レポート

防災技術の海外展開② 日本の立場(全5回)

  • 気候変動・気候危機
  • 防災
  • レジリエンス
  • サプライチェーン
  • 自然災害

第1回より続く

日本政府も、国連の気候変動に関する会議「COP27」において、早期警戒システムの導入支援及び損害保険制度の普及促進を表明しました。前者は第1回で解説したもの、後者は、異常気象が原因で収益が減ってしまった場合に補償を受けられる保険制度「天候デリバティブ」の普及を後押しするものです。

下の写真は、環境省がCOP27において展開した「ジャパンパビリオン」の様子です。11の会社や団体が出展し、日本が持つ気候変動の緩和策・適応策に活用できるテクノロジーのショーケースとなりました(バーチャルパビリオンは こちら)。

(出典:JETRO)

内閣府は、令和元年に防災技術の海外展開に向けた官民連絡会(JIPAD)を立ち上げています。これには、約200の企業の他、協力省庁・団体として内閣官房、外務省、国土交通省、経済産業省等の関係省庁、JICA、JETROなどが参加しており、官民一体となって防災技術の海外展開を促進し、世界各国の防災能力向上を主導することが目的の官民連絡会です。

一方、2023年には日本・ASEAN友好協力50周年を迎えますが、経済産業省がリードする形で、防災・レジリエンス強化をASEANとの共通課題として取り組んでいく方向です。米中を軸に国際秩序が動揺する中、ASEANが日本にとってサステナブルな経済社会の実現にとって大変重要なエリアになることは間違いなく、戦略的に関係を発展させていく必要があります。防災・レジリエンスを成長産業として育み、結果として経済を支えるインフラやサプライチェーンを守ることの重要性は強調してしすぎることはありません。

また、これまでを振り返っても、国際協力機構(JICA)によるODA(政府が発展途上国に対して行う資金や技術協力などの政府開発援助)を通して多くの国を助け、防災能力を高めてきました。しかし一方で、防災インフラの整備を助けたとしてもそれを使いこなせる能力が当該国になかったり、メンテナンスする技術やコストが足りずに老朽化が進んでしまうといった問題も指摘されています。

(出典:ODA見える化サイト)

日本は災害大国であり、多くの自然災害に直面しつつ、それを技術で乗り越えて発展して来た経験があります。培ってきたテクノロジーやそれを適用するノウハウを官民挙げて海外展開することで、世界の気候変動・気候危機に対する対策をリードしていくとともに、日本企業のビジネスを後押ししていく動きが様々なところで加速しているのが現在の流れです。


防災分野での開発に世界においては、2つの大きな変化が起きていると考えています。

①ハードからソフトへ

これまで防災というとハード対策が主流でした。具体的には堤防、防潮堤、ダムを建設したり、耐震補強をするといった物理的な対策です。もちろんハード対策が重要であることには変わりはありませんが、メンテナンスにコストや技術が必要であることと、昨今の災害の激甚化で「xxx年に一度」と形容されるような災害が頻発する中で、想定しなければならない災害規模がどんどん大きくなってしまっているという問題があります。もし数百年から千年に一度発生するであろう津波に備えて防潮堤を建設することになると、莫大なコストがかかるとともに、恐らく日常生活において海へのアクセスが難しくなり、住民のQOLは低下してしまうでしょう。

一方でソフト対策、例えば前回述べた早期警戒システムや気象観測システムの整備、土地利用規制や耐震基準の見直し、保険制度の整備、ハザードマップの整備、防災教育・啓発といったソフト対策はコストの面で取り組みやすい規模に収まるはずです。ハード一辺倒ではなく、ハード対策を最低限講じたうえでソフト対策に力を入れていくべきだと考えます。

②援助からビジネスへ

援助というものは、基本的に持てる者から持たざる者への一方向のアクションです。もし持てる者の側で政治状況が変化したり、予算に制限がかかったり(事実、日本のODA予算はピークの1997年からほぼ半減しています)することで維持が難しくなります。また、ODAでは予算やプロジェクトの期間が定まっているため、それを越えて継続することはできません。

一方でビジネスは、適正な利益を生み出せている限り、サステナブルな仕組みです。企業が提供した価値に見合う対価を受け取り、さらにより良い価値を提供する活動に充てていく、というサイクルが回っていけば、事業は継続し、質も高まっていくでしょう。社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)が多く立ち上がり、社会課題の解決にビジネスの手法で挑む「ソーシャルビジネス」と、そうしたビジネスに投資する「社会的投資」が注目され、広がっているのはこの流れを表しています。


第3回に続く

(根来 諭)
January 18, 2023

参考情報

COP27で日本の最新環境技術を発信、商機を模索 (JETRO)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/11/96311a102cc83da1.html

COP27でジャパンパビリオンがオープン (JETRO)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/11/6896df32deff4678.html


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