レポート

顕在化する「サプライチェーン途絶」リスク

  • 気候変動・気候危機
  • テクノロジー
  • 国際情勢
  • 危機管理
  • レジリエンス
  • サプライチェーン
  • 自然災害

保険・リスクマネジメント分野のリーディング企業であるAonは、2年に1度、世界中の企業のリスク管理者や経営者からの情報を集約した「Global Risk Management Survey」というレポートを発行しており、日本での調査結果については日本語版が発表されています。下記のリストは、そのレポートの中で挙げられた、日本企業が直面しているビジネスリスクのトップ10です。2年前の前回調査で10位であった「サプライチェーンや流通の途絶」が、1位にランキングされているのが注目のポイントです。この背景には、昨今多く報道もなされて一般の認知も高まりつつあるいわゆる「2024年問題」とともに、地政学的な緊張の高まりがあると指摘されています。

(出典:Aon グローバルリスクマネジメント調査)

実際に、日本企業はどれくらいサプライチェーンの途絶を経験しているのでしょうか?通商白書の最新版である「令和5年版 通商白書」2023を見てみましょう。下記のグラフは、ノムラ・リサーチ・インスティテュート・シンガポールが2023年2~3月に実施した、海外に関係会社をもつ企業(金融、保険を除く)に対するアンケートからのデータです。製造業においては当該の約3年の間に、4割以上の企業が実際に途絶を経験していることがわかります。潜在的なリスクではなく、現実的な脅威であると言うことができるでしょう。

(出典:通商白書2023)

顕在化する地政学的リスク

少し前までは発生することが想像されていなかった事象として、イエメン・フーシ派による貨物船の攻撃があります。現在パレスチナで発生している紛争の一方の当時者であるイスラム組織「ハマス」との連帯を示す「フーシ派」と呼ばれる武装勢力が、紅海を航行する貨物船をドローンやミサイルを使って繰り返し攻撃をしており、船が沈没したり、船員の人命が失われたりといった被害が出ています。米英による空爆も行われましたが、フーシ派はミサイルなどを無尽蔵に保有すると見られ、効果が上がっているようには見えません。

スペクティがリアルタイム配信した攻撃の情報

この攻撃によって世界の海運は混乱に陥っています。スエズ運河から紅海を通る船舶数は激減し、多くは大きく遠回りになる南アフリカ共和国の喜望峰を回るルートに迂回することを余儀なくされています。迂回することで燃料消費が増えてコンテナ船の運賃は急激に値上がりし、リードタイムも当然長くなります。調達の遅延により、製造業では生産スケジュールへの影響も出ています。中東における局地的な紛争が、グローバルなサプライチェーンに影響を及ぼしている構図です。

効率化から強靭化へ

このような地政学リスクは色々なところに潜んでいます。ロシアのウクライナ侵攻も出口は見えず、エスカレートする脅威を孕んでいます。半導体や電子機器のサプライチェーンで重要な台湾をとりまく問題や、米国大統領選の行方も重要です。また、今年元日に日本を襲った地震のように、自然災害も突然襲ってきます。

現在は様々なリスクが高まっている「危機の時代」と言うことができるでしょう。以前のレポートで、ユニクロを運営するファーストリテイリングのサプライチェーン施策の重点が効率性から強靭性にシフトしていることをお伝えしましたが、サプライチェーン・マネジメントの主眼は、コスト面を追求するだけではなく、バランスを見つつも強靭化することに移ってきているのがトレンドと言えるでしょう。サプライチェーンを止めず、自社の製品やサービスを安定的に供給し続けること、それが企業価値を決めるひとつの要素になってきています。

(根来 諭)
March 21, 2024


メールマガジン

信頼できる危機管理情報サービスとして続々導入決定!

スペクティが提供するAI防災危機管理情報サービス『Spectee Pro』https://spectee.co.jp/feature/)は、多くの官公庁・自治体、民間企業、報道機関で活用されており、抜群の速報性・正確性・網羅性で、危機発生時の被害状況などをどこよりも速く、正確に把握することが可能です。

また、『Spectee SCR』https://spectee.co.jp/service/specteescr/)はサプライチェーンに影響を与える危機を瞬時に可視化し、SNS・気象データ・地政学リスク情報など様々な情報をもとに、インシデント発生による危機をリアルタイムで覚知し、生産への影響や納期の遅れ等を迅速に把握することができます。

Share this with:
コンテンツ一覧

資料ではSpectee Proの特徴や仕組みの他、料金表をまとめております

サービス概要/料金表/無料トライアル申込

お電話でも承ります。

03-6261-3655

お問い合わせ時間:平日 9:00〜17:30

営業目的のお電話は一切受け付けておりませんのでご了承ください。