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「AI(人工知能)」は、ここ数年、メディアで目にしない日がないくらい注目を集める技術となっています。本コラムでは、あらためてAIとはそもそも何なのか、そして何ができ、どこに限界があるかを説明するとともに、今後の大きな可能性について解説したいと思います。

AIの最も重要な特性は「学習」

そもそもAIとは何なのでしょうか?その本質を一言で述べると

人間の脳が行っている知的作業を、コンピュータ上で実現するための技術の総称

と言うことができます。

人間の脳というのは非常に複雑かつ高度な情報処理をしており、まだまだ解明できていない部分も多いため、現在のAI技術が、人間の脳に近い働きをするかというとそうではありません。ただ、従来のシステム処理(例えばコンピュータ・プログラム)が、人間が決めたロジック(例えば「AならXを実行、BならYを実行」)に従って情報を処理するのに対して、現在主流のAIには「学習する」というプロセスがあり、それは「人間の脳の営みに似ている」と言うことができると思います。

例えば、スペクティが日本気象協会およびフジテレビと協力して開発した「AI天気」は、「長袖を着ている人」「半袖を着ている人」「コートを着ている人」の画像をあらかじめ学習することで、行き交う大勢の人々が何を着ているのか、瞬時に判別することができるようになっています。

AIができること・得意なこと

AIは我々の社会の中に続々と実装されており、あらゆる分野でその力を発揮し始めています。例えば、Apple社のSiriに代表されるような音声アシスタント、工場の生産ラインにおける機械の故障予測、広告コピーの自動生成、株式の自動売買、採用サービスにおける人材のマッチング・・・その用途は多岐にわたりますが、これらを整理すると「予測」「分類」「実行」の3つに分類することができます。そして、AIが人間の脳をはるかに凌駕する点は、対象となるデータがすさまじく大量であっても、(コンピュータの電源を落とさなければ)24時間疲れることなく学習し、情報処理をし続けられるところです。

とはいっても、AIのはじき出した答えが100%正しいわけではありません。あくまで確率や傾向が算出されるのみで、人間が調整を加えたり、最後の判断をしなければなりません。例えばAmazonで買い物をしていてレコメンドされる「おすすめ商品」。そのすべてが自分の嗜好に100%合うわけではなく、「これはいらないな」というものも沢山含まれます。この点につき、顧客からのフィードバックを受けてどう調整するのか、またどうやって画面上で見せるか等については人間に委ねられるわけです。従来のシステムが「1 + 2 = 3である」とするところ、AIは「80%の確率で1 + 2 = 3である」と提示するイメージです。ここがAIのひとつの限界と言えるかもしれません。

AI、その大きな可能性

実は2010年代に始まった現在のAIブームは「第3次ブーム」と言われています。ブームというものは、盛り上がったあとはしぼんでしまうのが常であり、実際、第1次・第2次ブームは技術的な限界が見えたことで衰退しました。しかし今回の第3次ブームが、これまでのものと異なる点を考察することで、今後の可能性が浮き彫りになります。


①「ルールベース」から「学習」へのパラダイムシフト

同じAIと言っても、1960年代の第1次ブーム、1980年代の第2次ブームにおいては、ルールベース型、つまり人間がルールを設定し、AIはそのルールに沿った処理を行う、というものでした。しかし、識別するにあたって使うルールをすべて人間が設定するのは手間がかかりすぎて不可能であることから、これらブームは衰退してしまいました。例えば、犬の画像を識別するために必要なルールを想像してみてください。足が4本ある、耳が2つある、毛が生えている・・・それでは猫も馬も鹿も当てはまってしまいます。そもそも、ヘアレスドッグという毛のない種類もいます・・・と、このように、「犬」のルールを記述するだけでも非常に困難なことがわかります。

一方、現在のブームにおけるパラダイムは「学習」。言い換えれば、ルール自体もAIが自ら設定するようなイメージです。これは機械学習、とりわけディープラーニングと呼ばれる技術が発展することで可能となりました。これにより、「ルール記述に手間がかかりすぎる」という限界は突破されました。


②技術環境およびデータ可用性の違い

もうひとつ異なる点は、AIを取り囲む技術環境が過去とは全く異なる点です。まず、通信環境については2019年から順次5Gが導入され始めており、高速大容量・低遅延・同時多数接続の通信が可能になりつつあります。また、情報処理についてもプロセッサーの進化は目覚ましく、次世代の技術である量子コンピューティングも世界的に研究が進められています。そして、デバイスについては、以前は大変高価で大型のコンピュータしかなかったものが、パーソナルコンピュータが普及し、そして誰もがスマートフォンを持つ時代になり、これからはIoT(モノのインターネット)の時代を迎え、あらゆるものがセンサーと通信機能を持つようになります。

あらゆるデバイスが高速の通信でつながりあうということは、それだけ利用可能な「データ」の量が飛躍的に増えることを意味します。そして、AIによる高度な解析に必要な情報処理技術も大きく進展しています。つまりAIが活用され、社会に実装されるための環境が、過去に比べ圧倒的にそろっていると言うことができます。

このことから、筆者は今回の第3次ブームは衰退することなく、むしろAIという言葉を意識しなくなるほど、我々の社会や生活に溶け込んでいくものと考えています。内閣府は「ソサエティ 5.0」と銘打ち、狩猟社会(ソサエティ1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く「超スマート社会」の実現を提唱しています。AIはこのソサエティ5.0を支える中核的な技術となるものと思われます。



まとめ

AIの特性

「学習」するということ

AIの限界

確率や傾向値を算出するものであること

AIの可能性

技術環境の発展とデータの可用性向上から、今後のスマート社会を支える中核技術になりえる




(SN)
June 19, 2020

参考情報

「学習」で予測・判断を実現 従来の開発プロセスと違いも(日経XTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/sys/18/032300019/081700006/

これからのAIビジネス(谷田部卓)
https://www.amazon.co.jp/dp/4844368230

スペクティと日本気象協会、お天気カメラのAI映像解析による天気関連指数を計測する「AI天気」の新バージョンを9月2日よりフジテレビの番組「めざましテレビ」の天気コーナーで実施
https://spectee.co.jp/news-release-20190903/

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