき行動や必要な情報を伝達する仕組みを構築することができれば、個人個人やコミュニティの防災力は大幅に底上げされるのではないでしょうか。


いつ発生してもおかしくない首都直下型地震。一方で技術的な環境は急速に進化してきています。そうした技術進化をとらえ、防災力をドラスティックに向上させる防災DXの分野に、今後も全力で取り組んでいきたいと考えています。

(根来 諭)
June 14, 2023


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