レポート

フィリピン・ボホール島の地域コミュニティに見るレジリエンス

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スペクティは、国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGs ビジネス支援事業」に採択され、フィリピンにソリューションを展開すべく活動を進めています。2023年2月にはフィリピン中部ボホール島を訪れて、地方地自体の災害対応について調査を行いました。その際、地域コミュニティを訪れ、日本とは異なる「レジリエンス」を体感する機会があったため、ご紹介したいと思います。

(地図出典:©Google)

災害に見舞われるボホール島

ボホール島は、フィリピン中部ビサヤ諸島の島で、白い砂浜や素晴らしいダイビングスポットに恵まれた美しい島です。残念ながらリゾート地には足を踏み入れられませんでしたが、のどかな暮らしが広がっていました。

このボホール島は、近年多くの災害に見舞われています。2013年10月にマグニチュード7.2のボホール地震が発生し、復興もままならないその約1か月後に、フィリピン史上最大の死者をもたらした台風ヨランダが襲いました。さらに、2021年末には台風オデット(国際名RAI)が大きな被害をもたらしました。

地震や台風による傷跡はそこここに残っています。

(左から:再建中の橋、地震で隆起した海底、壊れたままの海上に張り出した住居)

強く緊密なコミュニティ

このボホール島に住んでいる杉山明子さんを訪ねました。

杉山さんは、以前JICAの青年海外協力隊員としてフィリピンで働いていたものの、ボホール島の魅力に取りつかれて定住。現在は「バビタの家」を運営し、知的障碍者の支援や居場所づくりの活動に取り組まれています。障碍者の支援も、ただ何か物的な援助をするのではなく、家の外で、難しい場合は家の中で、仕事の機会を提供するアプローチを取られています。選択肢を作り出して自主性に委ねる形です。

(右から2番目が杉山さん)

杉山さんの生活は、アーティストであるイタリア人の夫とともに、半自給自足と言えるようなスタイル。「毎日がキャンプ」とはご本人のお言葉です。2021年末の台風オデットの際には、バビタの家周辺も大きな被害を受けました。

最大瞬間風速が時速260km、中心気圧が915ヘクトパスカルに達するスーパー台風として強い勢力を保ったままボホール島に上陸した台風オデットの威力はすさまじく、集落では屋根が吹き飛んだり、庭が完全に浸水したり、飼育している大切なニワトリが沢山死んだりと甚大な被害が生じました。バビタの家では、日本語の書籍を置いていた図書室もめちゃくちゃになってしまいました。

(出典:杉山さん御提供)

被災後の生活において、特に不足が深刻だったのは、電力と飲み水でした。電力は2か月復旧せず、ろうそくでの生活。水については、井戸を掘っても塩水しか出ず、配給を待つしかありませんでした。

しかし、不思議と不安感は無かったといいます。地域コミュニティのつながりが強く、お互い助け合うのが当たり前という空気がありました。「なんとかなるだろう」という楽観的な雰囲気すらあったと言います。

市長がイニシアティブをとって、広場に発電機を設置してスマートフォンの充電ができる場を作ったり、フィリピンでの町に相当する行政単位「バランガイ」のリーダーであるバランガイ・キャプテンが物資の調達に奮闘したりしたものの、日本で同様の被害が起きた場合に受けられるであろう「公助」と比べると、その内容はかなり貧弱と言わざるを得ません。

しかし、地域に生活する人々のコミュニティが「共助」という形で助け合うことで、人々は生き抜いたのです。

(支援物資を配給したり、物々交換で必要なものを賄う場が作られた)

レジリエンスとは

困難をしなやかに乗り越え回復する力=レジリエンスには、「困難にあっても壊れない」というものと、「壊れてもすぐに復旧する」というものの2種類があると思います。日本のような先進国では、家などのハードウェアは容易には「壊れない」ですが、特に都市部では地域コミュニティのつながりは年々弱くなってきています。一方、フィリピンにおいてハードウェアは簡単に壊れてしまいますが、ソフトウェアであるコミュニティの力は壊れず、時間はかかりますが社会は復旧していきます。

杉山さんが、外国人なのにも関わらず共助の輪に加われたのは、住民と同じビサヤ語を話したり、積極的にコミュニケーションを取るなどの努力をしたからです。日本に住む我々も日ごろからもう少しコミュニティの絆を強めることを意識する必要があるのではないでしょうか。南海トラフ地震に都市直下型地震、そうした大災害においてハードウェアが壊滅してしまったとしたら、我々に残されるのはコミュニティのレジリエンスだけです。

(根来 諭)
March 29, 2023


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