【イベントレポート】防災テック・スタートアップ・カンファレンス 2022

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2022年10月6日、「防災テック・スタートアップ・カンファレンス」が開催されました。このカンファレンスは、防災の世界にイノベーションを起こそうとするスタートアップが集結するオンラインイベントで、スペクティからは代表の村上が参加・登壇しました。 本レポートではその内容について振り返ります。


内閣府 佐々木 明彦 氏
  「防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム(防テクPF)」

内閣府で取り組んでいる「防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム」についてのご紹介でした。災害に対して効率的に対応していくのに、先進技術が必要であることは認識されており、一部の地方自治体では取り組みが進んでいるものの、まだまだ不十分であるとのことです。

内閣府では令和3年度にこのプラットフォームを立ち上げ、マッチング支援(マッチングサイトの運営&マッチングセミナーの開催)を行っており、既に企業と自治体の具体的な話し合いや協業が進んでいます。すでに200自治体・600企業が登録済みで今後も拡大予定。実際に、スペクティでも商談からサービスの導入に進んだケースがあります。

また、こうした官民連携のプラットフォームは様々なところで立ち上がっています(例:新潟県や仙台市)が、今後は横の連携も強化していくとのこと。テクノロジーを活用したいがどのように進めてよいかわからない自治体と、自社の技術を防災に活用してビジネスを推進した企業、この二つが今後も強く密接につながっていけば、日本の防災は進化していくと感じました。


株式会社Spectee 村上 建治郎 
「AIで予測・可視化する危機管理サービス『Spectee Pro』で実現する防災・BCPの最前線」

スペクティからは、最近実際にサービスインした機能である「リアルタイム浸水推定マップ」について、そして現在取り組んでいる河川の氾濫予測についてお話しをさせていただきました。それ以外にも路面の分析による交通インフラへの影響を判定する技術開発も進めています。

また、現在提供中のサービス「Spectee Pro」の特徴的な機能である、登録した拠点の周辺でインシデントが発生した際に通知を受けることができる機能をご紹介。サプライチェーン上のリスクの可視化が現在大きな社会課題となっており、この機能を活用できるシーンが広がってきています。

スペクティは防災・危機管理をテクノロジーで進化させることにフォーカスした企業であり、今後も様々な企業との連携を通じて、ミッションである「危機を可視化する」を実現していきたいと考えています。そのためにもこのようなカンファレンスへの参加は大変貴重な機会だととらえています。


株式会社テラ・ラボ 松浦 孝英 氏 
「大規模災害発生時に航空リモートセンシング等を活用した災害対策DX」

テラ・ラボは、中部大学発のスタートアップで、長距離無人航空機や航空リモートセンシングといった技術を活用し、災害対策のDXを進める会社です。南相馬市の復興工業団地に新たなTERRA LABO Fukushimaという拠点を設立し、様々な研究開発が推し進められています。

災害が起きた際に、その被害を早期に把握することは非常に大切ですが、LiDARとデジタルカメラを搭載した飛行機を例えば発災の翌朝に飛ばし、情報を分析・処理し、9時か10時に始まる災害対策本部の会議に間に合うようなスピード感を目指しているとのこと。ある程度災害が発生している場所についてあたりをつけてから飛行機を飛ばさなければならないと聞き、Spectee Proとのコラボレーションにも可能性を感じました。

筆者は、テラ・ラボを「ドローンの会社」と認識していましたが、ドローンはあくまで情報取得手段のひとつであり、いかにそこで得た情報を災害対策の意思決定に活用するか、そのためのシステム全体をどう構築するかに心を砕かれている点が印象的でした。


株式会社Resilire 津田 裕大 氏
「クラウドサービスを活用したサプライチェーン強靭化の推進」

自然災害の増加やコロナウイルス感染症によるロックダウン、ロシアによるウクライナ侵攻など、サプライチェーンの寸断が世界的に大きな問題になっていますが、Resilireはサプライチェーン及びそこにあるリスクの可視化に取り組んでいる企業です。

サプライチェーンは複雑化し、またリスクが多様化することでサプライチェーンを取り巻く環境は大きく変化しており、これまでは「いかにコストを下げて購買するか」に重きが置かれていたものが、「リスクを下げつついかにコストを下げるか」という意識に変わってきているとのこと。またESGや人権配慮という要素も考慮しなければいけません。

現状、企業ではエクセルで数多くあるサプライヤーの管理を行っていることが多く、可視化が十分でないことから、リスクが顕在化したときに即座に対応するこが難しいのが課題となっています。Resilireでは、可視化のためのクラウドサービスの提供とコンサルティングサービスの両輪でこの課題解決に取り組んでいるとのこと。スペクティからもリスク情報の提供を行っており、共にこの領域を開拓していければと考えています。


