防災技術の海外展開③ フィリピンへ(全5回)

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  • 自然災害

第2回より続く

前二回のレポートでは、早期警報システムの整備が、特に途上国で災害から命を救うために急務であること、そして防災分野での開発は①ハードからソフトへ、②援助からビジネスへ、とシフトしていることを解説しました。こうした背景のもと、スペクティは、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択されました。

プレスリリース
「スペクティ、JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択 災害大国・日本発の技術をフィリピンに展開へ」
https://spectee.co.jp/20220404/

JICAは、開発途上地域の経済及び社会の発展・国際協力の促進を目的に、いわゆるODA(政府開発援助)の実施を担う組織です。「中小企業・SDGsビジネス支援事業」とは、資金協力・技術協力を通じて港湾インフラを建設したり、保険制度を整備したりといった旧来のODAとは一線を画し、日本の民間企業が持つ技術やアイデアを、途上国が抱える社会課題の解決に活かすとともに、当該民間企業の海外展開を促進することを目指す事業です。援助はどうしても一回性のものになりがちなところ、ビジネスとしての仕組みを導入することで持続的に発展させていくことが可能になるとともに、我々のようなスタートアップにとっては、JICAの持つ広範な海外ネットワークを活用させていただけることが大きなメリットです。

(出典:独立行政法人 国際協力機構)

では、なぜ我々はフィリピンを展開先として選んだのでしょうか。ひとつに日本と同じように災害の多い国であること、ふたつ目に若くて英語が話せるデジタルネイティブ世代が分厚いことがその理由です。

①日本と同じ災害大国であること

フィリピンは、インド洋に抜ける台風の通り道にあり、日本と同じ環太平洋火山帯に属することから火山が多く、またプレートが沈み込む場所であるとともに活断層も多いことから地震も頻発します。2013年の台風ヨランダとボホール島地震、2020年のタール火山の噴火などが記憶に新しいところです。日本と比べた時、雪が無いこと以外は災害に関する状況は非常に似ていると言っていいでしょう。メトロマニラの下に西バレー断層と呼ばれる活断層があり、首都直下型地震のリスクが高いことも共通しています。ドイツ環境NGOの「GERMANWATCH」が2020年に発表した気候リスクインデックスでは日本とフィリピンが1位と2位を占めています。

一方、気候変動による脆弱性が高いことも特徴です。世界銀行は2022年11月、「Philippines Country Climate and Development Report」を発表し、フィリピンが気候変動対策に取り組まないと、2040年までに経済成長率が13.6%押し下げられるとの見通しを発表しました。地震や豪雨、干ばつ、海面上昇などによって、首都集約型産業と農業が深刻な影響を受け、特に貧困層への打撃が大きい、とするものです。

②英語が通じ、若いデジタルネイティブ層が厚いこと

フィリピンでは国民の多くが英語を話せますが、これはビジネスを展開する上で大きなアドバンテージです。また、生まれたときからインターネットが普及していた若い人口が分厚く、しかもSNSの普及率が非常に高いことも、FacebookやTwitterなどを主な情報ソースとして活用するSpectee Proを展開するうえで望ましいポイントです。人口ピラミッドを見てみると、高齢化が進む日本と比較して、若年層が多いことがよくわかります。

(出典:populationpyramid.net)

フィリピンと日本は、国と国として長く友好関係を構築してきています。また米中対立でサプライチェーンの構造変化が予想される中、フィリピンが属するASEANというエリアは、日本企業にとってこれまでより大きな意味を持つようになるであろうこともポイントです。技術はあるけれど少子高齢化の状況にある日本と、これから長く人口ボーナス期を享受するフィリピンが組むことによって、補完し合い、お互いの経済に良い効果を与え合うことができれば理想的と言えるでしょう。


第4回に続く

(根来 諭)
February 01, 2023

参考情報

Philippines Country Climate and Development Report
https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/38280


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