株式会社Laspy 藪原 拓人 氏
「防災備蓄の配備状況に関する課題確認と、エリア防災の視点に立った防災備蓄の新しい保有形態についての提言」

Laspyは、防災備蓄の管理及び調達を、スペースとともに提供する新しい防災備蓄のサービスの開発を進めている、起業からまだ1年半のフレッシュな企業です。

例えば地震などが発生した場合、一昔前はまず机にもぐり、その後避難所などに逃げるのが安全とされていました。しかし、建物の耐震化や防火対策が進んでいるため、鉄筋で作られたマンションなどでは自宅避難の方が安全なことも多くなっています。最近、首都直下型地震の被害想定が見直されましたが、避難者の想定数は前回よりも減少しました。

そんな中、各家庭・各企業が行う「備蓄」の重要性が上がっているものの、同時に備蓄品を管理・メンテナンスするのは大変面倒なことです。スペースが無いし、賞味期限の管理が大変だ・・・こういったペインを解消すべく、Laspyでは試験的に大規模な分譲マンションにおいてサービスを提供し、ブラッシュアップを重ねているようです。デベロッパーとの協業も視野に入れつつ、様々なケーススタディを進めているとのこと。


Symmetry Dimensions Inc. 沼倉 正吾 氏
「デジタルツインを活用した災害対応」

Symmetry Dimensionsは、デジタルツイン(現実世界のデータを、双子のように仮想空間中に再現するテクノロジー)のプラットフォーム構築に取り組む企業です。

5Gの普及が始まり、地形・建物・人に関する情報や気温・湿度などの環境情報など、現実世界のデータを大量に取り込むことができる環境が整ってきており、スマートシティや都市防災に活用できる「都市のデジタルツイン」が今後日常的に活用されるようになっていくでしょう。日本でも、国土交通省や東京都が主導してプロジェクトが進んでおり、今後はデータの民主化が起こり、国の持っているデータやスタートアップの持っているデータなどの連携が進むことで、新たな市場が形成されることが期待されます。

デジタルツイン的なアプローチが実際にとられた最近の例で言うと、昨年発生した熱海・伊豆山で発生した土砂災害での被災状況の可視化が挙げられます。静岡県が公開している点群データを使い、自然発生的に編成された様々な企業によるサポートチームによって、何が現地で起きたのかの検証や、盛り土がどれくらい流れたかの検証などが、非常に速いスピードで進みました。


トークセッション

最後に、「防災テックを社会実装するには?」というテーマでトークセッションが行われました。

  • テクノロジーを実装するには、環境だったり、人だったり、テクノロジー以外の問題が大きいと現場で感じる。情報のやりとりができる環境がない、自治体ごとに独自のルールがある、など。
  • 社会が認めるテクノロジーになるには、人々の不安を解消しなければならない。社会受容性を考え、理解を醸成していくことがとても重要。
  • 現在ある法律やルールは、長い歴史のなかでひとつひとつ積み上げられてきたもの。一方、世の中は変化するので、それに応じて変わっていかなければならない。法律やルールに違和感があるのであれば、それを伝え合うことが大切。声が大きくなれば変えていける。
  • 緊急発動時のアクションは、発災時になってから考えるのでは駄目で、平時からやりつづけることで確立していくべき。実証実験から実行に移していくプロセスが必要だ。
  • 伊豆山の土砂災害時には、様々なテクノロジーを持つ主体が集まって効果的なアクションを取ることができた。それは、普段からつながりがあったからこそ、スピード感をもって実現できたこと。平時からコミュニケーションを取り、関係をキープしておく必要がある。
  • テクノロジーの社会実装には、経済インセンティブの設計が重要になる。リスク予防というと、短期的な経済的メリットやROIでは評価しにくい。企業にとってリスク予防を行うインセンティブを用意すると実装が進む。ESG投資熱の高まりはひとつのチャンス。取り組むことが企業価値なんだという認識が広がると良い。
  • スタートアップひとつひとつの力は弱いし、それぞれフォーカス分野が違う。連携していくことがますます重要になる。
  • 公助・共助・自助という言葉があるが、この枠組みで良いのか。そこにはまらない様々な局面がある。既成概念からはみ出していかないと、既にある言葉でバイアスにはめこまれてしまう危険がある。
  • 自治体の現場の方たちにとって、新しい技術を取り込むことは怖い事。上役の方が、失敗したときに責めず、取り組みを見守っていただけるとありがたい。

(根来 諭)
November 09, 2022


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